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僕は最低ランクスキルで無双する~同じこと出来る人がいなければ実質無双だよね~

作者: ふすま

「ミリアム! 貴様こんな事も出来んのか!」



 僕はミリアム=ウェストリア、ウェストリア辺境拍の長男だ。怒鳴っているのは父親のアルベルト。


 昔モンスタースタンピードを防いだ時に先王から下賜(かし)された兜をいつも被っている。


 でも、家の中でも被っているのは行き過ぎだと思うんだ。



「父上、無駄なことです、ミリアムは無能ですから」

 


 これは異母弟のソダーシュ、僕と違って優秀だよ。

 

 実際僕は無能だ、剣術の才能もないし、かといって頭が凄く良いわけでもない。そりゃ平和な王都であれば中の中くらいの実力はある。


 でもここは辺境の地ウェストリア辺境伯爵領。隣は国を構えることすらできないモンスターの住まう魔の森だ。



 ここでは並み以上の実力が求められる。そりゃ領主自らが戦うことはほまず無いよ、でもそれじゃ民は安心できない。



 隣はいつモンスターが出てくるかもわからない魔の森です。でも、前線に出て戦えるくらいとても強い伯爵様が治めています。


 隣はいつモンスターが出てくるかもわからない魔の森です。でも、みんなの後ろでガタガタ震えるザコで弱い伯爵様が治めています。



 たとえ兵力は同じといわれても、どっちの領に住みたいかっていわれたら前者を取るよね、僕だってそうする。


 

 最後の望みは15歳以上の人が誰でもらえるジョブ。



 ジョブを取得したらその系統に沿ったスキルが習得できる。僕も今年で15歳、でも、ソダーシュも15歳なんだ。


 それにジョブも15歳までの頑張りで判断されるってウワサだし、きっと僕は良くて【剣士】くらいだろう。実家は、多分父の性格を考えたら追放だろうな。



 別にジョブに沿った行き方をする決まりは無い。【剣士】だからって鍬は握れるし畑だって耕せる。それに猪なんかが畑を荒らしにきても追っ払うことができる。


 でも僕は貴族の息子だ、こんなひょろひょろが村に行って「皆が開墾した畑をくれ」なんていったら蹴り出されるだろう。


 王都で士官して一般兵として雇用してもらえるように頑張るか、最悪冒険者かな。



 そんなことを考えていたらあっというまに日にちは過ぎ、気が付いたときには王都の大聖堂に着いていた。


 出発するときに執事が僕の全ての衣類だけでなく、私物も大きなカバンに詰めていたのがとても恐ろしかった。 



 ジョブの取得は平民、貴族で別の場所で行われる。僕達が入ると既に何人もの貴族の子供と付き添いの親達がいる。奥を見ると王様も座っている。



 反対側を見ると教会の人達がいた、王都の司祭様と聖女様もいる。聖女様は僕より1つ上の公爵様の3番目の娘だそうだ。とても美しい、話したことないけどどんな方なんだろう?


 ちなみに司祭様はジョブ至上主義な方で低ランクジョブは大嫌いだそうだ。せめて聖女様は違うといいなー。



 ふと父上が目線を向けたので、僕も一緒にそっちを見た。王様の近くに控えている騎士団長のセドリック・リーブルズが父さんを睨み付けていた。父さんは口の端をあげて余裕の表情だ。


 セドリックと父上は学生時代に一度だけ戦ったことがあるそうだ。その試合で父上が勝ったらしい、お酒が入るたびに毎回自慢していた。


 無事に過ごせれば来年入学するけど……無事ならね。



 反対側から一人の人物が近づいてきた。



「おお、アル! 久しぶりじゃないか」


「グラム! 元気そうだな」


「グラム叔父様久しぶりです」


「ソダーシュ、また一段と力をつけたんじゃないか?」



 彼はグラム・ウェストリア、父の弟で南の穀倉地帯一体の代官を務めている。娘のナターシャは来年15歳らしいから今日は様子見かな。娘は母親と来賓席に行ってしまっていた。



「お久しぶりです叔父様」


「……アル、こいつまだ追い出してなかったのか?」


「大丈夫、今日までだ」



 残念僕、さようなら僕。追放宣言されちゃいました。全額、小遣い全額持って来ておいて良かった!



 諦めた気持ちで鑑定者席に座る。ご丁寧に順番は最後だ! なんか献金で順番決まるとか聞いたことあるけどソダージュの分しか寄付しなかった?


 だよね、今日追い出す予定の子にお金なんか払いたくないだろうからね。



「ソダージュ・ウェストリア」



 聖女様の綺麗な声に呼ばれてソダーシュが歩み出る。ソダージュは最初かよ。いくら積んだんだ?


 ソダーシュが聖女様の前に跪くと輝く金色の光が降り注ぐ、最高級のジョブだ。司祭様もすごいニコニコだ。



「おおおおお」


「ちっ」



 小さくセドリックの舌打ちが聞こえた。やっぱり仲がわるそうだ。剣士のジョブを取得しても騎士団は無理そうだな。


 よくて門前払い、悪ければ危険な任務に連れて行かれそうだ。いじめ殺されるかもしれない……



「ソダージュ・ウェストリアが授かったジョブは【剣聖】です」


「でかした!」


「うおおおおおおおおお」



 いきなりの最高級ジョブに室内が沸く。父上もニッコニコだ。その後に鑑定は続いていく。大抵銀色か、輝く銀色ばかりだ。1人だけ金色の娘がいたかな。


 ジョブのランクは銅、銀、金の3色+それぞれに輝くがついた6色。戦闘能力が高い、もしくは産業に貢献できるほど色は高くなる。【農民】も銀色だ。



「ミリアム・ウェストリア」



 呼ばれたので壇上に向かっていく。最後なのでみんなの注目が集まる、献金で順番が決まるのだから親から一番期待されていない子ってことだからね。



 心なしか聖女様の目もさげすんでいるよ。やっぱり司祭様と同じかー


 残念な気持ちで跪くと、聖女様が祝詞を唱える。僕に光が……光が降りてこない? いや、ちょっとだけ輝いているうっすらと銅に。



 銅は戦闘にも産業にも貢献できないクズってこと。ソダージュの輝く金よりも銅はめずらしいって言われているよ、平民でも輝く銅だってさ。


 あははははは。僕はその中でもさらに珍しいジョブってことかな? やったぜ幻の7色目だ! あははははは。


 会場も別の意味で沸いてるよ、同じ家で片や最高、片や最低だもの。



「ミリアム! 貴様のような恥さらしは勘当だ! とっとと出ていけ!!」



 父上……早すぎです。お静かにって怒られてるよ。



「ミリアム・ウェストリアが授かったジョブは…………『はげいやしし』です」


「…………」


「なんだ? 聞いたことが無いぞ?」


「どんなジョブだ?」



 聞いたことの無いジョブに会場がざわつく。



「最後のしは剣士とか鍛冶師とかのしだろう『はげいやし』……禿、癒し、禿癒し師か!」



 今のは【学者】のジョブを授かった子かな。当たりだよ、ステータスのジョブとスキルがそうなってるもん。



 その声に一瞬間が空いたあと笑い声が起きる。



「ははははは、なんだそのジョブは?」


「あははははははは」


「聞いたことがないぞ」



 あ、目の前の聖女様の目がさげすみ超えて、殺意すら持ってる。


 あー聖女も輝く金色だったらしいからね、低ランクジョブはお嫌いですか、そーですか。もうやけだ!



「ははははは、ミリアム! 無能なお前にはお似合いのくだらないジョブだな!」



 はいはいそーですよ、どうせ追……



「「「「くだらなくない!!!!」」」」


「ひぃっ」


「え!? え!?」



「ミリアム君、なんならうちの街へこないかね? 今なら娘のナターシャを付けるぞ」


「ちょっ! お父様!?」


「えええ」


「おい、グラム! 貴様裏切るつもりか!?」


「おや、アル、何を言ってるのかね? 君は追放したのだろう?」


「ぐぐ……」


「いったいどうしたのです父上!?」



 ソダージュが慌てている。いや僕も何が何だか。



「いや、彼は教会で預かりましょう。見たことないスキルです、是非こちらで研究しましょう」


「チャールズ司祭? あなたは銅ジョブには生きる価値など無いとおっしゃってませんでしたか?」


「そうです! そんなジョブ保護する必要無いでしょう!?」



 若い神殿騎士が文句を言うが……



「ふざけるな!!」


「私はチャールズ神父に賛成だ!」


「私もだ!」


「私もです!」



 何人かの騎士がチャールズ神父につく。皆兜を被っているが声から年配の騎士なのだろう。



「いったいどうしたというのです!?」



「まてミリアムはうちの騎士団で預かろう」


「セドリック! 貴様!!」


「どうかしたのか? アルベルト、もう貴様の家の人間ではないだろう?」


「セドリック団長こそ一体何を考えているのだ!?」


「セドリック……」


「そうです、父上からも言ってやってください」


「いかがいたしましたか、陛下?」


「問題ない、そのまま進め」


「父上!?」


「はっ謹んで」



 そういえば、今言った人みんななにか被っているなぁ。



「皆さま、頭に被っているもの脱いでいただけませんか?」


「「「…………」」」




「ミリアム、貴様がどうしてもというなら、そ、その家に居させてやってもよいぞ……」


「父上! 騙されてはなりません!! 本当に禿を癒すとは決まっていません!!」


「禿てなどいない!!」


「俺が化けの皮を剥いでやる! ミリアム! 貴様のスキルはなんだ! 言って見ろ!?」



 僕の……僕のスキルは……



「二撃必殺禿殺し!……1回目は1年禿ることが出来なくなるだけですが、1年おいて再びこのスキルを受けると二度と禿には戻れなくなります!!」


「「「うおおおおおおおおおおお」」」



 会場が何故か沸いた、父上までも何故か。



「ミリアム!! 貴様!」


「あと! 一撃必殺下の禿殺し……下の毛を生やします」


「貴様はっ!! すばらしい!!!」


「ソダージュ!?」



 この国には一つの迷信がある。下の毛が生えていない人は未成熟で子供が出来ないというものだ。迷信だと思うんだけど、信じられている。


 でも皆口では迷信迷信言っていても信じている、否定できないからね。じゃぁ脱いでみせろと言われて脱ぐ人はいないからね。


 世継ぎに関わることなので貴族はことさら気にしているようだ。待っていれば生えると思うんだけどね、まぁ僕はもう生えているけれど。



「ミリアム、貴様の騎士団入りを認める!」


「殿下あなたもか……んむぅ!?」


「「「な……なにぃぃ!!」」」



 僕の唇に暖かい感触が……気がついたときには聖女に唇を奪われていた。



「ふふふふ、公衆の面前でキスをしてしまいました。これは責任を取っていただくしかないですね!」



  ・


  ・


  ・



「さぁやってまいりました、マスクド禿王決定戦! 参加資格は禿であること! そして顔を隠しての参加を認めます!」


「「「「おおおおおおお」」」」



「さぁ今年の禿王となるのは誰か!? トーナメント形式で闘っていただきますが、本戦に限り敗者にはそれはそれは恐ろしい罰ゲーム、なんと1年間の禿禁止! ふっさふさだぁぁ!」


「「「「おおおおおおお」」」」



「禿だけに禿しい予選を勝ち抜いてきた参加者達はこいつらだぁぁ」


「「「「おおおおおおお」」」」



「まずは前回優勝して、禿を守り抜いた猛者! その名もハゲベルトだぁぁぁぁ」


「「「「おおおおおおお」」」」



「そして前回惜しくも優勝を逃し禿を禁止されてしまった準優勝者ハゲリックだぁぁぁ、もし今回も負けえてしまうと二度と禿には戻れなくなってしまいます!!」


「「「「おおおおおおお」」」」



 選手紹介も終わりいよいよ第一戦が始まる。



「それでは第一試合始め!」


「「ぐはぁ!」」



 試合開始カンマ一秒で両者がいきなり倒れる。本人達いわく禿オーラで相手を吹き飛ばすオーラ飛ばしだ。



「審判! 判定は!?……おーっとドローだ! 両者共にわざとらしすぎたようです!」


「「「ぶーぶーぶー」」」


「再度、始め!」


「ぐふひゃらぁ!」



 今度は片方のマスク禿が、始まった瞬間血のように見える魔法エフェクトを出しながら背面宙返りして、地面に自らダイブした。



「おおおお、ハゲグラムこれはすごい一撃だ、ハゲールズ選手吹き飛んだぁぁぁ」


「「「うおおおおお」」」


「勝者はハゲグラムだぁぁ」


「よっしゃぁぁぁぁ!!」


「しまった考え過ぎたぁぁぁ!!」


「敗者のハゲールズ悔しそうだ! なんとハゲールズ選手は前回も負けているためついに禿ではいられなくなってしまったぁぁぁ」

 

「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



 どーも、ミリアムです。聖女と結婚した僕は妻が主催したこの禿王決定戦で罰ゲームを施す役をやっています。



「おーーっと!! 今年の優勝者もハゲベルトにきまったぁぁぁ」


「なんでだぁぁぁ」


「やぁハゲベルト、良い戦いだったな」


「やぁアル……おっとハゲベルト良い禿っぷりだな」



 すっかりふっさふさになったグラム叔父さんとセドリックが父……ハゲベルトを禿増す、いや称えている。


 ちなみに下の毛は、顔も見えないようにした特殊な懺悔室? のような場所で生やしています。この間ソダージュみたいな人と、ナターシャっぽい人とか殿下っぽい人に生やしたような……気のせいかな。


 ちなみにいつも妻には組みしだかれています。僕の意志は……


 ちなみに妻の毛はというとドゴォォ……はっ、記憶が!?


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