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第1話 私!環 莉沙!

「今日こそは!今日こそは!」


 朝の自分の部屋で拳を握りしめる私、(たまき) 莉沙(りさ)。鏡の前でウィンクの練習をしてるけど、どうも片目だけ閉じるのが上手くいかない。


「莉沙ちゃん、朝ごはんできてるよ〜」


「はーい!今行くー!」


 今日は高校2年生の始業式。春休みの間、ほとんど(あおい)に会えなかったから、もう胸がドキドキで爆発しそう!


 あっ、葵ってのは坂倉(さかくら) (あおい) 。私の幼稚園前からの幼馴染で、そして私が中学1年の夏休みから片思い続けてる相手。つまり、私の恋愛対象ナンバーワン!というか唯一無二!


「莉沙ちゃーん?遅刻するよー?!」


「わかってるってば〜!」


 階段を駆け下りながら、私は今日の作戦を頭の中でリハーサルする。


作戦その1:髪型を変えてみる(少し前髪切ってみて、ポニーテールにしてみた)

作戦その2:香水をほんのり付ける(大学生のお姉ちゃんから盗んだ)

作戦その3:可愛く「おはよう」って言う(何気にこれが一番難しい)


 朝食を猛スピードで平らげて、玄関へダッシュ!


「行ってきまーす!」


「ん?随分早いね?葵くんと待ち合わせ?」


 母のこの意味ありげな質問に、私の顔は瞬時に赤くなる。


「べ、別にそんなんじゃないしっ?!たまたま同じ方向なだけだし〜!!」


「まあまあ、気をつけて行っていらっしゃい」


 母の含み笑いを背中に受けながら、家を飛び出した。


 実は私たち、小学校の時からずっと一緒に登校してる。葵の家は私の家から3分のところにあって、交差点で待ち合わせるのが日課。


 交差点に着くと、案の定、葵はまだ来てない。

 いつもこう。

 時間にルーズなのが葵の悪い癖。でも……そんなところも含めて好きだから困る。


「お〜莉沙、おはよ〜」


 後ろから声がして振り返ると、葵が小走りできた。制服のネクタイは緩んでるし、シャツも半分出てる始末。もう、この間抜けな!


「葵!また遅刻しそうになってんじゃん!もう、いい加減にしてよねー?」


「ごめんごめん、目覚まし止めちゃって」


 葵は寝癖のついた頭をポリポリかきながら、困ったような笑顔を見せる。この無防備な笑顔が、私の心臓をバクバクさせるんだよね〜っ!


「ほら、ネクタイきちんとしてっ!」


 私は思い切って、葵のネクタイに手を伸ばした。

 あれ、こんな背、高かったっけ?身長150cmちょっとの私には少し、葵の背が高い……!

 しっかりと目線にネクタイが来るように、頑張ってちょっと背伸び。


「ん?俺、しゃがむ?ちび助」


「うるさいっ!ちび助ゆーなしっ!」


 ちび助だなんてっ!ひっっどいあだ名をつけるもんだ。葵の腹をちょいと強めに小突いてみる。


 近づくと、葵の匂いがして、頭がクラクラする。でも、そんなこと悟られないよう、平静を装いながらネクタイをきつく締める。


「うぐっ!き、きつい!」


「当然でしょ!だらしないんだから」


 葵は「鬼かよ」と小声で呟いたけど、私はそれを無視。実はこのネクタイ作戦、ちょっぴり手こずったけど葵に近づける絶好のチャンスなんだから。


「てか、髪型変えた?」


 私の心臓が止まりそうになる。

 気づいた?マジで気づいた?葵がそんな繊細な観察力を持ってるなんて!


「え?あ、うん……ちょっと()()()()()後ろ結んでみたの」


「へぇ〜、いつも下ろしてるから、なんか変な感じするなぁ」


 がーん!


 心の中で私は膝から崩れ落ちる。「変」ってなに!「可愛い」とか「似合ってる」って言うべきでしょ!てか、そもそも前髪気づいてないじゃんっ!


「なんなのそれ!失礼な奴!」


「いや、でもなんか……いつもの莉沙じゃない感じがして」


「そりゃあ変えたんだから、違って当然でしょっ!」


 葵はむしろ困惑した顔で首をかしげる。この鈍感男子!


「まあ、いつもの方が俺は好きだけどね」


 ドクンッ!


 私の心臓が大音量で鳴る。「好き」って言葉が葵の口から出ただけで、もうダメ。私の脳内お花畑爆誕。


「で、でも別に葵の好みに合わせて髪型決めたわけじゃないからね!」


「そりゃそうだろ」


 当然のように返される言葉に、ガーンと打ちのめされる。そうだよね、葵にとって私は「幼馴染の莉沙」でしかないもんね。


「そういえば、クラス替えどうだった?」


 話題を変える葵。そういえば昨日発表されたんだった。


「あっ!そうそう、私たち、同じクラスだよ!」


「マジで?」


「うん!名前見てきた!」


「じゃあ、また一緒か」


 葵の反応は薄い。嬉しくないのかな……。そう思ったけど、葵の頬が少し赤くなってるような気がした。


 これは、気のせい?


「ねえ葵、嬉しくないの?」


「え?まあ、別に……?」


 その口ごもった態度に、私は少し希望を持つ。もしかして、私のこと意識してる?


「私はね、葵と同じクラスになれて超嬉しいんだけどねーっ」


 思い切って言ってみる。するとさすがの葵も顔を赤らめて、


「お、おう……俺も悪くないと思うけどっ?」


 キターーーッ!これぞツンデレ反応!


 私の中の恋愛レーダーがビンビン反応する。


「じゃあ今年も一年よろしくねっ!!」


 思い切って、ウィンクまで添えてみる。


 葵は明らかに動揺してる!作戦成功!

 ……と思いきや。


「ん?目にゴミ入った?」


 ………は?


「ゴミじゃないわよ!ウィンク、ウィンク!」


「あ、そなの?なんか変な顔してたから……」


 この世の終わりだ。私の努力はどこへ。


「もう!葵のバカ!」


「え?なに怒ってんの?」


 学校まで残りの道のり、私は葵に一切話しかけなかった。でも、心の中ではガッツポーズ。だって、葵が私のウィンクに反応してくれたってことは、少なくとも女の子として見てくれてるってことだもん!たとえ「変な顔」って言われようとも!


 教室に入ると私の友達、高木(たかぎ) 美優(みゆ)村瀬(むらせ) 亜海(あみ)が手を振ってた。


「莉沙ちゃーん!おはよー!」


「おはよ!」


 葵は「じゃあな」と言って、男子グループに吸収されていった。


「ねえねえ、また葵くんと登校してたじゃん」


 美咲が目をキラキラさせながらヒソヒソと言う。私の片思いを知ってるのは美優と亜海だけ。


「いつも通り、いつも通りすぎ」


「進展は?」


「ないよ〜っ!この鈍感男子!」


 亜美がクスクス笑う。

「でもりーさ、最近攻めてるよね。香水とか付けてさ〜!」


「わかる?そんな分かるほど付けてないのに〜」


「分かるよ〜!そりゃー女子だもーん!」


 三人で笑いながら、私はちらりと葵の方を見た。男子たちと談笑してる葵の横顔を見て、私はまた胸がきゅんとする。


「よーし!今年こそは葵を振り向かせてやる!」


「おー!」


 友達と小さくガッツポーズを交わす私だけど、実はドキドキが止まらない。


 高校2年生。これが私たちの物語の始まり。葵に恋する環 莉沙の奮闘記、開幕です!

 初めまして、びすけと申させて頂いています、たいよう3です。

 本日から、ラブコメを書かせて頂きます。

 2話/週の投稿頻度にはなると思いますが、ご一読していただけると幸いです。

 感想、批評、誤字報告などリアクションをしていただけるとわたくしとしても嬉しい限りです✨️

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