寝た後の話
夜になると迎えにくる。
小窓のすぐ横に置かれた、妹と使う2段ベッド。私は上の段。
布団に入り、瞼を閉じると聞こえる。小窓をノックする音。
私は、すぐさま窓を開ける。いつも見える風景とは違った最高の風景。
トロッコで来てくれるうさぎ。今日も楽しい夜の始まり。
何も言葉は交わさない。交わさなくても伝わるし伝わってくる。
トロッコから見える景色は、いったい何本の色鉛筆が必要なんだろうと思うくらい、いろんな色がある。
私が今日見た通学路の木。でもここでは、その木に赤くて甘い実がなっている。
空を見上げると虹がかかっているし、カラフルな雲があちこちに浮かんでいる。
羽なくても空を飛ぶことだってできる。
その証拠に今日残した給食のグリーンピースが浮かんでいる。
到着。みんなで大きな机を囲んでおやつを食べる。
みんな、泣いてたり笑っていたり怒っていたり。
ここに来るまで、今日は何があったのか。
伝えなくても全部伝わってくる。
みんな、おやつの時間を楽しみにしてる。
ここであったことは私たちだけの秘密。
もう、さようならの時間。ここには時計がない。
うさぎのトロッコにのってまた出発する。
何か空から降ってきた。
四つ葉のクローバー、いっぱい落ちてくる。
今日は公園ですごく頑張って探したクローバー。
こんなにたくさん。昔なら絶対にわーわー喜んでた。
私、少しずつお姉さんになっていってる。
もうすぐ小学校4年生。
到着。窓を開けて布団に入り瞼を閉じる。
お母さんの叫ぶ声が、聞こえる。
おはよう。