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短いです
しかし、夜の人、さらには花火大会に訪れている人というのはどうもすんなり行かずかなり全てを買うまでかなりの時間を使ってしまった。花火が始まるまでもうあと数分というときに、人の波に流され彼女が待つところから引き離されてしまった。やっと落ち着いたと思った頃には、空に宝石のように光を放つ火の花が咲いていた。その地をも揺らすような大きな響きが心まで届き、急な不安に襲われた。この光の中に彼女が消えたのではと。あの美しい光の中で消えていってしまうのではないかと。ありえないと分かっていても、すでに脳内は軽くパニックになっており、呼吸も浅くなる。目に見えているものが本物かさえ区別がつかなくなり始めた頃、人混みの中で彼女を見つけた。
「ごめんね。」
無数の人と音で混ざりあっているはずのあの場ではっきりと聞こえた。
「なに、が。」
激しくなる呼吸の中絞り出した言葉は掠れていて、自分ですら聞こえないほどだった。瞬きしたら幻覚だったと思ってしまいそうで必死に見つめた。しかし、それを分かっているのか背を向けて彼女は人混みへと消えていってしまった。次第に乾き始めた目に涙が溢れる。揺れる視界で見えた後ろ姿には、買ったマフラーが後ろ髪を引かれるようにたなびいていた。
そこで意識は途切れ、目を覚ましたら公園の街灯の下で寝かされていた。きっと祭りに来ていた人が運んだのだろう。親切な人だったようで、焼きそばも彼女の好物の綿あめも二人分きっちり袋に入ったまま近くに置いてあった。目が覚めてもすぐには体が起き上がらず、数分目を開けたまま横になった。そこから、体が徐々に力が入るようになり放心したままホテルへと帰った。もし、あの人混みに消えた彼女が幻覚だったとしても待ってろと言ったあの場所にはもう居ないだろう。そんな気がして、ホテルに戻ればいるのではと淡い期待を抱き帰路についた。情緒が安定せず、思考が纏まらない。ほんのりと見えた光は指を通り落ちていく。
ホテルについて早くなる心臓を抑えながら扉を開ける。だが、彼女はいなかった。それだけでなく彼女の居たという形跡さえも跡形もなく消え去っていた。一緒に食べた夜ご飯のゴミや、一日目に着替えた洋服。何もかもが無くなっていた。言葉にならない絶望が一気に襲ってくる。体の力は再び全くなくなり靴も脱がず、閉まった扉に体を預け浅くなる呼吸によって再び意識を失った。




