表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねぇ奏兄ちゃん、僕と付き合ってよ  作者: きなこともちお
1/18

あーぁ、もうだめだ

頭が動かない

俺は、生きているのか

それとも、もう死んでるかな

奏太は地元に帰ってきた。都会とは違う配色の景色は懐かしさで溢れて溢れた。

駅から一歩踏み出すとそこには旅立った日と同じ人が立っていた。

だがその見た目は百八十度変わっていた。肩まであった髪の毛は男の子のように耳に触れないほど短くなり、着ている服もスカートからズボンへと。

彼女は自分に気づくと駆け寄ってくる。

「何で知ってんのよ。お前が。」

「おばさんが教えてくれた。奏兄ちゃんおかえり!」

そう言って奏太に抱きついた。時間がたったとしても中身は変わらない彼女。成長したその身体は丸みを帯びていた。

「ねぇ奏兄ちゃん、僕と付き合ってよ。」



「はぁ!?何いってんのお前。」

「もう一回言ったほうがいい?」

首を少し傾け下から除くように問う。というより、付き合うって意味を理解しているのだろうか。

「いや、2度も同じ衝撃を食らうのはごめんだ。」

少し後ずさりながら彼女を見る。何もおかしなことがないと顔に書いてあった。

「でも、お前彼氏いただろ。隣のクラスの何とか君。仲良くしてたじゃないか。そんなことよりも、僕って。」

話を変える方法を探して出てきたのはそんな昔のことだった。

「あれから何年経ったと思ってんの?とっくに別れた。そんなに好みでもなかったし。成り行きってやつ?お年頃なのよ。」

女心は分からないな、と呆れながらもそれがこいつらしいと言えてしまう間柄であった。

初めての彼氏だったはずなのに、今ではこう言われよう。恋愛ってのはやっぱり難しいものだとどこか他人事に思えた。

「あっそ、それで今度は俺ってこと?」

「そんな軽い女じゃないってば。ちゃんと片想いしてたんだから。」

少しずつ小さくなるその声では最後まで奏太には届かなかった。

「片思いって。お前俺のこと好きだっけ。」

「本命には伝わりにくいんです。乙女ってもんは。」

ヤケクソに言葉を投げられる。受け取る側としては扱いに困る内容だった。僕と言っておきながら乙女心とは、色々と混ざっている気がする。それに分からないのが、こいつからそんなものを感じたことすらなかった。

「何か変なもんでも食った?この時期に食中毒とかあるのか。」

巡り巡って心配になってきた。すこしベクトルの違う話になっている気がするが、こいつはこんなことを言うやつじゃない。少なくとも俺の前では見たことがない。僕という一人称についても違和感は薄いものの気にはなる。ジロジロ上から下へと往復して見るような視線に、なっていたのか彼女はいきなりそっぽを向いた。

「そんなに見るなよ、変態。」

「そんなやつに告白してきたのは誰だよ。」

あ、そっか。と自己完結した彼女は向き直り、口を開く。

「それでこのあとどーするの?ホテルとか取ってんの?」

自分から言ったにも関わらず、エッチと小さく言う彼女。恥ずかしがるのか、振り切るのかどちらかにしてほしいものだ。

一応予約はしてきたが、このままだとついてくるに違いない。なんとか誤魔化そうと思考を巡らすが、

「どうせ、南町の角のところでしょ?静かだし、安いし。」

すぐにバレてしまった。長い付き合いというのも随分不便のようだ。

「来るか?」

ため息と共に出た言葉は案外優しさを持っていた。

「行く!絶対!行こ!」

荷物を持っていない方の手を握って歩き出す。ふと見上げた空には星が輝いていた。


そこまで長くはならないです

お気に召しましたら是非、楽しんでいただきたいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ