第26話 戦闘シミュレーション
「・・・ふぅ」
男は集中し,神経を研ぎ澄ます.
ミッションは、盗賊に盗まれた宝箱の奪還
少し狭い洞窟の中,目の前にはバンダナを巻いた盗賊10人
一番奥には頭と思われる筋骨隆々の大男が腕を組み,宝箱の前でたたずんでいる.
それ以外の盗賊たちはみな一様にサーベル片手に下卑た笑みを浮かべながらこちらを見つめている.
宝箱を奪い取るには目の前の盗賊たちを殲滅するしかない。
─ミッション開始だ!
先頭近くにいた盗賊たちは「ヒャハハハハハ」という奇声とともに,こちらに向かって切りかかってくる。
先頭に三人、半歩遅れて4人の計7名の盗賊たちだ。
その行動にチームワークなどない。
多勢に無勢だと言わんばかりの短絡的な、あまりにも無策で己の欲を優先した行動だ。
自分が死ぬことはない。一方的な殺戮者だと思い込んでいるから取れる行動。
だから取り返しのつかない目に合う.
俺は身体の力を抜き,ゆったりと盗賊たちを待ち構える。そして,
ヒュッ・・・
一人目の盗賊が振り下ろしてきたサーベルを紙一重で躱し,さらに,重力と遠心力で袖からナイフを手元に滑らせ,
スパッ・・・
そのまま回転しながら,その盗賊の首を掻っ捌いた.
首から噴き出す血液。仲間の盗賊たちは驚き、一瞬動きを硬直させる.
俺はその隙を逃さない。
スパッ・・・スパッ・・・
俺は,バレエダンサーのような軽やかな体さばきで,近くにいた二人目,三人目の首を回転しながら掻っ捌いていく.
フッ
その後,地面を蹴って瞬時に一番近くにいた後方の盗賊との距離を詰める.
「ぐっ!?」
恐怖と驚愕をはらんだ表情をしつつも,なんとかサーベルを持った手を動かそうとする盗賊.
しかし,やらせない.
スパッ
サーベルで切りつけられる前に、俺は容赦なくのど仏を掻っ捌いた.4人目.と,
「クソぉっ!!」
ブン
近くにいた盗賊がサーベルを突き刺してきた.
もう好きにはさせんといわんばかりの怒りに満ちた表情.この山賊は勇敢な性格らしい.
俺はその攻撃を半回転して躱しながら,背中の後ろでナイフを持ち換え、そのまま遠心力に従って首を掻っ捌き,ついでに地面を強く蹴って,その後ろでビビっていた山賊の首も狩る.
スパッ
ブシュ―・・・ドサッ
これで6人目.
さて,こっちに向かってきた盗賊は7人いたはずだが,どうやら、一人は後ずさりしながら後方の盗賊たちのところへ戻ったららしい.
ボーナスタイムは終了.
ここからが本番だ.
残りの盗賊は頭も含めて4人.
頭は相変わらず、腕組みをして宝箱の前でドシッと構えているが,他の奴らは片時も目を離さず、こちらの出方をうかがっている。
最大限警戒している証拠。もう,これまでと同じやり方では簡単には殺せないだろう.
そう,これまでと同じやり方では・・・
俺は、目の前の敵から視線をそらさぬよう注意しながらその場で屈み,前傾姿勢で、右手を後ろへ、ナイフを持った左手を前へ掲げる.そして,
ブワッ
地面を強く蹴って、正面にいた盗賊との距離を一気に詰め、首元めがけて左手のナイフで切りかかった。
ブンッ・・・
しかし,その攻撃は空を切る.
避けられたのだ.その盗賊は上半身をのけぞらせ,俺のナイフを避けたのだ.おそらく,今までの俺の動きから,俺が一気に距離を詰めてくること,首を狙ってくることを予測していたのだろう.
盗賊はそのまま,右足でカウンターの前蹴りを仕掛けてくる.
だが,
タッ
俺はその攻撃を身体を右に傾けてかわし,そのまま半回転して,右手のナイフで敵の首を掻っ捌いた.そう,右手のナイフで
俺は屈んだとき,敵に見えないように右手で靴底に隠していたナイフを取り出していたのだ.
「グッ!?」
予想していなかった二本目のナイフの攻撃に対処しきれず,盗賊は首を割かれ、そのまま後ろに倒れていく.
残りは三人.
そのうち頭を除いた二人が,盗賊の首が裂かれたと同時に動き出し、一斉に俺にサーベルで襲い掛かってくる.
二人ともサーベルを胸より高い位置に持ってきている.首への攻撃をカバーしているのだろう.
俺は目の隅にその姿を捉えると、回転を止めずに山賊たちの方へ前傾姿勢となる.
そして,俺の身体の位置が来ている盗賊たちの真正面に来たところでそのまま地面を強く蹴り、山賊たちの膝くらいの高さで一気に二人の間を回転しながら通り過ぎた。
スパパッ
「「なっ・・・!?」」
通り過ぎる最中,軸足を切りつけられる山賊たち.耐え切れず,バランスを崩して倒れていく.
俺はこの絶好のチャンスを逃すまいと、通り過ぎたところで、足を地面に着いてスライドしながら方向転換.再び地面を強く蹴り、倒れた山賊たちとの距離を一気に縮め.
ザクッザクッ
地面に倒れゆく彼らの首に深くナイフを突き刺した.
「グッ」 「ゴボッ」
ドサドサッ
ズボッ
首から深く刺したナイフを抜き取る.
これで8人目と9人目,残りは宝箱の前にいる頭一人だけだ.
「・・・ふん」
部下を全員殺し,真っすぐと見つめている俺を鼻で笑いながら,頭は腰から二本のサーベルを抜く.
二刀流,きしくも二刀流同士の対決だ.
それにあのどっしりとした構え,かなりのやり手だ.
ト:「・・・.」
(あの技,使わうことになりそうだな.)
俺は,身体の力を抜き,精神を研ぎ澄ませながら,再び前傾姿勢で左手を前に,右手を後ろにして構える.そして,
「・・・こい.」
ト:「ああ,行かせてもらう・・・!!」
ヒュンッ!!
掛け声と同時に,一気に力をこめ,これまでの中で最速の動きで一気に距離を詰めた.
その姿,まさしく稲妻.常人なら対応のしようがない身のこなし.しかし,目の前の頭は違った.
グワァ!!
まるで,その速度で来るのが分かっていたかのように,タイミングを合わせて両手のサーベルを振り下ろしてきたのだ.
そのサーベルは,正確にトモシビの頭,そして首目掛けて振り下ろされていく.
確実にトモシビの攻撃より先に,頭の攻撃が直撃する.しかも,かなりの速度で移動してしまっている所為で避けることができない.無理に対処しようとすればバランスを崩し,致命的な隙を産んでしまうことになるだろう.万事急須か・・・.
「・・・フッ」
そのとき,トモシビは小さく笑った.
そう,トモシビにとってこの状況は万事休すではないのだ.トモシビには,この攻撃に対処する技があるのだ.技術があるのだ.
それはトモシビの暗殺術の奥義の一つ.その名も・・・
ト:「黒
トモシビは,左足に全神経を集中させる.そして
ト:「─か
メ:「あっ!トモシビだ!」
ぜぇえっ!!?」
技を繰り出そうとしたところで,トモシビの戦闘シミュレーション(妄想)は強制的にシャットダウンされ
ズルッ
メ,ト「「あっ」」
ズザアアアアアアアア――――――――――――――――・・・・
左脚の力がへんな角度で解放され,盛大にずっこけるのだった.




