第17話 路地裏での出来事2
─ドサッ
ロ:(そこだ!!)
ブワァァアア―――ー!!
地面に落ち,右わき腹の痛みに顔を歪めながら仰向けに倒れているメリー.そんな彼女に向かって,ここぞとばかりに右手の先端を尖らせ,メリーに向かい発射してくる..
メ:「ぐ・・・.」
メ:(まずい.まずいまずい!寒気だっ!攻撃してきてる!攻撃が当たる!早く避けないと!)
土壁!!
ドン!
目で見るより先に肌で攻撃を感じ取ったメリー.とっさに土壁を左わき腹に向かって発動,身体を右斜め上に飛ばして何とか避ける.しかし─
ヒュー
メ:「ぐっ!?」
メ:(まずい!トゲの方に・・・!)
歯を食いしばりながら焼かれるバームクーヘンのように空中で回転中のメリー.先ほど風弾を使って避けたトゲの近くへ自分が飛んで行っていることに気が付き,追撃に備え神経を尖らせる.
ザッザァア―――
メ:「はぁ・・・はぁ・・・」
そのままメリーは,両足をついて右に小さくジャンプし,膝を曲げてバランスを取りながらなんとか地面へと着地するのだった.
地面から顔を出している周囲のトゲたちは,メリーを貫く絶好のチャンスであるにも関わらず,皆一様に引っ込んでいっている.
メ:(あれ,追撃がこない.限界まで身体の体積を使っていたってこと?・・・それにしても,なんでこの地面に引っ込んでいってるトゲたちからは出てくる直前まで寒気を感じなかったんだろう?出てきたときや,引っ込んでる今は感じるのに.いったい彼は何を・・・.いや,待て,落ち着くのよメリー.ロウジーさんがトゲを引っ込ませている今は最大の攻撃チャンス.今は一旦分析は後回しにして,攻撃に集中しないと!)
メ:「まずは・・・火弾!!」
頭を切り替えたメリー.無数の火弾を展開し,トゲをひっこめている最中のロウジーに向かって攻撃する.
ボボボボボボッ!!
しかし──
ボワボワボワッ
ロ:「そんな距離からの攻撃.当たるわけないだろう.」
案の定,アメーバのように身体を変形させて全弾かわされてしまう.
メ:(くっ.当たらない.やっぱり,さっきみたいに不意打ちでもしないとこの距離からじゃ当てられないんだ.この距離から当てるなら,もっと広範囲に当たる攻撃を仕掛けないとだめだ.それなら・・・)
メリーは自らの頭上に魔力を集中させ,巨大な火の球を作ろうとする.
メ:「中級魔法・・・」
ロ:「ちなみに─」
ロ:「こんな場所で大規模な攻撃をすれば町の奴らに気づかれるぞ?」
メ:「!!」
シュンッ・・・.
その瞬間,メリーは魔力の集中を解いた.
メ:(・・・ブラフかもしれない.ここは町の中だけど,ロウジーさんはさっきから,周りを気にせず地面のレンガを割って攻撃してきてるわけだし.・・・でも,言い切られると迷ってしまう.そうかもしれないと思ってしまう.こんな迷いのある状態で中級魔法は使えない.使えば,確実に隙ができる.初級魔法で攻撃するしかないんだ.でも,初級魔法を当てるには近づくしかない.どこから攻撃が来るか分からない今の状況でそれをするのは危険だ.クソッ,どうすれば・・・.)
ロ:「さて・・・.そろそろ次の攻撃の準備が整った.」
メ:「!!」
ロ:「次で仕留める.」
ロウジーはゆったりと,先端の尖った左腕をメリーに向ける.
メ:(くるっ!!)
ロ:「くらえっ!!」
ブワッ!!
そうして,ロウジーの左腕が,メリーに向かい放たれた.
─────────
ブワァアアアアアア・・・!!!
ロウジーの左腕がメリーに向かい,ものすごい勢いでグングンと迫ってきている.
メ:(くそっ,攻撃が来た.また躱さなきゃいけない.こっちは攻撃を当てる算段もまだ付いてないのに!これじゃあ防戦一方だ!どうすれば・・・,どうすれば敵の攻撃を避けつつ,相手に攻撃を・・・.いや,待てよ?)
猛スピードで迫ってくるトゲを見て何かを閃いたメリー.突如,自身の傍らに火の塊を形成する.そして─
メ:(ロウジーさんは身体をトゲのように変形させて攻撃してきてる.それはつまり,トゲも身体の一部ってこと.それなら─)
メ:「火弾!!」
ボウッ!!
─ロウジーのトゲの側面に向かい,火弾を放った.
バジュアアアアアー!!
ロ:「なっ!?」
火弾が側面に直撃したトゲの先端は,案の定,激しい音を立てながら飛び散っていく.
その様子にメリーは心の中で思いっきりガッツポーズ.
メ:(よし!やっぱりだ.火弾でトゲを攻撃すれば,避けずとも,敵の攻撃をかわせる.攻撃もできる!勝機が見えてきた.このまま,火弾で押し切る!)
ボワボワ・・・
メ:「火─」
乗りに乗ったメリー.二つの火弾を瞬時に形成し,ロウジーの姿,先端のなくなったトゲの位置をしっかり見据える.そして─
メ:「弾」
トゲへと火弾を放とうとした瞬間,メリーはそれをぐっとこらえた.
なぜ,メリーは攻撃を止めたのか.それは,メリーの目に映ったロウジーがまったく動揺していなかったからだ.この状況で,相手にとって予想外なことが起きているであろうこの状況で,相手は全く取り乱していなかったのだ.冷汗一つかいていない.余裕があるのだ.問題ないと思っているのだ.それはつまり─
メ:(何かを仕掛けてる?)
バガッ!
メ:(!?寒気っ!)
そのとき,メリーは後方から寒気を感じ,とっさに振り返る.見ると,右後方と左後方から,真っすぐとメリーに向かってトゲが伸びて来ていた.
メ:(そうだ!ロウジーさんは攻撃の直前まで寒気を抑えた攻撃もできるんだった!)
メ:「火弾!」
メリーは即座に,形成していた火弾を後方の二つのトゲへ放った.と,そのとき,
ブワァアア!!
メ:「!?」
前方から再び寒気を感じ取り,すぐに視線を前に戻すメリー.
なんと,先ほど火弾で先端を吹っ飛ばしたはずのトゲの切り口から,泡のようにブクブクと新たな先端がこちらに伸びながら形成されていっていたのだ.
メ:(なっ!?)
バジュアアアア――!!
後方からトゲが火弾によって爆散する音.しかし,前方のトゲは既にメリーに当たる寸前と所まで来ている.
とてもじゃないが,火弾を形成して攻撃する余裕はない.
メ:(くっ.土壁!!)
メリーはとっさに足元に土壁を形成.空中へまっすぐ飛んで身体に当たるすれすれのところで回避する.
その瞬間,ロウジーは自身の勝ちを確信した.
バガガガガッ!!
トゲが,またもやメリーを中心とした三角形の頂点のように,地面から姿を現し,メリーに向かい一直線に伸びてくる.
空中にいるメリーに向かってだ.
メ:「くっ.」
ロ:(俺は気づいている.・・・お前がとっさに魔法を放つとき,二つしか魔法を発動していないことを.そして,もう一つ気づいている.お前は風の魔法で無理やり攻撃を躱すとき,必ず躱した後で隙ができることを.・・・つまり,空中で同時に三方向からの攻撃を許してしまった時点で─)
ブワアァアアアアア!!
ロ:(─お前の負けは決定している!)
三つのトゲが既にそこまで来ている.今すぐ対処しないとくし刺しにされてしまう.しかし,火弾では全ての攻撃に対処できない.風弾でよけても,避けた先での攻撃には対処できないだろう.前回,直前まで変な気配を感じないトゲの攻撃は全部で9回以上あった.現状で合計5本.おそらく,まだその攻撃は続くだろう.
一発でも食らって隙が出来れば,今度こそやられてしまう.
そんな絶体絶命な状況の中で,メリーの出した最適解.それは・・・
メ:「火弾・・・」
トゲがメリーに直撃するまでの刹那の間,二発の火弾を形成.そして,
ロ:「!?」
ロウジーに向かって解き放った.
───────────────
トゲがメリーをくし刺しにするまでの刹那の間,二発の火弾をロウジーに向かって解き放つ.・・・いや,正確にはロウジーではない.ロウジーの足元を狙ってである.
このとき,メリーの脳裏にはある光景がよぎっていた.
それは,激昂したロウジーが,自らの左腕を地面に潜り込ませ,地面から三つのとげを出現させたときの光景だった.
メ:(トゲはロウジーさんの身体から伸びているはず.複数のトゲはあっても,もともとは一本のトゲでそれが枝分かれしているだけのはずなんだ.ロウジーさんを見るに,トゲを地面まで伸ばしている個所はない.とすると,考えられるのは,足の裏から根をはるように地面に直接トゲを伸ばしているということ.さっきから,一歩も動いていないことからを考えても,そうとしか考えられない.だから!)
二発の火弾が,直列に,ロウジーの足元へ向かって真っすぐと進んでいく.
メ:(足元を攻撃して,元をたつ!)
バジュアアア!
ロ:「ぐっ!?」
一発目の火弾がロウジーの伸びている左腕に直撃し,爆散.真っ二つにちぎれる.
ブワァア!!
三本のトゲはもうメリーにあたるすれすれのところまで来ている.
メ:(間に合え!!)
二発目の火弾は,ちぎれた左腕の切り目すれすれを通り,そのままロウジーの足元に・・・
フッ
着弾する直前で,ロウジーはそれをジャンプして躱した.
メ:「えっ?」
ロウジーの足元に《《穴自体》》は開いている.しかし,
メ:(つながって・・・な─)
─ザクザクザクッ
メリーの胴体に三本のトゲが突き刺さった.




