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僕の中へ天使と悪魔  作者: 語黎蒼
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第23話 『連絡先交換』

「ああ……俺の唐揚げ」

「ふ〜ん♪ふふ〜ん♪」


 高山学園へと向かう道中。頭の上で悄気(しょげ)るエンジュと対称的に、何が楽しいのかアリアは彾嘉と手を繋いぎながら鼻歌を歌う。


「そういえば、どうしてアリアちゃんは高山学園に行きたいの?」

「私は……私は、天才なのだ」

「腹立つな、自分で言うなよな」


 アリアは俯きながら道路に落ちていた石を蹴り飛ばすとポツリポツリと話し始める。


「私は天才だから10歳なのにアメリカの凄い大学に入学も決まっていたのだ。でもママが大学に入学する前にもっと勉学以外にも学ぶべきだと言ってきてたのだ」

「そうなんだ…」

「それで高山学園でシスターとして働きながら色々なことを学ぶために日本に来たのだ」

「ふわぁ〜あ、そりゃ大変だな」


 エンジュが気怠そうに頭の上で寝転んで寛ぐ。


「それで今日、タクシーで学校の近くまで来たから歩いて行こうと思ったら迷って……スマホの電池も無くなって…」

「なるほど…」


 アリアの話を聞くと、どうやら彾嘉の想像通りだったようだ。


「あっ…ここが高山学園だよ」


 高山学園の校門の前に到着する。


「おいりょーか!別れる前にコネクションを作っておけ!コイツの用が済んだら、直ぐに堕天使を捕まえれるようにな!」

「………。ね、ねぇ、アリアちゃんはずっと高山学園の教会に居るの?」

「う〜〜ん、一年くらいは日本に居るから、たぶん教会に居ると思うのだ」

「よしよし!りょーか、連絡先を渡しておけ。堕天使を捕まえに行く時に何処に居るのか知りたいからな!」


 彾嘉はポケットを漁るが紙やペンを持っていなかった。


「リョーカ、どうしたのだ?」


 急にポケットを慌てて漁りだした彾嘉を、アリアは不思議そうに顔を下から覗き込む。


「アリアちゃんに連絡先を渡したかったんだけど、紙とか持ってたかなって思って…」

「連絡先?!…紙!」


 アリアも自身の服を漁り始めると、ポケットからボールペンを取り出す。


「ペンしか持ってないのだ」

「じゃあ仕方ないか…」


 彾嘉が諦めようとうすると…。


「ん!」


 アリアは彾嘉の顔の前に手の平を突き出す。


「紙がないなら手に書けばいいのだ!」

「いいの?汚れちゃうよ?」

「ん!」


 照れくさそうにアリアはコクコクと小さく頷く。


「じゃあ、電話番号を…」

「く…ふふ…」


 アリアの手の平に数字を書くと、くすぐったいのか口を抑えて我慢している。


「ついでにメッセージアプリのIDも書いておくね」

「きゃははは…!」


 英数字を手の平に書いていくと、我慢出来ずにアリアが笑う。


「消さないようにね」

「うん!」


 手の平に書かれた彾嘉の連絡先を嬉しそうに眺める。


「それじゃあ、教会まで案内するね」

「もう大丈夫なのだ!ここから教会も見えるから案内は不要なのだ!」

「たしかに…」


 正面には校舎。その右斜め奥に教会の屋根が少し見えている。


「リョーカは普段から優しいままの方がいいのだ」

「そ、そうだね。頑張るよ」

「日本に来て優しいお姉ちゃんが出来て良かったのだ!」

「……え!」


 アリアは嬉しそうに校門をくぐっていく。


「またな〜!リョーカお姉ちゃ〜ん!」


 教会へと走り去って行く。


「にゃっはっはっはっは〜!お姉ちゃんだってよ!りょーかお姉ちゃん!」

「……もういいよ」

「待て!バカヤロウ!」


 彾嘉が家に帰ろうとするとエンジュが髪を掴んで引き止める。


「どうしたの?」

「せっかく学校まで来たんだ!堕天使を探すぞ!」

「えぇ〜……」

「帰っても唐揚げも無いしな」


 彾嘉は断る理由を考え、校舎から出てくる生徒の服装を見て思いつく。


「だめだよ、エンジュ。学校は制服を着てないと入れないよ」

「たしかにな」

「今日は諦めて家でゆっくりしようよ」

「仕方ねぇな」


 彾嘉は思っていた通りになったので、心の中でガッツポーズをする。


「ちょっとこっちに来い」


 人目の付かないグラウンドのトイレ裏へと案内される。


「なに?か、帰らないの?」

「何言ってんだ?……持ってて良かったぜ」


 エンジュはシスター服の袖を漁り始める。


「ほら!」


 袖の中からバサリと制服が出てくる。


「なんで持ってるの?!それにその服どうなってるの?!」

「細かい事は気にすんな、さっさと着替えてこいよ」


 ここまでされると学校探索をする事は避けられない。

 彾嘉は家に帰る方法をもう一度考え、手に持っていたヘルメットを見て気付く。


「エンジュ、その前にヘルメットを返しに行かないと」

「あぁ?ヘルメット?」

「さすがに盗ったままだと、盗られた人が可哀想でしょ?」


 このままコンビニに行って帰ろうと彾嘉は考える。


「仕方ねぇな」


 彾嘉は心の中でガッツポーズをする。


「ピューー!」


 エンジュが指笛吹く。

 彾嘉がエンジュの突然の行動に驚いていると、足に何かが触れる。


「うわっ!」


 足元を見れば、猫が彾嘉の足にすり寄っていた。


「猫?」

「ちっ、5匹しか集まらなかったか?」


 猫たちはエンジュを取り囲むように集まりだす。


「おい、お前らの誰かでコンビニの場所分かるか?」


 エンジュがそう聞くと、猫たちは一斉に鳴き出す。

 すると、以前に彾嘉の家に来た黒猫が前に出る。


「おっ、お前知ってるのか?だったら連れてけ。報酬は鰹節で良いだろ?」

「にゃ〜」


 黒猫は鳴きながら首を横に降る。


「なに?!猫缶一個だと!それはボリ過ぎだろ!」

「にゃ〜」

「相場が変わっただと?!嫌なら諦めろだぁ?!」

「にゃ〜」


 黒猫が顔を舐めながら鳴く。

 彾嘉はその光景を不思議そうに眺める。


「分かったよ!用意しといてやるから、一週間後に前に俺を連れてきた家に来い」

「にゃ〜」


 交渉が成立したのか、エンジュは黒猫に跨がる。


「そういうわけだから彾嘉、お前は着替えて門の前で待ってろ」


 そう言うとエンジュと黒猫は走り去って行った。


「はぁ〜……」


 彾嘉は地面で寝転がっている猫のお腹を撫でながら長い溜息を吐く。


「にゃ〜」


 気持ち良さそうにしている猫を見て、彾嘉も諦めて着替えの為にトイレへと向かう。

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