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僕の中へ天使と悪魔  作者: 語黎蒼
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第22話 『アリア』

「ここまで来ればもういいだろ」


 エンジュはコンビニから数百メートル離れた公園で立ち止まると、抱っこしていた少女を地面に降ろす。


「あっちぃ…」


 ヘルメットを脱いで額に流れる汗を袖で拭うと、エンジュは少女に歩み寄る。


「おいガキンチョ、手首見せてみろ」


 エンジュはヘルメットを地面に置き、少女の左腕を強引に掴んで袖を捲る。


「にゃっはっは…」


 嬉しそうに堕天使のタトゥーが本物であると確認する。


「いきなりなんなのだ!」


 少女がエンジュの掴んでいた手を振り払う。

 振り払ったエンジュの手が、少女の被っていたシスター帽子に微かに当たり地面に落ちる。


「全く……だから日本になんて来たくなかったのだ」


 地面に落ちたシスター帽子を拾い、砂を払いながら少女はエンジュを睨む。その瞳は綺麗な青い色をしており、肩の辺りまで切り揃えられた金色の髪。そして日本人離れした可愛らしさをしていた。


「おい、おまえ。私をこんな所まで連れてきた罰だ。私を教会のある学校に連れて行け」

「なんだと?」

「当然なのだ。言葉も通じるし……私を連れて行くなら警察に言うのは許してやるのだ。さっさと案内しろ!」

「連れて行ってやるよ…だがな!お前の態度が気に入らねぇんだよぉ!」


 エンジュは両拳を握りしめ、少女のこめかみに万力のように当てグリグリと回す。


「いたあいいたあいいあたい〜〜!!」

「ふん!ものを頼むならな、それに見合った態度で頼むんだな!ガキンチョが!」


 両拳の万力を外して、エンジュは舌を出して少女を挑発する。


「こ、この天才の私の頭によくも…このバカ女め!」


 涙目になりながら少女は痛みを和らげるようにこめかみを摩る。


「なにぃ?バカ女だと!」

「そうなのだ!お前なんてどうせバカなのだ!」

「このガキンチョめ…!」

「52×75は?」


 エンジュの動きがピタリと止まる。


「どうしたのだ?52×75なのだ。バカそうなお前のレベルに合わせて簡単なニ桁のかけ算の問題を言ってやったのに答えれないのか?バカそうじゃなくてホントにバカ女なのか?」

「っ……」

『エンジュ…計算するから5分くらい時間ちょうだい』

「時間切れ〜!こんな計算もサッと出来ないとは、やっぱりバカな女のだ!バ〜カバ〜カ!」


 エンジュは残像が残るほどの速度で、指を指して馬鹿にする少女の後ろにまわりこむ。少女の左足にエンジュの左足が絡み、左腕を腕の後ろに巻きつけてコブラツイストを決める。


「調子に乗ってんじゃねぇ、このクソガキが!!」

「いたああああああ!!」


 公園に少女の叫び声が響き渡る。


「バカのくせに…!この天才の私に、こんなことをするなんて…」


 涙目になりながら痛そうに胸を摩る。


『エンジュ、あんまりイジメたら可哀想だよ』

「ふん…」

「もういいのだ…お前みたいなバカに頼ろうとしたのが間違いだったのだ!別の言葉が通じる人を探すのだ!」


 少女は怒りながら走り去って行く。


『エンジュ、あの子なんか言葉が通じる人を探すって言ったけど』

「ん?ああ、俺の天使の能力でどんな生物とでも会話出来るんだよ。外国人だろうが猫だろがな。気付かなかっただろ?あのガキンチョずっとロシア語で話してんだぜ」

『そうだったの!?だったら、もしかしてあの子…』


 彾嘉は少女が何故コンビニで膝を抱えていたのか気付いてしまう。

 少女は一人ぼっちで、言葉が通じない日本で道に迷ってしまい途方に暮れていたのだろう。


『エンジュ、追い掛けよう』

「…っち、堕天使のためだ仕方ねぇ」


 エンジュはヘルメットを拾うと少女を追い掛ける。


「おいガキンチョ」

「……なんなのだ?」

「また変な奴に絡まれても可哀想だからな案内してやるよ」

「え…?」


 驚いてエンジュを見る少女の瞳には涙が流れていた。ハッとした顔をすると涙が流れている目を、シスター服の袖で強引に擦る。


「そ、そうか!仕方ないから案内させてやるのだ!」

「そんで?どこに案内すりゃ良いんだ?」

「教会のある学校…そう!高山学園って名前の学校なのだ!」

「高山学園?」


 エンジュは少女の言う学校名を聞くと彾嘉から出て行く。


「りょーか、お前なら場所知ってんだろ。案内してやれ」

「……」


 勝手だなぁ。っと思いながらも道は分かるので案内することにする。


「じゃあ行こっか」

「……?」

「……?」

「……忘れてた。俺が触れてないとガキンチョと話せないんだった」


 エンジュは彾嘉の頭の上に降り立つ。


「……じゃあ行こっか」


 彾嘉は通じてるか心配しながら少女へと優しく笑いかける。


「急にヘラヘラして気持ち悪いのだ。頭おかしくなったのか?」

「そうじゃないよ。僕は普段はこうなんだ」

「……どういうことなのだ?お前は普段はヘラヘラしてるのか?」

「それも違うけど…まあ簡単に言うと、さっきまでの怒りっぽい性格じゃないから怖がらなくて大丈夫だってことだよ」


 少女は不審そうに彾嘉を見つめる。


「もしかして二重人格ってやつなのか?」

「う〜ん。まあそんなものかな」


 彾嘉はエンジュについて説明するわけにもいかないので、そういう事にしておいた。


「そういうことだから、今は優しい性格なんだよ」

「ふ〜ん、二重人格の人と初めて会ったのだ」


 少女は彾嘉の顔をジッと眺める。


「そういえば君は何て名前なのかな?」

「……アリア」

「そうなんだ…あっ、僕は水瀬彾嘉って言うんだよ」

「ミナセ・リョーカ…」


 少女は彾嘉の顔を見つめながら名前を呟く。


「おい、りょーか。早く連れてって唐揚げ食おうぜ」

「うん…。アリアちゃん、行こっか」

「……」


 彾嘉はアリアに手を差し伸べる。


「うん…」


 アリアは少し躊躇ったが差し出された彾嘉の手を握った。


「ん?そういえば、りょーか…唐揚げどうした?」

「……」


 エンジュが邪魔になるからと原付バイクの椅子に置いたのを彾嘉は思い出す。


「あああああーー!!俺の唐揚げーー!!」


 頭の上でエンジュが悲しみで吠える

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