第17話 『部員候補』
彾嘉が学校に到着したのは午前八時十分とSHRが始まる20分前だった。
「なぁりょーか、適当にこのクラスで部員探そうぜ〜」
席に着くなりエンジュは、机の上で胡座をかきながら教室を見回す。
「アイツとかどうだ?あのツインテールでアホそうな、甘い物と男しか頭にないみたいなやつは?」
エンジュは一人の女子生徒を指差す。とんでもない偏見を言うな、と心の中で思う彾嘉だった。
「……」
話すと独り言のようになるので首を横に降る。
「なんだよ…じゃあアイツは?あのお下げ髪の眼鏡掛けた、勉強と文学小説の事しか頭にないみたいなやつは?」
「……」
首を横に降る。
「じゃああの」
「……」
首を横に降る。
「まだなんも言ってないだろ!なら……コイツは?」
エンジュは彾嘉の前の席に座っている女子生徒を指差す。
「……」
前の席の女子生徒は帰宅部だったはずなので、彾嘉は首をゆっくりと縦に動かす。
「決まりだ!コイツを部員に入れるぞ!」
「え…!」
エンジュの考えもない一言に彾嘉は思わず声が出てしまった。
彾嘉は周りを見て、誰にもバレていないことに安堵する。
「なんだよ?!ダメなのか?」
「……」
ダメと言うわけではない。部活にも入っておらず、女子生徒という入部する条件も満たしている。のだが…。
「良いだろ?コイツで」
前の席に座る女子生徒の名前は真那牆心和さん。前の席だったのと覚えやすい見た目のおかげで名前は知っている。
「なんかクラスでめちゃくちゃ浮いてそうだしよ」
そうなのだ。心和の見た目が凄い。綺麗に切り揃えられた肩に触れるか触れないくらいの金髪に、両耳にはピアスが沢山付いている。
この学校の校則は緩く、入学式や卒業式などの式典の際に正装になっていれば問題がない。
「……」
金髪でピアスをしている心和を部員として誘おうか彾嘉は迷ってしまう。
その様子を見たエンジュは腕を組んで首を傾げる。
「もしかして見た目で迷ってるのか?」
「……」
「俺もお前も見た目で馬鹿にされてきたんだ。見た目で人を決めてんじゃねぇよ!」
エンジュは彾嘉を指差し正論を言う。
その言葉に心打たれた彾嘉はノートを取り出して走り書きする。
「なんだ?『次の休み時間に誘ってみる』」
「……」
彾嘉は、はにかみながら首を縦に降る。
「ちっ、お前もあの茶道部の1年生も行動力がねぇんだよ!」
エンジュは呆れながら、空中に浮かぶ。
「こういうのは当たって砕けろの精神で行動しないといけないんだ!俺が誘ってやるよ!」
「え?」
彾嘉のおでこへとスルリと入っていく。
エンジュが憑依した彾嘉は椅子から立ち上がると、前の席の心和の横に移動する。
「おい、お前」
『ちょっとエンジュ!』
「……」
心和は小説を読みながら無視する。
周りのクラスメイトがザワザワしながら彾嘉を注目する。
「聞いてんのか?」
彾嘉が肩を触るとびくりと震え、こちらを驚いた表情で見る。
「あ…う、え?な、なんですきゃ?」
耳からイヤホンを外して、オドオドとしながら答える。
「部活に入ってないんだろ?」
「え?あ、まあ…」
「茶道部に入らないか?」
「さ、茶道部…?」
心和は困ったように下を向く。
「あ、あの、や、やめておきます」
「……そうか」
エンジュは彾嘉のおでこからスルリと出て行き、何処かに飛んで行く。
「為せば成る!」
意味の分からない捨て台詞を言ってエンジュは飛び去ってしまい、突然一人にされた彾嘉は周囲のクラスメイトから視線を集めてしまっていることに気付き、そそくさと席に戻る。
「うぅ…」
注目を浴びることに慣れていない彾嘉は、現実に目を背けるように机に突っ伏して寝たふりをする。
何処かに消えてしまったエンジュに少し腹を立てていると、担任の教師が入ってきてSHRが始まった。




