第16話 『彾嘉の朝』
エンジュがバスケ勝負に勝った次の日の朝。
「起きろ〜!」
「んん〜」
エンジュが元気よくカーテンを開ける。
「今日は部員を集めるんだから気合い入れろよ!」
「ん〜」
朝日が顔に当たり、彾嘉は不機嫌に唸る。
彾嘉は眠気と階段を降りて行く。洗面所で歯を磨いたりと朝の日課を済ませリビングに向かう。
「やった!ウインナーだ!」
テーブルに置いてある目玉焼きとウインナーと白いご飯にテンションを上げるエンジュ。
こんなのでテンションを上げれるなんて人生幸せなんだろうな…と思う彾嘉だった。
「うめぇ!うめぇ!」
朝は長女の凛花は朝練で、次女と三女はまだ寝ている。母親は凛花と一緒に朝食を済ませているので彾嘉しか食卓にいない。エンジュは他人には見えないが、念の為に彾嘉が手で隠しながら食べる。
「美味かった〜!ごちそうさま〜!」
「ごちそうさま」
家族にバレることもなくご飯を食べ終わる。
食器を片付けて、自分の部屋に戻ると。
「美味かった〜!」
ベッドで大の字で寝転がるエンジュをよそに、彾嘉は制服に着替える。
着替える彾嘉を眺めながらエンジュはあることに気付く。
「なありょーか」
「なに?」
「ブラしないか?」
「ぶっ!」
思いもよらないエンジュの提案に吹き出してしまう。
「やだよ!完全に変態じゃん!」
「おいおい、俺が面白がって言ってるわけじゃないぞ」
「え?」
「俺が憑依すると多少なりとも胸が出るだろ。それを隠すためにブラ的なもので潰した方が良いんじゃねぇかと思ってよ」
「……」
彾嘉はエンジュが自分の中性的な顔を馬鹿にしているものだと思っていたので、しっかりと考えていたことに驚いてしまった。
「たしかにね…何か良いのがないか探してみるよ」
「おう、頼んだぞ」
制服に着替え終わり、2階にあるトイレへと向かう。初めてトイレに行こうとした時に、トイレにはついて来ないでねと言うと「俺もさすがにモラルと常識はある」と冷静に言われた。
「行こうか」
家でするべきことを全て済ませて、玄関へと向かう。
「彾嘉、気をつけてね」
彾嘉の食器を洗い終わった母親が見送りに出てきてくれた。
「うん」
「車と変な男には気をつけてね」
「う、うん」
「もしも変な男に腕を掴まれたら、腕をこうやってして相手の力を利用して、こうよ!」
母親が一人で護身術を解説してくれる。
「大丈夫だって!行ってきます!」
「行ってらっしゃい!気をつけてね〜!」




