第1話 天使のエンジュ
天使。それは天界に生きる存在。
天使。それは白い羽が生えた幸せを司る存在。
天使。それは恋を結ぶ存在。
天使。それは……。
「あわああああ〜〜!!!止まれ止まれ!!このアホ猫!!」
手の平サイズの天使のエンジュは、豪快に走る黒猫の背の上で絶叫する。
「速すぎだ!もっとゆっくり走れ〜〜!!」
エンジュは、黒猫の美しい毛をギュッと掴んで振り落とされまいと耐える。
「は、走るな!跳ぶな!急に曲がるな!!」
「にゃ〜」
黒猫は走りながら器用に振り向き、エンジュに小さく鳴く。
「なに?!もう着くのか?!!……あと呼び捨てで俺様の名前を呼ぶな!エンジュさんだ!」
「にゃ〜」
「そうだ!それで良い!」
エンジュは目的地に到着する事を知り、ほくそ笑む。
「やっとだ……やっと会えるぜ、俺のパートナーになるべき人間に!」
黒猫は一軒の家の前で1度立ち止まる。
「ここがそうか?」
「にゃ〜」
「よし!このまま2階に上がれ!あと、さんを付けろ」
黒猫は跳躍して軽々と2階の屋根に上がっていく。
「わっとと……!たぶん、あそこの窓だ!」
「にゃ〜」
2階の部屋の窓にカリカリと爪を立てる。すると、窓が開く。
「え……?ネコ?」
窓を開けた中性的な顔をした少年は、キョトンとした顔で黒猫を見つめる。