表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/25

4:アンデッド部隊に力を与えた男


「しかしあいつらも懲りねえなあ、馬鹿じゃねえの」

「脳みそまで腐っているんだろ? アンデッドだし」


 大陸西部に広がる、丘陵地帯。

 そこはローサ丘陵と呼ばれており、王国軍、魔王軍が激突する最前線だった。


 その中でも最も大きな丘の下に王国軍の前衛基地があった。

 月明かりの下、基地の外壁にいる兵士達はあくびをしながら見張りをしていた。基地に張られている【聖者結界】に踏み込んだ途端、浄化され消えていくアンデッドの兵士以外に見る物もなく退屈な任務だ。


 その結界は聖職者によって祈りが捧げられた四つのクリスタルから放たれており、四角形の基地の四つ角それぞれに鎮座していた。

 それを壊せば当然結界は無くなるのだが、結界のせいでアンデッドはそこまで辿り着けない。魔法もある程度防ぐこの結界は対アンデッドに関しては最高の効力を発揮していた。


「明日は一大攻勢を仕掛けてあの丘を取るらしいぞ。丘さえ取ってしまえばそれが魔界へと侵略する楔になるそうだ」

「賢者が来るんだろ? 賢者の魔法見るの楽しみだなあ」

「しかし、凄いよな、第七魔術師部隊。こないだなんてあっという間に戦場を制圧したんだぜ」

「こりゃあ明日も楽勝だな」


 気が緩んだ兵士達は酒を飲みながら、如何に魔術師達が凄いか語り始めた。この世界では、魔法を使える者――魔術師は才能がないとなれない存在であり、魔術師であるというだけで、羨望の眼差しに晒されるのだ。


「ん? おい、あれなんだ?」


 真面目に見張りをしていた兵士が声を上げた。


「あん? ……なんだよただのスケルトンじゃねえかよ」

「いや、なんか変な物構えてねえか? それに部隊を展開させているぞ!」


 丘の中腹に細長い筒を構えるスケルトンが数体、佇んでおり、その背後には何百というゾンビの部隊が展開していた。彼らは立ち止まっており、スケルトンの持つ筒よりも長さが短い鉄筒を装備していた。


「結界ある限り何もねえよ。弓やボーガンですらクリスタルは砕けないしあいつらは手出しなんて出来ないさ。さ、お前も飲もうぜ」

「そ、そうだな……でもなんで部隊を展開させているんだ?」

「知るかよ。結界内から【ファイア・ボール】撃って終わりだから明日でもいいよ。こんな時間に魔術師達を起こしたら怒られるぞ? あいつらみたいなクソ雑魚には何も出来な――」


 酔った兵士の言葉の途中で轟音が鳴り、同時にガラスが砕けるような澄んだ音が響き渡った。


「な!? 今のは!?」


 見れば、スケルトンの構えていた筒から白煙が上がっていた。無風のせいで、白煙はまっすぐ上へと昇っている。

 スケルトンは腰のポーチから何やら取り出して筒へと詰め込んでいく。


「お、おい! クリスタルが!」


 アンデッド部隊が展開しているのは、丘側、つまり南側なのだが、前線基地の南西側にあったクリスタルが砕け散っていた。


 更に轟音が鳴り、今度は南東側のクリスタルが砕け散った。


「ま、まずい! 結界が消える!」

「馬鹿な! あの距離から攻撃なんてありえない! しかもクリスタルを狙ってだと!?」

「すぐに警鐘を鳴らせ!! 攻めてくるぞ!」


 兵士達が慌ただしく動く中、ゾンビ部隊がゆっくりと丘を下っていく。


「すぐに迎撃に出ろ! 魔術師部隊をたたき起こせ! 外壁の兵は火矢を放て!!」


 外壁の上にいた見張りの兵達は、油に浸したやじりに火を付けて、弓を引いた。


「放――ぐはっ!」


 ゾンビ達は構えていた鉄筒を外壁の兵士へと向けており、そこから轟音と白煙が上がっていた。


「なん……だ……これ……」

「助けてくれ! 血が止まらねえ! 痛え!」


 外壁に立っていた兵士達は皆、飛来してきた何かによって身体を負傷していた。


「手が! 手が!」


 それは地上で、迎撃に出た兵士達も同様だった。剣や槍が届く距離よりも遙か先から謎の攻撃してくるゾンビ兵達。まるでそうせよと予め決められていたかのように、彼らは筒に火薬と弾を詰め、狙いを定め、放つ。その動きは素早く無駄が一切ない。


 ゾンビ兵達は一斉に撃つのではなく、前列、中列、後列とで撃つタイミングをずらし、弾を詰める時間を確保していた。そのせいで常に弾幕が放たれており、兵士達は近付く事すらできない。


「弓部隊は何をや――」


 指揮官らしき男の頭が吹っ飛ぶ。それは丘から動いていないスケルトン達による狙撃だった。


「ったく、クソ兵士どもは何を騒いでいるんだ? 夜は寝かせろって言っただろ?」


 そんな悪態をつきながら外壁の上に現れたのはローブに杖を装備した、魔術師らしい格好をしている男達――第七魔術師部隊だった。


「どうなっている? なぜクリスタルが砕かれた!?」


 ようやく惨状に気付いた魔術師達が慌てて魔法を放とうとするも――


「ぎゃあ! 痛え!!」

「くそアンデッドが! ファイ――ぐえええ」


 スケルトン達の正確無比な狙撃によって的確に魔術師達が狩られていく。


「基地に侵入された!! くそ! 魔術師部隊は何をしている!!」


 指揮官が殺されたせいで混乱が極まる中、兵士が叫ぶ。

 しかし既に魔術師部隊は全滅、基地も占拠されつつあった。


 攻撃開始から僅か30分の出来事であった。


まだ前装銃ですね。ゾンビ兵は弾幕で命中率を補っている感じで、スケルトンの狙撃については……次話にて!


少しでも【面白い】【続きはよ!】と感じたのならブクマや評価をお願いします。

ブクマは画面上部、評価は広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にするだけです!

面白くなかった方は、★一個にしていただければ幸いです。平均値を下げてやれ!


感想、質問、ツッコミ、指摘、批評などは超お気軽に!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファン新作です! 冒険者のパーティに潜入してランクを決める潜入調査官のお話です!たっぷりざまあがあるので、お楽しみください!

冒険者嫌いのS級潜入調査官 ~冴えないおっさんなんて要らねえんだよ、と追放されたので査定は終了だ。ん? 元Sランク冒険者でギルド側の人間だって知らなかった? 今さら遅え、Eランクからやり直しな~



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ