19:戦場を一変する兵器を作った男
ドラヴァリア、境界門付近。
「おい、なんで王国軍が攻撃してきているんだ!? 友軍ではないのか!?」
「見慣れぬ武器で攻撃してきています! ただ我らの鱗の前では無力ですが、新型兵器と思わしき爆弾は脅威です!」
「南部防衛隊より伝令!! み、南側より魔王軍が!!」
「魔王軍だと!? 総司令は何をしている!?」
ドラヴァリア防衛隊本部は、混乱の極みにいた。
急遽総司令となったゲオルスから、王国軍は友軍なので門を通せと言われたばかりなのに、その王国軍がなぜか攻撃を仕掛けてきたのだ。
更に山の南側に突如現れた魔王軍の軍勢が進軍を開始しており、防衛隊は双方の対応に追われていた。
「と、とにかくまずは王国軍だ! 中まで入ってしまった部隊もいる! 速く片付けないと挾みうちにあうぞ!」
「魔王軍はどうしますか!? アンデッドが中心の部隊で、王国軍と似たような武器を装備しています」
「ならば、我らには効かん! たかがアンデッドだ! そっちで対応しろ!」
本部の中で、情報が飛び交い、現場指揮官とその部下達が右往左往していた。
「おーおー、完全に司令本部が機能してねえじゃん」
そんな本部の司令室にドライゼの声が響いた。
「お、お前は! なぜここに!!」
現場指揮官がその姿を見て、驚きつつも槍を向けた。
それに対しに、ドライゼは笑いながら答えた。
「なぜここに? そんなの一つしかねえだろ……ドラヴァリアを護る為だよ。ついさっき、【竜の爪牙】の幹部の承認を得て、あたしが長老となった。つまり総司令官ってこった。あー、ゲオルス君は長老暗殺の罪で処刑されたから」
☆☆☆
ドラヴァリア西部。王国軍陣地内。
「指揮官! 銃弾が竜族に効いていませんが!」
「……ちっ、だからこんな物使いたくなかったんだ。もういい、擲弾兵を主力にしろ!」
「はっ! 南側には魔王軍の例のアンデッド部隊が展開しているそうですが」
「ならば銃歩兵は南へ展開させろ! アンデッドには流石に効くだろうさ」
現場指揮官の判断は概ね間違ってはいなかった。勇者よりもたらされた武器、擲弾と銃の性質を彼はよく理解しており、銃弾を弾く竜族には擲弾兵を、人間と同じかそれ以上に柔いアンデッドには銃歩兵を当てるのは正しい。
ただし……相手がこれまでと同じ相手であれば、だ。
西部より山を攻める部隊は、擲弾兵の活躍により順調に進軍を進めていた。
「この武器は良いな。竜族が面白いように吹っ飛ぶぞ!」
「へへへ、楽勝ですね! そろそろドラヴァリア内部からも攻撃が始まるはずですし」
「だな。よし一気に攻めるぞ!!」
王国軍の部隊があと100mほどで山の頂上へと差しかかった地点で、急に竜族の兵達が撤退していった。
「あいつら諦めやがったぞ!! 一気に攻めるぞ!!」
隊長を先頭に、王国軍が斜面を一気に駆け上がっていく。竜族がいなくなった事で、兵士達は自然と斜面を登りやすい、山道へと集まっていく。
「隊長! 竜がいます!!」
「竜? 竜人じゃなくてか?」
「あ、いやそれが、何というか……」
丁度太陽が逆光となって、山道の先に立つその存在はシルエットでしか見えないが、長い2本の角とその背後に翼らしき物が見えた。それはこれまで見た竜人とは明らかに違っており、確かに竜と言われればそう見えない事もない。
隊長が、それが何なのか確認しようと目を凝らした瞬間に――その長い2本の角が消え、代わりに赤い雷撃が見えた。
「ん? っ!! お前らすぐに散開し――」
二条の赤い光と轟音と共に、隊長をはじめ山道を登っていた王国軍の兵士達が全員、弾け飛んだ。
放たれたのは時間差で放たれた二つの銃弾。音速を超えたその二つの銃弾によって発生した衝撃波は一部は相殺し一部は重なり、直撃した兵士は元より、射線から少し離れた場所にいた兵士にすらも大打撃を与えた。
衝撃波に遅れて暴発した、擲弾による爆発が王国軍部隊へとトドメを刺した。
たった二発の弾丸で、西部にいた王国軍の過半数が戦死したのだった。
当時の擲弾はまだ原始的な物で、すぐに暴発します。運が悪かったね……
次話は王国銃歩兵(マスケット銃装備)VSアンデッド部隊(ドライゼ銃装備)です。どっちが勝つかな!?
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