17:囲まれた男
「撃てっ!!」
銃がガリル達へと構えられた。ガリルとイサカが発砲し、二人の王国軍兵士を倒すもまだ数人残っている。
「お前ら俺の後ろに!」
グロックが手を広げ、ガリル達の前に立った。
「なんであいつらが銃を!」
「さてな。考えられるとすれば……」
王国軍の兵士の銃が火を噴き、弾が殺到する。しかしそれらはグロックの鱗を削る事すら出来ずに跳ね返っていく。
「くそ! 竜人が敵にいるなんて聞いてないぞ!」
「速く弾を込めろ! 向こうもすぐに撃てな――ぎゃっ!」
再装填したガリルとイサカの銃が火を噴いた。
「勇者の仕業だろうな。だが、所詮は【イェーガー2】の劣化コピーだ」
「ふん、僕達の開発スピードについて来れてないね」
「お前ら突破するぞ! コルトもついてこい!」
「うん!」
グロックが、弾込めに手間取る兵士を腕で薙ぎ払い、走る。ガリル達も素早く装填し後に付いていく。
【竜の爪牙】本部の騒ぎは徐々に大きくなっていった。
☆☆☆
「くくく……随分と弱ってきたな?」
独房で拷問を行っているゲオルスが嬉しそうにドライゼの顔を掴んだ。
「……殺せ」
そう短く呟いたドライゼの腹へと膝蹴りを入れて、ゲオルスが笑う。
「誰が殺すか! 勇者が来るまで、じっくりといたぶり続けてやる!! お前のせいでどれだけ俺が計画が狂ったと思っている!!」
「最後に……聞かせてくれ……長老は殺したのか?」
弱った様子でドライゼがそうゲオルスに懇願した。
「あん? ああ、殺してやったさ!!」
「どうやって……」
「【勇者の盟約】って知っているか?」
「長老であるラゼランシア様と……勇者の間で古に交わされた約束だな……確か」
「ああ。それによって勇者は竜の力を得て、あの老いぼれは刃も矢も魔法も弾く力を得た。その代わりにお互いにしか分からない弱点についても教え合ったという奴だ」
「……まさか……勇者は……弱点を教えたのか」
「俺が……竜王となり、勇者と協力しこの世界を支配する!!」
ゲオルスがそう言って、ドライゼの顔へと拳を振るった。
「うっし、まあこんなもんか」
しかしゲオルスの拳はあっさりと、拘束されていたはずのドライゼの手によって止められていた。
「ば、馬鹿な!? なぜ拘束が!? あれは魔力の流れを阻害す――ブヘッ!!」
「あー疲れた。弱ってる振りって難しいのよねえ。しかしほんとお前バカだよな。ちょっと余裕な立場になったらべらべら喋りやがって。おかげで大体把握できたよ、さんきゅー」
蹴られて吹っ飛んだゲオルスの前に先ほどまで拷問を受けて弱っていたとは思えないドライゼが立っていた。
「ありえない……なぜだ!! レッサードラゴンの貴様の力ではあの鎖は!」
「いやさ、あたしって半分人間の血が流れているおかげでさ、スキル持ちなのよ。あれ、言ってなかったっけ?」
「スキルだと!? あれは人間だけが持つ力のはずだ!!」
「とりあえずお前は死んど――うお、逃げ足速いなあいつ」
あっという間に姿を消したゲオルスを見て、呆れた口調でドライゼがそう呟いた。
「さてと……騒がしくなっているな。とりあえずまずは合流するか」
騒がしい方へと走るドライゼ。途中で何度か兵士に出会うものの、全てなぎ倒し、進んでいく。
すると、大広間で王国軍に囲まれたガリル達の姿が見えた。
「ギャハハ!! お前ら全員動くな!! ドライゼ! お前もだ!!」
「ご、ごめんなさい……」
ここまで逃げ延びていたゲオルスが、コルトを捕まえており、その喉に槍を突きつけていた。
「おーおー、ここに来てまだ小物感出すとは……誇り高き竜人は何処にいったんだ?」
ドライゼが手を上げながら、ガリル達に合流する。
「無事だったか」
「心配してくれたのか? ガリルお前良いとこあるじゃん」
「ドライゼ……すまねえ……囲まれて突破しようとしたらコルトが転んじまって……」
「グロックも巻き込んで悪かったな」
「で、どうするの? 僕もガリルも弾切れだよ」
ガリル達四人に、竜人の兵士は槍を、人間の兵士は銃を突きつけていた。
コルトはポニーテールをゲオルスに掴まれており、泣きそうになっている。
「お姉様……師匠……ごめんなさい」
「ガキは喋るな!!」
ゲオルスが蹴りをコルトへと叩き込む。
それを見て、ドライゼの目がスッと細められた。
「ガリル、イサカ。開発は順調だったか。お前らがここで1週間何もしてないわけないよな」
ドライゼの言葉にガリルとイサカが力強く頷いた。
「待たせてしまったが……魔王殿専用の銃が完成した。が、グロックの工房に置いたままだ」
「まじかよ。やべえ奴か? あたしが持つに相応しい銃なんだろうな?」
「――保証しよう。あれを使いこなせるのは……魔王殿、貴女だけだ」
「はは、そいつは楽しみだ。じゃあ早速使わせてもらおう――【転送】」
その魔法は、位置情報さえ事前に分かっていればその場所にある物体を自分の元へと転送できる魔法であり、世界でも使える魔術師は一握りしかいないほどに、難易度の高い魔法である。
ドライゼはグロックの工房へと位置を合わせ、そしてソレを転送した。ドライゼはソレがそうであるとすぐに分かった。
「な……んだそれは」
ガリル達を覗く、その場にいた全員が絶句していた。なぜならソレはあまりに規格外で、見る物を圧倒するほどの存在感を放っていたからだ。
それを、まるで前から知っていたかのようにドライゼが装備した。
ドライゼが左右の手でそれぞれ逆手に握ったハンドルから伸びるのは、3メートルは超える銃身を持つ銃だった。それは従来の銃と違い、銃身が円筒ではなく長方形であり、真ん中に切れ目が入っている。
右手と左手それぞれ一本ずつ銃身を持つその銃は、ドライゼの背中へと装着されたまるで翼のように広がったバックパックへと接続されていた。
その姿は、両手に槍を携えた、まるで翼の生えた竜人のような姿だった
「オディールよりデカいな」
「魔力を込めると、ミスリル製の砲塔が開く。あとは引き金を引けばいい」
「再装填は?」
「不要だ。背後のバックパックから自動的に銃弾が装填される」
「弾数は?」
「右と左でそれぞれで50発、計100発だ」
「銃弾は?」
「大口径専用弾。魔王城の外壁すらも貫通できると保証しよう」
「パーフェクトだ、ガリル」
満足げにドライゼは頷いた。
「当然だ。ただし一点ものだぞ。俺にもまだ完全に理解できていない機巧が多分に含まれている。暴発しても恨むな」
「構わねえさ」
そんなドライゼを見て、ゲオルスが虚勢を張った。
「こ、こけおどしだ!! そんな銃があるわけがない!!」
しかしそんなゲオルスを無視して、ドライゼがガリルへと問いかけた。
「肝心な事を聞いていなかったな。名前は?」
「――【黒竜咆】」
「良い名だ」
ガチャリと、ファーヴニルの銃口がゲオルスへと向けられた。
「さってと。最後に言い残す事はないか?」
「貴様!! すぐにそれを下ろせ!! このガキがどうなってもいいのか!?」
「じゃあなゲオルス。今度こそ――さよならだ」
ドライゼの魔力で――ファーヴニルがその顎を開いた。
急にぶっ飛んだ銃が出ましたが、遺産を使ったオーパーツ的なサムシングです。
どんな銃かは……次話にて! ゲオルス君、お疲れ様でした(フライング
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