02
「ごめんなさい、遅れました。」
僕は彼に近寄り、彼の前にある椅子に座る。
「...いつもより10分遅い。」
待ち合わせ相手の彼...永里さんは体制は変えず、流し目で僕を見た。
「病院に行ってたんです。すいません。」
「...そう、なんだって?」
「永里さんの予想通りです。
...全色盲だといわれました。」
僕は椅子の横に置いておいたパネルとイーゼルを手に取る。
永里さんと僕の関係を簡潔に言うと、
永里さんは僕にとって絵を描く対象...つまり、モデルといったところだろう。
同じサークルに入っている先輩で、
数か月前から永里さんからよく話しかけてきてくれた。
「ねぇ萩原?」
「はい」
「俺描くの楽しい?」
「...それ、永里さんが言います?」
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もともと僕らはよく話すほうではなかった。
ただ同じサークルに入っているだけの仲。
けど、僕が絵のコンテストで優勝した、ということをどこからか知ったらしく、
「俺のこと書いてよ」
と話しかけられたのが始まりだった。
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「ははっ、本当にいつも熱心な目で見てくれるからさ。」
「...変態臭いですよ。」
いつも僕が書いている間は、
永里さんは体制は変えないでくれて、
2時間ほどの作業が終わると、そのまま僕の家でご飯を食べて、解散している。
「順調?」
「おかげさまで。」
「もう1か月くらいその絵だよね」
「コンテストは来週なんで。
それまでお願いします。」
「ははっ、そのあとも、でしょう?」