52話
足音の正体が姿を現したが、やはり暗い場所であり、更にオカ達がいる場所と足音の人物が居る場所は、直線ではあるが、距離がそこそこ離れている為、肉眼では顔の表情までは確認出来ないみたいだ。
「アイツがさっきまで俺達の後ろに居た奴か?」
「多分そう……」
「私達が外で会った人と同じかしら?」
その人物はゆっくりと、オカ達の方に向かって歩き出す。
「な、なんかこっちに来ますよ」
「怖い……」
フィブは直ぐにダルマの服を掴む。
「逃げますか?」
オカはプルに問い掛けると、プルは一度大きな声で近づいて来る人物に話し掛ける。
「私達はパラノーマルと言う会社の者なのですが、貴方は何故こちらに来たのでしょうか?」
向こうに確実に聴こえる声量で話し掛けたが、プルに反応を返す事なく、ゆっくりと近付いて来る。
「す、少し危ない人かもしれないから逃げましょうか」
「「「賛成」」」
全員が直ぐに後ろを振り向きもう一つの階段に向かって逃げ出す。
(また、走るのか)
オカ達は階段目指して駆け足程度のスピードで移動する。だが、先程と違うのは相手も同じスピードで追い掛けて来た……
「お、おい。なんか向こうも駆け足にななっているぞ」
「アレを見て……」
フィブの言葉に全員が走りながら後ろを向く。
「笑っているわね……」
「しかも、声を出さずに」
「も、もしかしてアイツがパクトか!?」
オカ達が見ると、そこには肩だけ震わせて笑う姿が見え、手には何やら電動ドライバーの様な物が握られていた……
「お、おいおい。アイツ電動ドライバーみたいなのも持っているぞ!?」
「やっぱりパクト……」
後ろからオカ達を追い掛けて来るのは、あの都市伝説パクトの特徴とそっくりの人物であった……
「都市伝説じゃ、無かったのかよ」
四人が強張り、焦っているのが見て分かる。
「プルさん、どうしますか?」
「そ、そうね。取り敢えず逃げるしか無いわ」
「はぁはぁ、俺そろそろヤバイかもです」
「頑張って逃げるしか無い……」
駆け足程度では有るが、ダルマは息が上がり始め苦しそうにしている。
パクトは背後から追い掛けて来ており、足音とは別に電動音も工場内に鳴り響く。
「都市伝説と全く同じですね」
「さっきの女性の死体は恐らくパクトの仕業ね」
「はぁはぁ、無数に穴が開いていましたね」
「逃げきれそう……?」
パクトは少しずつだが、オカ達との距離を縮めて来る。
「こののま、外の車までは逃げ切れそうに無いわね……」
「それじゃ、何処かに隠れますか?」
「はぁはぁ」
「ダルマがそろそろ限界……」
(大分、息が上がっているな……)
「隠れると言っても、バレたら袋の鼠よね」
すると、前方に階段が現れる。
「それじゃ、こうしましょう。階段を降りたら、足音を立てずになるべく移動して死角になる場所まで移動しましょう」
(死角があるか分からないけど、ダルマも限界そうだし、それしか無いか)
階段を駆け足で降りる四人。
「皆んな、ここからよ!」
プルの掛け声で、一同は走るスピードを緩めて、足音を立てずに移動する。
「あの柱に隠れるわよ」
プルは階段を降りて長い廊下に等間隔で大きな柱があったので、そこに隠れる様に移動する。
しかし、フィブだけは別の方向に向かって行く。
「お、おいフィブ何しているんだよ!?」
小声ながらも、オカはフィブに問い掛ける。
「直ぐ戻る……」
廊下には柱が等間隔にある様に、部屋の扉も等間隔にあり、その内の一つを静かに少しだけ開け放つ。
「騙されるか分からないけど一応……」
フィブがした行動は、確かに廊下を歩いている人物からしたら、一つだけ扉が少しだけ開け放されている為、誰かがいる様に思えるかもしれない。
(このまま、通り過ぎてくれよ……)
オカ達は柱に身を隠しながらパクトが通り過ぎるのを待つ。
そして、階段からパクトの足音が聴こえて来る。
「もうすぐ、姿を表すわ」
柱から少しだけ顔を覗かせるプル。
コツン、コツンと階段を降りる音がして、とうとうオカ達が隠れている階に到着する。
パクトも、急に足音が消えた事に疑問を持っているのか、周囲に隠れたと思い、あちこち見ながら廊下を歩く。
「雨カッパ……?」
ブィブは、パクトの様子を見ようと柱から少しだけ顔を覗かせると、パクトは大き目の黒い雨カッパを身に付けており、顔が隠されて良く見えない状態であった。
コツン、コツン。
パクトが歩く度に工場内に足音が響き渡り、また電動音も一緒に鳴り響く。
(どっか行ってくれ、どっか行ってくれ)
心の中でオカは願うが、パクトは入念に周囲を探しまわる。まずは、廊下をぐるりと見渡した後に部屋を一つ一つ調べる様に開け放っていく。
「皆んな、移動するわよ」
プルがパクトの様子を見ながら話し掛けて来る。
「このままだと、バレそうだからパクトが部屋の中を確認した瞬間に、また階段まで移動しましょう」
どうやら、プルの作戦はパクトが部屋の確認をする際に扉を開けて一度部屋内に入るので、その間に階段まで行くという事らしい。
「大丈夫……?」
「このままだと恐らく、この柱も確認されそうだわ」
(確かに。かなり念入りに探し回っているしな)
「はぁはぁ、わかりました」
まだ、完全には息が整っていないダルマは苦しそうにしながらも、頷く……




