09
宿は幸い、満室ではなかった。
「運が良かったね、お兄さん。忙しい時は宿は空かないから気をつけないと」
「そうだね。今度から宿を取ってから仕事に行くよ」
5日分を先払いしておいたシュンは、しばらくこの街を拠点にして仕事をすることにした。
エレナという唯一といってもいい知り合いがいるからだが、どこの街に何があるのか、今夜【ナビゲーション】で調べておくつもりだった。
「じゃあお夕食はウチで食べるのね。もう日が暮れるから、いつでも食べられるよ」
「ありがとうアリシアちゃん。部屋を確認したら、降りていくから」
「はい。ここがシュンさんのお部屋です。一人部屋だね」
ベッドがある以外はなにもない、狭い部屋だ。
ビジネスホテルより狭い。
だが特に荷物もないし、広くても持て余すだろうから別に構わないだろうとシュンは判断した。
「そうだ、アリシアちゃん。お風呂とかってない?」
「あるわけないじゃない。高級宿じゃないんだから。身体を洗いたいなら、後でお湯をお持ちしますよ?」
「うん。じゃあ食後に頼むよ」
「はあい」
シュンは一階で食事を済ませた後で、お湯で身体を拭いた。
シャワーがないのは辛いが、シュンのボディは水を弾く。
どうやら【物理装甲】のおかげで汚れにも強いようだった。