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04

 【俊足】レベル8は爆速だった。

 半分くらいの速度で流したつもりだが、時速100キロくらい出ていたと思う。

 本気を出したら人間でも馬より速く走れるとは……とシュンは呆れた。


 さすがは異世界ファンタジーである。


 シュンは何気に一番レベルの高い【ナビゲーション】もあって、あっという間に街にたどり着いた。


「おお、なんだ凄い速さで走ってきたから魔物かと思ったぞ。何者だ!?」


「あ、旅の冒険者のシュンです」


「冒険者登録証は?」


「え、あ、紛失してしまいまして」


「ふん、そうか。まああれだけの速さで走れるんだ、冒険者で間違いないだろう。よし、通っていいぞ」


「あ、どうも。それで冒険者ギルドってどこですかね」


「あそこに看板が見えるだろう?」


「あ、そうですね。すみません、ありがとうございます」


「おう。とっとと再発行してもらいな」


 シュンはイノシシの看板の店舗に入ると、さっそく受付カウンターに向かう。


「こんにちは。冒険者になりたいんだけど」


「はい。新規登録ですか?」


「はい。そうです」


「ではこちらの用紙に氏名とクラスの記入をお願いします」


「クラス?」


「あ、漠然としたものでいいですよ。剣士、とか。魔法使い、とか」


「あ、ああ。そういうことね」


 てっきりクラスというシステムがあるのかと思ったシュンだが、どうやらそういう意味ではなかったようで安心した。

 なにせ自分のステータスにはクラスは表示されていないからもしもそういうシステム漏れがあった場合は困ったことになると心配になったのだ。


 氏名にシュン、クラスに格闘家と書いて提出する。


 すると受付嬢が表情を曇らせた。


「格闘家ですか……あまり人気のないクラスですが、よろしいですか? 今後、武器をもつなら剣士や槍使いなど、書くことができますけど」


「いや。格闘しかできないので、今はそれでいいです」


「そうですか。分かりました、少々お待ち下さい」


 少し待つこと3分ほど。


「カードが出来上がりました。初回発行にはお金がかかりませんが、紛失や汚損などで再発行する場合は銀貨1枚がかかりますので、気をつけてくださいね」


 どうやらカードはタダで、登録もタダらしい。

 門戸の広い職業だな、とシュンは思った。


 それもそのはず、冒険者とは文字通り命をかけて危険を冒す職業なのだ。

 食い詰めた者が行き着く先でもある。

 そこに登録料などというものがあったら、食い詰めた者たちは犯罪に走るしかないだろう。

 いわば社会のセーフティネットの役割があるのだ。


 そんなことはつゆ知らず、シュンは早速依頼ボードを眺める。

 すると手紙の配達という依頼を目にして、これだと手にとった。

 すると依頼票に同じく手を伸ばした者がいることに気づいた。


「あ、これ取りますか?」


「いや、あなたの方が早かったわ。気にしないで、他の依頼を探すから」


 少女は15歳くらいで、キリっとした美人だった。

 だからというわけじゃないが、右も左も分からないシュンには頼りがいがあるように見えた。


「あの、俺、実は今日登録したばっかりなんだ。よければ一緒に受けないか?」


「いいの? 依頼料、そんなに高くないから半分にすると雀の涙よ?」


「いいんだ。仕事上の知り合いを作りたいってことで。俺はシュン」


「私はエレナよ」


「じゃあ依頼を……どうすればいいんだこれ」


「本当に今日、登録したばかりなのね。受付カウンターに持っていくのよ」


「やっぱりありがたい。エレナ先輩と組めて良かったよ」


「私もたいして冒険者の経験はないわ。普段は錬金術と魔術を勉強しているの。街を移動するついでに何か依頼を、と思って手紙配達を受けようと思ったんだけど……」


「なるほどね。錬金術に魔術かあ。俺は格闘くらいしかできないけど」


「前衛ね。でも格闘? 魔物に素手で立ち向かう気じゃないでしょうね」


「そこは大丈夫。これでも拳には自信がある」


「へえ。言い切るなんて興味深いわね」


 【物理装甲】Lv5とはSUVの硬さのことである、とシュンは解釈している。

 その通りなのだが、つまりシュンの拳とは鋼鉄でぶんなぐるようなものなのだ。

 弱いわけがない。


 エレナと一緒にカウンターで依頼を受理してもらい、ふたりは早速、街を出ることになった。


「シュン。なにか準備はある?」


「いや、大丈夫。あ、でもお腹が空いたかな」


「じゃあそこの屋台で何か食べましょう。隣街までは半日あればつくから、保存食なんかはいらないわ」


「何から何までありがたい。お礼にここはおごるよ」


「そう? じゃあご相伴にあずかろうかしら」


 シュンはお好み焼きサンドのような不思議な食べ物をふたつ買って、ひとつをエレナに渡した。


 シュンは大きく口を開けてバクリと行った。


「あ、結構おいしいね」


「そう? 普通だと思うけど」


 エレナは上品にちびちびとかじっている。


 しかし、とシュンは思う。

 隣町まで半日、ふたりきりの旅なのにエレナが物怖じしたり警戒したりしないのは一体、なぜだろうか、と。

 エレナが腕前に自信があるのか、とも思ったがそうは見えない。

 だとすると……もしかして世間知らずなのではないだろうか。

 もしくは底抜けにお人よし、とか?


 シュンが頭を巡らせているうちに軽食タイムは終わった。


 さあ、街を出て手紙を届けに行こう。


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