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戦力の向上は、武器術と魔術の習得が一般的だ。
もちろん基礎となる武器スキルの向上ができればそれが一番理想的でもある。
シュンイチとニーナには模擬戦をたくさんやるように言ってある。
ルウには斥候の技術を磨くため、探索者ギルドの練習所に行ってもらっていた。
魔術の習得は適切な指導官が必要になる。
シュンとシュンイチはエレナに教わったが、エレナ自身のレベルアップのためにも、もっと魔術に詳しい人に師事する必要があった。
シュビレナの魔術も独学とはいえかなり強力な魔術を習得している。
ビビに手ほどきを受けたと言っていたが、ビビ本人はからきしだったそうだ。
シュンはその伝手を得るために、探索者ギルドの依頼を受けてコネクションを得ようと考えた。
依頼主に高名な魔術師がいたら、師事を乞うのだ。
とはいえ、そうそうそんな美味しい依頼はない。
ひとまずエレナとシュビレナは自習ということになった。
さてシュンはといえば、シュンイチとニーナの訓練に混ざるか、単独でダンジョンに潜るかのいずれかだった。
シュンは実際、単独で第四階層まで到達している。
斥候がいないので罠は踏むしか無いのだが、それでも物理魔法双方の装甲があるためダメージは軽微。
そして高速移動からの〈突進〉や〈遠当て〉で魔物を屠っていく。
探索者ギルドでは早くもシュンは有名人になりつつあった。
“マスターブドウ”シュン。
いつしかそう呼ばれるようになっていたのだ。
なんだか葡萄の品種みたいだなあ、とシュンはぼんやり思った。
大抵の二つ名はやっかみも混じるので、微妙にダサいのだ。
“刺殺の”ビビ、“マスターブドウ”シュン。
その娘シュビレナはなんという二つ名を得るだろう。
シュンはちょっと楽しみにしていた。




