21
ギルドマスターはシュンとビビによってゴブリンの集落が完全に破壊しつくされている光景に絶句していた。
ギルドマスターが集落にやって来たのはゴブリンが指揮個体を失って混乱してからだ。
それまでは樹上からの矢による攻撃で死傷者を出しつつ、集落まで攻め上がることができなかった。
それを遊撃のたったふたりで指揮個体を倒し、集落を壊滅状態にまで破壊したのだから、ギルドマスターも驚くしかなかった。
「俺が現役の頃でもここまでは無理だったぜ。凄い奴だ、シュン」
ビビのフォローもあったにせよ、シュンの存在が大きかったのだろうとギルドマスターは見ている。
刺突で殺されたゴブリンよりも、格闘でころされたと思しき死体の多さがそれを証明していた。
「シュン、ビビ、よくやった。指揮個体の死体はどこだ?」
「えっと、どこだっけビビ?」
「まったく。ちゃんとあそこの壊れた建物の上に置いておいたよ」
「ありがとうビビ」
「アンタは忘れてたね、完全に。指揮個体から魔石が取れるってことを」
「う、そうだったね。魔石は初めて見るよ」
ギルドマスターはシュンの初々しさと殺した数のギャップに辟易としながらも、指揮個体の死体の確認をした。
「ゴブリンリーダーだな。まったく、コイツがいたなら単純な作戦じゃ無理だったってのに……気づかなかったぜ」
ギルドマスターがゴブリンリーダーの解体を始めた。
シュンは人体が解剖されていくようであまり見ていたい光景ではなかったが、冒険者として、殺した者としても見ておくべきだと覚悟を決めて見ることにした。
「取れたぞ。これはお前のものだ、シュン」
胸の真ん中辺りから取り出されたのは拳大の魔石だった。
それをギルドマスターはシュンに差し出した。
「ありがとうございます」
「よし、後は焼き払っておしまいだな。お前ら二人は活躍したから、先に戻ってもいいぞ」
「ではそうさせて頂きます」
「おう、ゆっくり休みな」
シュンとビビはゴブリンの集落を離れた。
「なあビビ、魔石って何に使えばいいんだ?」
「さあ。アタシも手にしたことはないから、実際に使い方は知らないんだ。聞いた話だと、錬金術に使えるらしい」
「じゃあエレナに渡してみようかな」
「…………」
「え? 別にタダでプレゼントするって言ってるわけじゃないからな? そんな顔するなよ」
「い、いや。なんでだろう。アンタがエレナに魔石を渡しているところを想像したら胸がギュっと苦しくなったんだ」
「…………それは、その」
「どうやら本気になっちまったみたいだね、アタシの方が」
「…………」
こんなときに気の利いたことのひとつも言えないシュンだった。




