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お弁当を途中で買って行って、ビビとふたりで山に登る。
今回はサーベルタイガーを探すため、山にある森を探索しなければならない。
シュンは【悪路走破】があるから楽に歩けるが、そうではないビビは茂みにひっかかりながらシュンに文句をつける。
「おいシュン。普通は獣道を通るだろう。なんで茂みのある方へわざわざ行くんだ」
「すまない。俺は【悪路走破】があるから気にならなかった」
「はあ? お前はスレイプニルか何かか? そんなスキル、人間が取得できるわけないだろう」
「そうなのか……」
「まさか本当に習得しているのか? まったくおかしな奴だな」
ビビに怪しまれてしまったが、思えばSUV関連のスキルはそもそも自動車のスキルだ。
人間が持っているのはおかしいスキルばかりなのかもしれないとシュンは思った。
……今度からSUV関連のスキルは隠していこう。
今更だった。
歩くこと2時間ほど。
遭遇する雑魚を蹴散らしながら、サーベルタイガーを探す。
遂にシュンの【全周視界】が、サーベルタイガーを探し当てた。
「いた」
「え、どこだい」
「あっちだ」
シュンはまたも茂みをかき分けて走り出した。
完全にビビを置き去りにすることになったが、せっかく見つけたサーベルタイガーに逃げられては元も子もない。
サーベルタイガーはものすごい勢いで近づく人間にひと吠えして威嚇しつつ、シュンに踊りかかってきた。
それをカウンターで殴り飛ばして、サーベルタイガーは即死した。
時速100キロで突進したシュンの鋼鉄パンチは虎さえも一撃で倒してのけたのだ。
シュンは討伐部位かつ換金部位の2本の巨大な牙を抜き取り、毛皮を剥ぎ取りにかかった。
毛皮には刃物の傷もない上物としてやはり高額で売れると判断したのだ。
グレイリンクスのときと同じことになると、シュンは予想していた。
剥ぎ取りを行っている最中に、茂みを突破してきたビビがようやく合流してきた。
「まったく。あっという間に視界から消えたから追うのに苦労したよ」
「でも俺が通った後は茂みも崩れていただろう?」
「限度ってもんがあるよ。……ってもう解体しているのかい? 本当にひとりで倒しちまったんだねえ」
「まあね」
一撃だった、とまでは言えないシュンだった。




