団長は辛いよ
私、戯曲曲芸団団長、シュレイヤ・アストリーの朝は早い。自分のベットから起きてまず最初にするのはこの世界の創造神である女神アルテナ様にご挨拶することから始まる。部屋のすみにある山羊を従えた女神の小さな像の前に跪く。
「創造神アルテナよ、本日も素晴らしき朝を迎えることができました、感謝します。
"女神よ創造神アルテナよ、我らのために祈り給え、世界への御約束に我らを叶わしたまえ。"」
しばらく祈り続けた後立ち上がりホットコーヒーを飲む
「………ほぅ…。」
このひと時が毎日で最も幸せなのかもしれないと思えるほど私の仕事は激務だ。いや、別に書類作成とかは全然構わない、部屋に引きこもれるしあまり悪いことはない
この仕事が激務である理由が…
___ギィン!ガキンッ!
「ギャァァァァ!!!!!俺のドアがぁっ!」「サントマさんとニニョルさんの喧嘩だぁ!!!」「誰かっ!誰か止めてくれ!!」「団長ぉー!!団長ぉぉぉー!!!」「いいぞー!サンちゃーん!!もっとやれーっ!」「シルキーさんっ!煽らず止めてくださいっ!」「キャァァ?!あたしの陽炎の衣装がっ!!??」「おめぇら、なにやっおおっふ?!」「あああっ?!ゴルドックさぁん!?」
これだ。朝からこれだ。このマイルームスペースには住み込みでスタッフをしているヤツもいる。一般人といったら一般人だし、戦闘能力はあまり無い。基本的に節団の被害者になる、なってしまう。なにせ森の奥深くにあるサーカス団だ。もちろん森には魔獣等がたくさんいる、よほどのツワモノでない限りおいそれとここには来れないからだ。
___キィン!カン!カンッ!
椅子に座り書類に手をかける、羽ペンにはシルキーの魔獣のソースの羽を使っている。女子より可愛い顔してるんだよなぁ、アイツ。
時々アイツのネーミングセンスがわからなくなる。辛いものが好きだからといって魔獣にも辛い物の名前をつけなくてもいいじゃないか、名前を言うたび辛さが口の中にジワリとにじむんだ。あれは食い物じゃなかった、劇物だった。
「貴方ねぇ?!いつも言ってるでしょう?!別に酒が悪いとは言わないわ!だけど限度ってものがあるでしょ?!」
「るせぇなぁっ?!飲むのは勝手だろ?!お前は俺のお母さんかよっ?!」
「バディですっ!」
「そうでしたっ…!」
__ギィン!
あー、声と剣戟音がコチラに近づいて来るなんて一切知らない気づいてない。
「てめぇら、うるさいぞ。朝からカンカンカンカン剣戟響かせて。痴話喧嘩なら外でしてこい。」
「「「「ふっ、副団長キターーー!!」」」」
それは悲鳴でもあり、歓声だったかもしれない、私にとってはただの被害総額増加への合図でしかない。アア、オワッタ。
「はぁっ?!痴話喧嘩ですって?!貴方に口出されたくありませんっ!このヘタレ男がっ!」
「サントマの言う通りだっ!黙ってろ!!レイヤにしっぽ振るしかできねぇ駄犬やろうがっ!!!」
ほーら、やっぱこうなるんだ。煽っちゃ駄目だよ、ニニョル、サントマ。イクスってば狂戦士で冷静沈着に見えるだけの爆発物だから…
「あ"??」
ほらぁー、怒っちゃったじゃーん…
「フフッ…ハハハハハッ…。」
剣戟が止み、シンと静かになったドアの向こう側。笑い声が静かな廊下に響いた。
「ぶち殺してやるよぉ!!!!てめぇらぁっっっ!!!」
第2ラウンドッ!ファイッ!
ゴングがどこかでなった気がした。
◇◇◇
破壊音が続く中、コンコンと静かにドアがノックされる。
ガチャとドアを開け入ってきたのは双子のメイダとメイドだ。
「あっ!やっぱり起きてた!レイねぇ!」「起きてた…」
「あぁ、メイダにメイド。よく無事だったな。」
きっと廊下は剣戟や破壊の嵐なのだろう、メイダ達の部屋は1番私の部屋と遠い所にある。2人が回避が得意とはいえよく来れたものだ。
「へっへーん!得意だからねっ!褒めてもいいんだよっ!」「…いいんだよ。」
てててっとよってきた2人の頭を撫ぜると2人は目を細め嬉しそうにする。
「はぁ…、行くか。」
もうすぐ料理班のメンバーの料理が出来上がる時間帯だ。最後にペンを走らせて。メイダとメイドと手をつなぎ部屋を出た。
請求 修繕費 1,200,000G
イクス
ニニョル
サントマ