ヒーローと犯人は遅れた頃にやってくる〜その3〜
ニニョル。彼はこの曲芸団の第1節団でありサントマと共に軽業をしている。実力も申し分なくこの曲芸団のなかで最も身が軽く、優秀なのだが…。
「ニニョルはイタズラぐせがひどいからなぁ」
とおっとりつぶやくゴルドックに全員がバッ!とゴルドックを睨みつけそれぞれ口を開く。
「イタズラ?!ゴル君!あいつのはイタズラじゃないよ!軽い犯罪レベルのたちが悪るすぎるイタズラだよ?!」
「そぉうですよっ!あたしの朝露の踊り子の装備に何したと思います?!洗い流せるとはいえ?水のりに漬けられていたんですよ!?」
「そんなのいったらボクたちだって!ジャグリングのピンをマイルームの床に敷き詰められてたんだよぉ!?」
「……片付け、すごく大変だった…。」
「そういえば、僕もリュートの中に、砂入れられた事あったっけなぁ…。」
「元カノ…襲撃…謝罪…うっ、頭が…!」
「修繕費…謝罪…書類…うっ、頭がっ…!」
「くぅ…うちのバディが本当にごめんなさい…。」
全員が自由に騒ぎゴルドックがオロオロし始めた時だった。
「いよぉ〜、全員勢揃いでどったーの?」
ヒラヒラと手を振りながら片手に酒瓶を持ってフラリと舞台袖から男が出てきた。
◇◇◇
「うぬん?なになに?みんな怖い顔して、そんなに睨んでもなぁんもないよぉ?」
ヘラヘラ笑う彼が初期メンバーでもあり曲芸団で1番の素行問題児のニニョルだ。
彼は顔がいい。バディのサントマも美しいがニニョルは切れ長の目の目尻の小さな切り傷がチャームポイントだがそれも愛らしく写るほど綺麗な顔立ちをしている、街を歩けば10人中6人は振り返る顔だからか女性がよって来る。
だからかあっちこっちでカノジョを作っては別れ作っては別れを繰り返しては諦めきれなかった元カノがニニョルを追って危険をかえりみず霧雨の森までやってきては逆上し、テント等を破壊しては憤慨しながら帰るのだ。
その時に説教するのが…
「えぇ、そうよねぇ?ニニョル?デスソースやイクスがいくら暴れて貴方には関係ないわよねぇ…?」
バディのサントマである。
「…う、うん?サントマァ?どったの?」
サントマはじわぁ…とドス黒いオーラをにじませながらチャキと得物である【疾風の双剣】を構えて臨戦体制を取る。
「さぁ、ニニョル?答えなさいな?デスソースの檻を開けたのは貴方?」
黒い笑顔で尋ねるサントマにへらりとイケメンフェイスを振る舞った。
「え〜?鍵ぃ?あー!うんうん、開けた開けた!シルのロックナンバーが簡単すぎてチャッチャと入れれたんだよね!うんうん!うん?それがなんなの?」
彼に起こったことはみなまで言わないがボコられ切られ鎖で縛られ吊るされた、とだけ言っておこう。