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第7話 巨大化した敵と必殺技

 巨大化した相手に対しての対処法と知られるのは弱点を集中攻撃する事か自分達も巨大化又は巨大ロボに乗り込み闘う事だろう。少なくとも武器が持ち込めない時点で巨大ロボも持ち込めそうにない。それ以前に〖収納〗や〖収納EX〗に入れられるかも分からないのだ。直接持ち込もうにも入り口が狭い時点で無理なのは分かりきっているのだけど。


「巨人系のモンスターや巨大なモンスターの遺伝子はある。けどこれ使っても大した大きさにはならないしな……。」


 サイクロプスやらの巨人の遺伝子は何回か入れられているが、大体の巨人系モンスターは対峙している奴とは比べものにならないくらいに小さい。大きくて体育館レベルの高さしかないのだから高層ビルレベルのでかさの奴と比べると焼け石に水レベルだ。それに私の力とは凝縮する事で真価を発揮する為巨大化してこれまで通り闘うのは難しいのだ。


「……まぁ、やるだけやってみますか。」


 私はそう言いながら自分の体を確認する。胸に出現させたスカルリッチドラグーンはクールタイム中とでも言うレベルで沈黙しているが、マグマニック・トンパードの時の様な攻撃で無ければどうにか放つレベルには回復している。最も、あの威力で倒せるとは思えないけどな……。


 巨大化は出来ずとも飛行能力は健在なのでどうにかなる可能性はあるが、取り敢えず私は巨大化した赤い鎧の怪人を観察する。下から見ると鎧で全身をカバーしているのは分かる。それに加えてマグマを操る力もある為、マグマに体を落とすなんて戦法も通用しないだろう。


「なら、正攻法かな。」


 一応試す価値はありそうだと私は骨製の翼を翻し、一気に上昇した。途中怪人が帯刀していたらしい剣で斬り付けてくるが、私はそれを躱しながら勢いを付けて上昇する。しかしこの状況の中、私はコイツ巨大化しただけで実は弱いのでは?とも感じてしまっていた。まぁ、巨大になるだけでも圧倒できるパターンもあるし、仕方ないのかもしれない。


「………さぁ、フィナーレだ!見下ろされる前に叩き潰せなかった事を後悔しやがれ!」


 私はそう言いながら右手に力を集める。言ってみたかった決め台詞ではあるが、不確定要素が残っている状態で言うべきでは無かったと反省する。だがその反省も杞憂に終わりそうだった。


 私が垂直に上昇するだけであるにも関わらず、赤い鎧の怪人は手に持った剣を振るだけという、妨害する気のない攻撃だけしかしてこなかったのだ。それでも私が何をしようとしているのかが理解できたのか抵抗しようとするのは見事である。それなら決死の勢いで斬り掛かってくれればいいのに防御で済ますのは残念なのだけど。


「大・斬・切!!」


『ウォァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』


 私が右手をチョップするかのように振り下ろしながら急降下すると、赤い鎧の怪人は剣を使ってガードしようと試みる。しかし、剣の強度が足りないのか私の攻撃は弾く事も止める事も出来ず、数秒間火花を散らしながら抵抗した後、刀身が粉々に砕け散っていった。その後は諦めたのかほぼ無抵抗のままスッパリと切断されたのを見ると、本当に巨大化以外の力は無かったらしい。



「で、倒された後は爆発するのがセオリーっと。」


 切断された後、跡形も無く爆発した怪人を見て私は安堵する。よくよく考えれば怪人がライダーに変身するなんて事はよくあるのだし、シリーズを超えた事案もあったなぁと感慨にふける。正確には怪人がアイテムを使って別の怪人になるという物だったのだがその辺りを突っ込んだら負けだ。


 ただ、この状態でクエスト空間から地下空間へと戻るわけにもいかないので私は胸に出した頭と手の甲の爪、肩甲骨から生やした翼を元に戻す。ただ、出すときとは違う痛みが私を襲うため、リザルトを見る所では無かったのだった。


 爪は大した痛みもなく体に戻せたのだが、胸のドラゴンの頭は心臓を握られる様な痛みがし、肩甲骨の翼も脱臼したかと錯覚するレベルの痛みがある。今後はもう少しスムーズにかつ痛みも無いまま仕舞えるようになりたい物だと感じながら、私はダンジョンツリーがある地下空間へと戻った。マグマによる暑さが無い空間は快適だと思いつつ変身を解いた私は改めてリザルトを確認するのだった。


………………………………………………………

Quest:Result

マグマニック・トンパード 討伐成功

W-up 墜血武者・紅大 討伐成功

時間 00:20

報酬:ACG筐体:ラミーデュエル 第8弾

  :ニンケンレッド変身セット(成人用)

W-up:[特撮]Bランクカタログ75

参加人数:1人(+0人)

貢献度:東郷 遥 100%


Hunter:Result

口座:+600万

   +3000万

   =9000億8600万

SP:Error

………………………………………………………


 ダブルアップはこの様に表示されるのかと半ば感心しつつ、私は9000億という口座の数字にため息を付いてしまう。ダンジョンツリーの出現により一部の市場がインフレしたが、それでも今回の報酬である600万やダブルアップ3000万は大金である。それ故にこの9000億をあんな手に入れ方をした事を恥ずかしく思うと同時に、達成感すら薄れてしまう。


「まぁ、あぁでもしないと彼奴等は反省も賠償の為にクエスト攻略もしなかっただろうしな。」


 実際に金を動かす事により、染髪ボーイ達は危機感を覚えただろう。恐らく彼奴ら7人+彼等の担任の家を全て差し押さえた事で半分に届くかという程の高額なのだ。攻略者ライセンスの関係で夜逃げもままならない染髪ボーイ達は親に泣きつくか死に物狂いで稼がなければ留年で済まない時を過ごす事となるだろう。


 一応何故そんなハイエナ詐欺をしていたのかと生徒指導らしき男が訪ねると彼等は楽に稼ぎたかったとか、遊ぶ金が欲しかった、新しい武器を買いたかったと話している。武器を毎回メンテナンスすると金が掛かってしまうが、かといってメンテナンスを怠ると命を落とす可能性もあるので報酬は減ってしまう。遊ぶ金も新しい武器も欲しいならばメンテナンスがいらないレベルのクエストをチクチクやるか、武器を消耗しないでハイエナ詐欺をする事で稼ぐかの二択だったとの事。誰かの親兄弟が病気になり治療費を稼ぎたいとかなら同情を狙えたかもしれないが流石に遊ぶ金と新しい武器代の為だと聞けば擁護する事も出来ないしな。


 そんな精神の彼等を動かす為に実際に金を消費するのは良い案なのは分かる。賠償金を払う事=[竜泉]の儲けでは無く、[竜泉]の損失を補填という形になり、責任問題を問われれば即敗北するレベルた。染髪ボーイ達は勝手に賠償金を払われ勝手に返済を義務づけられたなんて内容で訴訟を起こす事は出来るだろう。


 まぁ、訴訟を起こした所で何か出来る訳では無い。研修で聞いた話では受付嬢や他の攻略者によって買い取り希望のアイテムを破壊されたり、言動や行為によって所有者自ら破壊した場合、正当な買取額分をダンジョンツリー運営側が支払う事となっている。後者に関してはアイテムを奪おうとしてもみくちゃになった際に所有者が転倒した勢いで破壊してしまった、私の様に脅迫され付き合うのが面倒になり破壊したというケースが主に当て嵌まる。もっとも、わざと破壊した場合は脅迫やらの要因が認められなければいけないのだけど。


 癖の悪い弁護士ならば要因について指摘する事を思いつくかもしれない。しかし〖鑑定EX〗の使用やら脅迫していた事が認められているので染髪ボーイ達が勝訴する未来は無い。………いや、話がズレすぎているだろうと反省しつつ、私は改めてリザルトを確認する。


 相も変わらずSPはError表示のままであり、報酬にスキルが無かったので簡素だと感じられる。ただ、その分報酬は豪華だと感じられる。ただこれについては叔父と相談して処遇を決めたいと思えた。なんせ幻と呼ばれたアーケード筐体と私達はあまり関心が無い戦隊系のアイテムも手に入ってしまったのだ。


「しかしニンケンレッドって何かと思えば私の知らないシリーズだったなぁ……。」


 ライダーと戦隊物はコラボする事もあるのである程度は知っている。しかし私が誘拐されてから放送されたシリーズらしく知らないのも当然だった。ただ、また忍者系かよ!と恐竜系と同じく突っ込まれたらしい作品らしい。まぁどれもコンセプトは違うのだから良いんじゃ無いかな……と私は自分で使う事が無さそうなそれと、ダブルアップチャンスの景品らしきカタログについても悩みながら着替えて東郷家に帰宅するのだった。



…………染髪ボーイ達の未来の話………………


「クソッ、〖鑑定EX〗消されたせいで時間が掛かるようになっちまったじゃねーか!どーしてくれんだよあの野郎が!」


 どうにか9000億稼ごうとしている染髪ボーイ達は女教師の提案で[竜泉]に9000億の賠償金を遥に支払った事はやり過ぎだと訴訟を起こそうと行動していた。そしてあの日から僅か3日後に弁護士を見つけて訴訟を起こそうとしたが、遥が忘れていった古代竜の鮮血が入っていた壷により、本来ならこの壷代も買い取りとして渡さなければ無かったという事が証明されただけで終わった。


 壷には特殊な金属……ファンタジー小説で言うミスリルやアダマンタイト等の様な伝説の金属で出来ていた事が判明した。単純に漬物石らしく偽装されていたので、飲み残しといえる僅かな血液を調査している際に気付いたらしい。下手をすれば9000億の000が999に置き換わる事を伝えられた染髪ボーイ達は大人しく稼ぐ方が身のためだと実感させられていた。


「億まで稼げる訳ねぇよ。自己破産してぇよぉ……。」


「生命保険すら掛けられてねぇんだから危ない橋は渡れねぇんだよまったくあの女さえ来なけりゃあ……。」


 未だに自分達の運が悪かったという事で通そうとしている染髪ボーイ達だが、これまでに返済した金額は合計6000万程だった。というのも流石に武器のメンテナンス代は無料にする訳にもいかない為、その分を差し引かれた金額が返済できた額となる。そこそこ良い武器を使っている為、1人分のメンテナンス費が100~200万となる事が多い為、討伐報酬でドロップしたアイテムを換金してどうにか生き延びていた。


 仲間を殺したり裏切って逃げたりする事が出来ないように生命保険を掛けられず、生存第一で行動していたからこそここまで生き延びることが出来ている。しかしそれは逆に、彼等が楽になる方法が無いまま狩りをやらされる事を意味していた。


「大型を倒してもメンテナンス費で300万くらいになる時あるからな……。かといって雑魚だと数万しか稼げねぇし……。」


 現実時間よりも長い時間クエスト空間で過ごせる分まだマシだが、不眠不休という訳にもいかず停学扱いで学校と同じ感覚でクエストを受ける。しかし大人数でなければ大型モンスターを倒せない為、誓約の緩いクエストを選ばなければならない。当然ソロで狩るよりも遥かに安い報酬となってしまうが、ドロップでワンチャンあると思い彼等は大型モンスターに挑むのを止めなかった。


 女教師はと言うと放課後、自分が副顧問をしていた吹奏楽部を放棄して雑魚狩り系のクエストを受けているのを目撃されていた事により評判が悪くなっていく。大会のメンバーから外された1年生は自分の楽器を手に入れるという目標を持ちダンジョンツリーに挑む。この為、学校から通えない距離では無いダンジョンツリーに足を運ぶ事が多い為、業務を放棄して金稼ぎをしていると噂される様になってしまう。


 この様な評判の変化に最も困っているのは生徒指導の教師であり、法廷でも証人として呼ばれていた事も合って禿げてきていた。ただ、染髪ボーイ達が生徒指導の髪が一気に後退する理由となる行動を2学期はじめに起こす事を彼は知らないのだった。

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