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第3話 初めてのダンジョン

 攻略者研修の主な目的はダンジョン内での犯罪防止と実力に見合わないクエストの受注禁止、スタンピード発生防止への協力に関しての呼びかけが殆どだった。まぁ、この研修を受けなければ攻略者登録が出来ない為しっかり聞いておく。しかし他の奴等は入学してからすぐに受けているのか私以外の人はいなかった。


 まぁ、命の危険を伴う資格である攻略者に話を聞くだけでなれるので4月の内にさっさと終わらせてしまう者が多いのだろう。せめて小テストくらいはやらせた方が良いのでは無いかと不安に思うのだが、スタンピードと呼ばれる災厄を避ける為には数を増やす事を優先していると自分の中で納得しておく。


「ただ最近は面倒な迷惑行為が増えている。今回説明した『他の者が途中で離脱したクエストをクリアしてはならない』……ハイエナ行為禁止のルールを悪用した物だな。基本的にクエストは途中で離脱できないが、スキル〖逃走〗や逃避玉というアイテムを使う事で外に出ることが出来る。第二次アップデートで隠れて追加された要素だが……厄介な事にハイエナ冤罪を行う輩がいるんだ。」


 苦労して討伐まであと一歩の所まで弱らせたが、やむを得ず離脱した後、何も苦労していない者がクエストを受けて弱ったモンスターを討伐し利益を得るという悪質な行為を防ぐのが本来の在り方だが、モンスターを見ただけとかちょこっとダメージ与えただけでさっさと離脱し、他の者にクエストクリアさせてから因縁を付けるという者が出始めたらしい。


 正直言ってハイエナよりも面倒くさい。事例の中にはクエストモンスターの特徴を事前に教えたとか、毒等のスリップダメージ的な物を与えた等のグレーゾーンな事例もあった。だが面倒なのはグレーゾーンな物は全体の2%にすら満たない。例えるなら高級肉をレジへ持って行くと「俺達が狙ってたのに!」と金も払わず高級肉を懐に入れようとする奴等が多く、中にはレジ前でずっと待機してそれを行う者もいるという事だ。


「あのルールは正確には貢献度が低い奴が多額の報酬を得るのを防止する為のルールだからな……。1%にも満たない貢献度なのに因縁を付けてくる奴等には気をつけろよ。受付がグルでさえ無ければ楽に無実を証明できるけどな。」


「どういう事だ?」


「簡単な事だ。ライセンスにはクエスト履歴が追加される。受付嬢に頼めば履歴からクエスト貢献度を確認できる。パーティ1人1人の貢献度も分かるから取り分で争う事も無いぞ。」


 研修を行っていた教師はそう言った後、私の攻略者ライセンスと通帳を渡してきた。ただ、私の保証人が東郷財団会長の為、確認の連絡を取る時間で長引き、発行に時間が掛かってしまったらしい。しかし叔父に隠れて攻略者をするつもりは無いし、攻略者になる事も事前に言ってあるので問題は起こらないだろう。


「通帳は特定の銀行でしか引き出せない事もあるから注意しろよ。……それと本当ならここで攻略者としての戦闘訓練も行っておきたかったが……。」


「まだ武器は決まってませんし必要ない。死んだら死んだときと諦めますよ。」


「いや、保証人が東郷財団の会長の時点で死なせたくないんだが。取り敢えず研修特典として逃避玉を1つ渡しておく。戦闘できないと思ったらすぐに使えよ?それと、自信が無かったらダンジョンギルドにある訓練施設を利用しておく事も重要だぞ!」

 

 まぁ、戦闘が出来なかったら訓練を受けようと思いつつ私は近場にあるダンジョンツリーについて聞いてみる。今日の登校は無理矢理リムジンで連れて行かれたが帰りは徒歩でも問題ないと伝えている。最悪タクシーで帰ってきても良いとも言われた事も伝えると、教師は[竜泉]というダンジョンツリーを紹介してきた。[竜泉]は東郷家と学園の間にある為、多少は遅くなっても問題なく帰宅できるだろう。


 学園から十分程の場所にある[竜泉]というダンジョンへと向かう前にジャージに着替えておく。登校する際は制服でという規定はあるが、下校する際は制服を学校に置いていかない限り何を着て帰っても良いらしいのでジャージ下校が認められている。これは実にありがたいと思いながら私は下校し始めるのだった。


 基本的にダンジョンツリーがある場所は分かりやすい看板がある為迷う事は無い。しかし喫茶店やファミレス等が並んでいるエリアを通り抜けなければならない為、武器を持ってダンジョンツリーへと向かうのは向いていない。恐らくダンジョンツリーが後から出来たのだろうと思いながら私は[竜泉]に到着する。


「ようこそ、[竜泉]のダンジョンツリーへ。」


 受付の1人がそう言った後、私の身なりを確認する。一応は金持ちが通う学園として認知されている学園のジャージの為、丁重に扱おうとしているのか、将又世間知らずと予想して吹っ掛けてくるか……そんな事を思っていると普通に説明が始まっていた。


「ここ[竜泉]のダンジョンツリーでは飲み物や携帯食料などを売っている自動販売機や武器・防具を取り扱っているスペースもあります。ただ、ここに設置されている迷宮口座対応型ATMで1度に引き出せる金額は100万円までなのでご注意ください。」


 ダンジョンツリーは色々とすぐに対応できる様に施設を充実させる事が多いとは聞いていたが、実際に中に入るとそれを実感できてしまう。ただ、ロッカー以外に利用する施設は無い事から私は鍵を貰ってから鞄と制服をロッカーの中に詰めこんでおく。武器屋や防具屋にいる職員がこちらに必死に呼びかけていたが、特に気にせずダンジョンツリー本体のある場所まで向かう。


 訓練場も気になったのだが、見るからに厄介そうな染髪ボーイ達が陣取っている為、無視して地下にあるダンジョンツリー本体の下へ向かう。染髪ボーイ達が地下に繋がる階段を見ては色々と雑談している為、柄の悪い攻略者もいる物だと呆れるのだった。


 途中何人かの攻略者とすれ違うが、お互い詮索はしないのがルールだと言われていた為、会釈だけして進んでいく。中には私と同じジャージを着ている者もおり、学園に通う者達からは人気なのダンジョンツリーなのか?と思えた。


「……さてと、この[竜泉]というダンジョンツリーはそれなり規模がデカいんだな……。」


 地下に降りた私の第一声はそれだった。[竜泉]という文字と大量の魔方陣の塊で構成された1本の木に見えるダンジョンツリーは、枝部分を何十本も携えていた。ただ、すれ違った攻略者と比べると人数は少ない。今日は平日だからなのだろうか?と思いつつ私は攻略者ライセンスを使いダンジョンツリーから葉となる魔方陣を特に吟味する事無く1つすくい取った。原理は分からないがカード型のライセンスで魔方陣をくい取ると1枚の紙に変化するのである。


〔討伐依頼 Lv.85〕

フィールド:[竜泉]の古城

クエスト内容:古代竜ガメライオスの討伐

クエスト報酬:古代竜素材 Sランク

賞金:5000万円

スキルポイント:〖収納EX〗

       :SP+100

個別誓約:2名以内(制限時間5分+盲目付与)

貢献度:0%(挑戦者0名)


 個別誓約はクエスト毎に指定されたルールであり、この場合は2人以上なら通常通りにクエストが受けられる。しかし誓約の人数を超えた3人以上で入ろうとすると()内のペナルティーが課せられるのである。(挑戦不可)というペナルティーも勿論存在する為、普通ならば条件を満たさずに入る者は少ない。


 [竜泉]には無いみたいだが共通誓約というダンジョンツリーの全てのクエストに条件が課せられている事もある。[花園]という女性限定のダンジョンツリーとや末子]という兄弟の末っ子しか入れないという特殊なダンジョンツリーもあると研修で聞いた覚えがある。まぁ、今回は何も気にせず入れば良いのだろう。


 そう思いながら私は魔方陣を起動するためのスペースへと移動する。万が一スタンピードが起こった際にモンスターが溢れないよう広めにスペースがある。そこに立ち魔方陣を起動させると白い光に包まれる感触があるので目を瞑った。


「………さてと、初のモンスターは何だろうな……?」


 私がそう言いながら目を開けると、私の体は古びた城の上に立っていた。ただ、某狩りゲーの様に城の上という印象を残したまま広いスペースが取られている。そんな些細な事に感動していると、目の前にいた竜が咆哮しこちらを威嚇してくる。どうやら、初めて闘うモンスターはこちらの都合は考えてくれないらしい。


 こうして、私の最初のクエストが幕を開ける。ただ今の私にはこれから面倒事が待っている事を予想していなかった為、戦闘に集中できたのであった。

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