助かった...
「ア...グッ...何が起きた...?」
マクリアルは、痛みを堪えつつ、状況を把握しようと目を開ける。
そこには、まさに〝鬼〟の顔をしている、スハルトがいた。
「キサマ...家の娘に何をしている!!」
スハルトの怒鳴り声が、洞窟に響き渡る。
そこからは、一方的な勝負...いや、暴力だった。
マクリアルは、必死に逃げようとしているが、1歩も歩くことすら許され無い。いくら血を流し、泣き叫び、命乞いをしていても、もう、スハルトには届かない。
「スハルト!もう!やめて!!!」
ナタリキュアは、見るに耐えなくなり叫ぶ。
その声を聞いたスハルトは数秒硬直し、声のした方へ振り向く。
「ナ...ナタリキュア...。」
どうやら、二人は顔見知りなのだろう。
スハルトは剣を落とし、目の前の、全く原型をとどめていないマクリアルに気が付き、それをした、自分の血なまぐさい手を眺め後悔した。深く深く後悔をした。
「......ん...。」
そして、カレンがここで目を覚ましてしまう。
「お...お父さん...?」
目の前の悲惨な光景に、一瞬カレンは、頭を抱えよろめく。
「カレン...俺は...俺...は...。」
カレンに見られてしまったスハルトは膝から崩れ落ち、見られたショックと自分が無抵抗の相手を嬲り殺してしまったという目の前の光景を見て倒れてしまう。
「お父さん!」
目の前で意識を失ったスハルトをカレンが抱き寄せる。
その姿を、ただ、眺めることしか出来ないナタリキュアは、悔しさが溢れ出る。
―――――――
〜翌朝〜
無事に全員帰ることが出来た、誘拐されていた少女は、その後騎士様達が家に送り届けたそうだ。そしてお屋敷には、カレンと、ついでにお邪魔している、ナタリキュア。
それと、昨日から自室に閉じこもっているスハルト。
昨晩の出来事は衝撃的だったが、前世でグロテスクな所なんてよく見てたし、されていたので、少したったら落ち着いた。
今朝から、ナタリキュアがスハルトをドア越しに慰めに行っているが、全く返事がなく、食事すらも取っていない。
このままは嫌だが、カレンは喋る事が苦手なんてレベルでは無いので、行っても逆によりいっそ思い出させてしまうかもしれないと思うと、どうしようも出来ない。
「どうしよう...。」
カレンが呟いた。
その時、外の方からカタカタと馬車の音が近付いて来た。
「カレンー!!」
この、暖かく、透き通った声で、手を振りながら1秒でも早くこちらに向かってくるのは...!
「お母さん!!」
たった数日会ってないだけで、懐かしさと嬉しさが込み上げてくる。
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