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ファンケルの復活 ~ロンギヌス対ファンケルの血に塗れたゲームの物語~

作者: 領汰

 設定は世界観を描写するためのものなので、薄っぺらいものなのです、ハイ。

 今の世界の王は誰か、と聞かれたならば、星によって様々な返答が返ってくることは当然だ。例を挙げるならば、ジールス星の王はフハイマ家で、ウイッグ星域の王はルー・イマだ。グローバル化が進んだとはいえ、一般人の視野は狭いのだ。

 だが様々な返答に分かれることは、最終宇宙大戦争の時に生きていた人々からすると異常なのである。

 彼は、あのヴァンパイヤは死んだのか?

 ボロボロの宇宙艦が縦横無尽に動き回り、当てることがほぼ不可能とまで言わしめたミサイルが対峙する艦艇に次々と命中する。その宇宙艦を操る死をも撃つ不死のヴァンパイヤ。

 ヤムーライ星の、不死のヴァンパイヤことファンケルは母星こそ守りきれなかったものの、戦後の平和推進連盟ビッケルに初代として名を轟かせた当時の世界の王であった。

 今は隠居と称して死を隠しているそうだが。

「死んだんなら名を使われないようにしろよ、馬鹿野郎」

 ウィップ星から派遣された無所属の殺し屋ローンは、ファンケルの住まう館に訪れた。無論ファンケルを殺すために。


 ローンがファンケルの館を訪れる約一年前、世界のネットワークに真偽を疑う映像が上げられた。タイトルは『ファンケルの大予想』、ファンケルのホログラムと完全に一致したファンケルと思わしき人物が大戦争を予言するという、不吉な短い動画だ。その動画だけで、歴史でファンケルのことを知っている人々は恐怖に震え上がった。

 そして問題は、動画内での彼の顔が、隠居直前の時よりも若々しい点だ。当時の技術ではホログラムを記録することは不可能だ。只の贋物、ビッケル連盟はそう発表し、世界の混乱を鎮めた。

 だがビッケル連盟に属するウィップ星代表ノルブルは、ファンケル本人に連絡もせずに発表したことを知った。そして募りに募らせてきたビッケル連盟への不信感から、ウィップ星のビッケル連盟脱退を独断で行ったのだ。ウィップ星は歴史的に短気な星なのだ。

 後先考えずに独立してしまったウィップ星は貿易に制限が掛けられてしまい、衰退の一路を進もうとしていた。

 たった一年で衰退するような星に未来なんてなさそうなものだが、そこはウィップ星だから仕方ない。

 それを憂いたウィップ星統一議会副長リランダは、その時のビッケル連盟の発表が間違いであることを示せば、ウィップ星の正当性が証明出来るのではと考えた。

 その証明方法が遺体の公開とは何処か狂っているように思えるが、今の世界何処もそんなものだ。


 ローンは開業三十年のそこそこ腕の立つ殺し屋だ。三十年間殺しつづけ、殺しだけで生計を立てられるだけの能力を持っているだけの、探せば見つかる平凡な殺し屋だ。そのローンはこの仕事が当たりだと判断した。ローンはウィップ星のビッケル連盟不信が理解出来ないほどビッケルを信頼している、平和を愛する殺し屋だからだ。

 ファンケルが生きている訳が無い、死人を殺すことなど誰に出来ようか。

 だが請けた仕事は完璧に、文句の付けようが無いほど証拠を残さずに殺しを完遂するのがローンのモットーだ。報酬を下げられないように、ローンは気を張っているのだ。

「本当に居たら遺体を送ってやるよ。だけどまあ、いねえだろ。今回の仕事は長期間かかるだろうな」

 ファンケルこと動画の投稿主、それを特定して殺し、ウィップ星に送り付ける。ローンはそれこそが今回の仕事だと理解していた。手間が掛かるがそれでも割に合う。

 成功報酬は前金の一万倍、五百億ウィーズだからだ。

「五百億ウィーズ。く〜、想像しただけで笑みが零れるぜ」

 だがローンにはギャンブル好きというたちの悪い性格を持っている。きっと五百億ウィーズ丸々手にしても、次の日には素寒貧になっているだろう。下手うてば奴隷落ちも有り得るだろう。

 ファンケル邸の塀を軽々と飛び越え、着地の衝撃も静かに殺す。神経質に辺りを見渡し、深々と息を吐く。

「お化け屋敷覚悟で来たつもりが、これは何だ?」

 古風過ぎて逆に新鮮な屋敷。遥か昔に資源を取り尽くして人が去ったと言われる地球《アース星》とその周辺星。全星の母星と呼ばれるそのアース星の歴史でも、かなり古い時期に流行ったデザインの屋敷がそこにあった。

「明かりが付いてやがる。まさかとは思うが…」

 家を間違えたか、或いは元ファンケルの邸宅であって今は別の主人が住んでいるのだ。そうローンは思った。

「…天下のビッケル連盟様に間違えはないだろうがしかし、確認はしとくべきだよな」

 ローンお得意の殺し方、寝首を掻く。今回もそれを行うのだろう。

 もしファンケルが生きていれば、の話だが。


 そう、生きていれば殺すのだ。

「何であんた、実際に生きてんだ?」

 頭に刷り込んだホログラムの人物、ファンケル。ローンは無事ファンケルの寝室に忍び込み、顔を拝みに来た。その時までローンの仕事は完全無欠だったが、ファンケルの顔をした何かが息をしているのを目の当たりにしてしまい、気配が漏れてしまった。僅かにだが。又、重要な場面で呟いてしまった。

「!っ!!」

 その僅かな気配と呟きで目を醒ましたファンケルに、ローンは一撃必殺とばかりに喉目掛けて攻撃した。

 流石は中堅の殺し屋というべきか、ファンケルは声を上げることさえ許されずに息を引き取る。

「やったか、あぶねえ」

 気を抜いた途端背後でいきなりテレビが付いた。

『これを見ているということは、私が何者かに殺されたということだろう』

「うお、何者だ。びっくりしただろうが」

『だが私はその者を恨みはしない。寧ろ私の全てを明け渡そう』

「お前ファンケルかよ。いや、しかし…それだと天下のビッケル連盟が嘘つきってことにならねえか?」

『だが私の全財産を譲る代わりに、一つゲームをしようじゃ無いか。次は君がこの屋敷を守り、私が君を殺しに行こう』

 テレビの一言一言に思い悩むローン、そのローンにテレビの中のファンケルは口角を上げて宣告する。

『不死のヴァンパイヤと言われた私は、不死ではなくとも不滅だ。このゲームの二度目の挑戦者は君だ、』

「二度目?」

『ロンギヌス君』

「いや、誰だよロンギヌス!」

 その血に塗れたファンケル邸で今宵、ローンは全てを手に入れた。

 だが彼は、それより三日後に素寒貧になったと言う。馬鹿とギャンブル好きは治らないとは、上手く言ったものだ。


 そして場面は変わり元々ヤムーライ星があった星域へ。そこにある小さな宇宙艦では、推定5歳の子供がデバイスを睨み付けていた。

 実はその子供、ファンケルのクローンなのだ。ファンケルが不滅である所以、それはファンケル本人の記憶を挿入したクローンが常に世界のどこかで保管されていることにある。

「そうか、先代は殺されたのか…」

 2018代目のファンケルは呟いた。

「…でも何で我が邸宅がオークションで売られているのかな?」

 ゲームに不戦敗した今代のファンケルは、途方にくれたのであった。

「ロンギヌス、お前の勝ちだよチキショウ!」

 …というか、ロンギヌスとは一体誰のことなのだろうか。

 この小説は一日で書かれたものである。それが意味するところ、それすなわち設定は厚みの無い薄っぺらいものだということだ!!

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[良い点] ウィップ星と殺し屋ローンは面白い [気になる点] ロンギヌス君より『大予想』の投稿者の方が気になる [一言] 面白かったです
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