第6話 授業中に考えた事
実体験を元に書いています。
授業が始まった。まずは理科の時間。
「このクラスでは特別に人間の性別がどのように決まるのか説明しておいて欲しいと言われているので、その話をします」
理科の生物分野の担当教師が、そう前置きして話を始めた。
「人間の胎児は、最初、女の子になる元々の器官と男の子になる元々の器官を持っている。それがホルモンの働きで片方が発育して片方の発育が抑制されるようになる。その時に何かの理由で両方とも発育すると医学的には男性とも女性とも言える身体になる。しかし、両方とも機能するようになるとは限らない。機能する場合もあるし機能しない場合もある」と説明する。
僕の場合だね。
その後の授業は体育だった。
男子のみんなが「お前は良いな。女子と一緒に着替えられて。見放題だろ。代わりたいぐらいだよ」と言いながら着替えのために廊下に出て行く。
「代わっても良いよ。でも、普段は女子の制服を着て、体育の時は女子と同じ体操服を着ないといけないし、下着も女の子用を着ないといけないよ」と言ってやると、なぜか顔を赤くして「いや良いよ。止めとく」と言う。
僕本気で言ってるのに。
「ブラジャーとか着ても良いよ」と言うと「お前ブラジャーも着けてるの?」と言う。「うん。着けてるよ」と言うと、周りの女子に口を押さえられた。
「あなたね。もう女の子なんだから慎みを持ちなさい」と言われた。
「慎みってなぁに」と言うと、「男子とブラの話題なんかしないような事よ」
「男子とブラの話題しちゃいけないの?なぜ?」と言うと。
周りの女子数人が「あなたにみんなで女の子の躾をしてあげる」と言ってきた。
「女の子の躾って何?」と言っていると、周りの女子が「その話は後でね。男子は早く出て行って、着替えられないでしょ」と言ってきた。
その後で「男子と下着の話題とかしちゃ駄目。生理用品の話題も厳禁よ」と言われてしまった。
まぁ、男子が生理用品の話題に興味があるとは思えないが。だって使わないもん。
体操の服装でグランドに出た。
身体の線が出過ぎるから恥ずかしい。
女子が股を見てくる。
「本当についてるの?」
「ついてるよ。小さいけど」そう答えると、聞いてきた女子が赤面する。
「ふーん。小さいんだ」と言ってきた女子もいる。
「それで男の子だよと言っていたら気持ち悪いから無理矢理女子の制服を着せたかも」
怖いことを言う女子だなぁ。まぁ、僕は学校や親から無理矢理女装させられたようなもんだけど。
とりあえず体育の授業だけど。
ダンスだった。
よりによって男の子だった時にはやった事のない内容だ。
みんなはやった事があるけれど。僕は全くの初心者だ。
カラオケとかで踊った事はあるけれど、体育の授業のダンスは違うらしい。
さんざんな目に遭った。
あまり思い出したくないもん。
ふーんだ。
そして昼休み。
お弁当の時間。
みんなでおしゃべりしながらお弁当を食べる。
おしゃべりが楽しいのは、やっぱり僕が女の子だからなのかな。
テレビとかファッションの話ではついて行けるけれど、男の子の話は分からない。ファッションの話について行けるのは、母親が僕が小さい時から何気なく女の子の服を着せていたからなんだろう。
何気なく思い出したら、何であんなにスカートも履かせられたのかな。
スカートを履いて幼なじみの女の子と遊んでいた記憶がやたらにある。
幼い頃の記憶にはブラウスと吊りスカートを着て女の子と遊んでいた記憶が多い。
幼児期はほとんど女の子になってたのかな。
まぁ、体内に卵巣も子宮も膣もしっかりあるんだから、スカート履いても何も悪い事は無い気もするけど。
だからかな、今スカートを履いていても、ずっと男の子で育ってきてスカートを履いた事も無い人ほど恥ずかしくないような気がする。
女の子と話していても、「異性」と話しているような気はしない。
むしろ、男の子よりも「同性」の気がする。
身体の中に「女の子」がいるような気がする。
まぁ実際に女の子がいるようなもんだが。
そう考えると、今女子の制服を着ているのは自分に素直になって自然な姿では無いのかな。
女子の制服を着て女子に囲まれているのは自分の本来いるべき場所にいるような気がする。
そうこうしているうちに昼休みも終わって午後の授業が始まった。
そして放課後、友達と駅に行く途中の店でハンバーグを食べていると「そんなのばっかり食べていると太るわよ」と言われてしまった。
男の子の感覚で食べてしまうのかな。
女の子の服は男の子の服よりも余裕が無くて身体に密着するから太ると着られなくなってしまう。気をつけないと。
読んで下さってありがとうございます。