第39話 野望
実話を元にしています。
従兄弟の彼女は「珍しい人と知り合いになれて良かったわ」と言った。
珍獣じゃありません~。
「でも、珍しいわ」
繰り返さなくて良いです-。
「スカート履いて学校に通っているの?」
「女子の制服はスカートですから」
「それもそうね。でも恥ずかしくなかった?」
「最初は。でも慣れました」
「慣れるものかな」
「毎日履いて来いと言われたら、慣れるしか無いです」
「従順なんだ」
「逆らうのは無意味です」
何とか納得したらしい。
「でさ、彼女が卒論でセクシャルマイノリティについて書きたいらしいんで協力して欲しいんだ」
嫌ですー。
表情に出たのかな。
「何とかお願い出来ないかな」
「何をして欲しいのかな」
「どんな気持ちなのかとか聞きたいな」
「見世物は嫌です~」
「女の子の服を着るのはどんな気持ちなのかな」
「恥ずかしいです。以上」
「頑なだなぁ」
「みんなに僕は女の子の服を着ていても男性器がありますなんて言いたくないです」
「あ、それは大丈夫。匿名にするから」
「秘密厳守ですよ」
渋々納得させられた。
「それで、男性器のサイズは?」
「ストレートですね」
「ごめんね」
「1センチ以下です」
「ふーん。そうなんだ」
以下色々と聞かれた。
「何の卒論なんですか?」
「性分化疾患についての論文よ」
「医学部なんですか?」
「そうね」
そんな頭の良い人が、どうして決して頭の良くない従兄弟に?
「僕に近づくために従兄弟に近づいたの?」
「そうよ。あなたと友達になりたいわ」
うーん。みもふたもない。
「性分化疾患について調べてどうするの?」
「これからの分野だから、専門家になりたいな」
「専門家になってどうするの?」
「その分野の権威になるの」
うーん。野望家だ。
従兄弟は捨てられるな。まぁ良いか。
「しかし、結構、専門家はいますよ」
「まだまだ少ないわね」
「僕の診察をした医師は校医ですよ」
「たまたま詳しかっただけでは?」
「詳しい医師は多いですよ」
なかなか食い下がって来る。
「権威は無理でも、それなりの立場は築けるかと」
「私は権威になりたいの」
「どうして?」
「権威になれば、他の人に従わなくて良いわ」
こりゃ駄目だ。
読んでくださってありがとうございます。