第37話 周りの反応
実話を元にしています。
敏子はスカートを履く事で女の子になった自分を満喫していた。しかし、そういった事に反発する保護者も少なからずいた。「女装が広がると、あの学校は変態の巣だと言われる」というようなものだが、「女装を禁止しろ。女装している者は辞めさせろ」という様なものだった。
「お前は女装したいなら、水商売に行け」という様なものもあった。別に水商売したいならすればいいが、他人に命じられるものではない。職業選択の自由は誰にでもある。敏子は医師になりたいと考えていた。女装というものでも無い。実際に女性器を持っているのだから、普通に女の人の服を着ていても当然だろう。
しかし、そういった事が許せないと考えて自分の考えを押し付けてくる人達がいる。半陰陽の人を見下して、自分は正義だとばかりにまくし立てて来る。
スカートの下には女性用のパンツを履いているが、それを指して「変態」とあげつらって来る。何で絡んでこないといけないのか理解出来ない。
生理もある人がスカートを履いて何が悪いのか?
学校の外では企業などでも研修をして半陰陽の人に失礼があってはならないと教育している。そういう研修を受ける機会の無い人が、特に激しく攻撃して来る。
「こんな半陰陽の人などがいては日本の恥だから殺してしまえ」と言う人もいた。
セクシャルマイノリティという言葉があるが、マイノリティはマイノリティであるだけで生きる資格が無いとまで言いたいらしい。
少数者を認めず、殺して良いとさえ言う人達の方が日本の恥だとは考えないらしい。
全くの赤の他人からいきなり「死ね」と言われる人の気持ちは考えられないらしい。
そんな事はお構い無しに敏子は一女子生徒として生活していた。時々、他の生徒からから「ちゃんと男子生徒として男子の制服を着て来い」と言われても無視していた。それに対して、ついに敏子に殴り掛かる者が現れた。「お前のせいでみんなが迷惑しているんだよ」と言って殴り掛かった。敏子は無視して殴られるままにしていて、通報されて教員が来て殴っていた生徒を取り押さえた。当然一方的に殴っていたのだから男子生徒は退学を申し渡された。しかし、保護者は退学になるのはスカートを履いて通学していた敏子の方だと騒いだ。当然相手にされなかったが。
そして、その頃から敏子に対する攻撃はおさまって来た。人権差別をしている側が不利なのは分かり切っている事。
学校としても、人権差別事件起こした生徒を容認は出来ない。
敏子は僕たちと一緒に生活してやっと平穏無事になって来た。
校医の子供という事も大きかった様だ。
女性器の痕跡と小さな男性器という事から女性として扱われる事が多い事もあり女性として扱われる事も普通の事であり、あくまで男性として扱われるべきだという勢力はしぼんで行った。
「やっと変な奴らから解放されたね」僕達は敏子に言った。
虐める相手を探している人からすれば男なのに女子の制服を着ている人というのは虐めて良い対象に見えるらしい。
敏子は妊娠出来ない女子としてクラスの中に居場所を確保していった。兄弟がいるから跡継ぎ問題は心配しなくて良い。
どうもセクシャルマイノリティとして周りに認められても、実は精神異常なのでは無いかとか見られない事もある。なかなか理解していない人の方が多いというのは厄介な問題だ。僕は敏子のお母さんから女の子の世界に押し込められて良かったのかも知れない。いしが「この子は女の子ですよ」と言ってくれると周りも反論しにくい。
敏子が体育の時間に着替える男子と一緒に出て行こうとすると、周りの何人かの女子から手を引っ張られて教室の中に留まらせられた。敏子が戸惑っていると「あなたはもう女の子なんだからここで着替えるの。分かった?」と言われた。「女の子は男性の前で下着姿になっちゃいけないの」とも言われた。
僕が「恥ずかしいなら僕と一緒に着替えよう」と言うと、敏子は「うん」と言って承知した。
周りの女子が笑いながら「あなたも今日から女の子なのよ」と言って「この台詞を一度言ってみたかった」と爆笑すると、敏子は真っ赤になった。
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