第32話 僕の心
実体験を元にしています。
「彩ちゃん。何調べてるの?」
「うんとね。女性ホルモンの薬」
「我慢出来なくなったの?」
「将来飲むと思うから調べておいても損は無いかなと」
「何か見つかった?」
「プレマリンとかパッチとか」
「ふーん。血止めとか避妊薬かな」
「そうなの?」
「女性ホルモン摂取目的の薬は少ないらしいよ」
「だからお医者さんに相談しながら飲むのか」
「僕も、最近知り合った自助団体の人から聞いただけだけどね」
彩と僕が朝からこそこそ話していたら、近くの女子から「え、避妊薬!何に使うの?」と言われた。
「エッチな事じゃないよ」
彩がむきになって否定している。
「あやし~い」
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
「彩が将来飲もうと思っている女性ホルモンの薬の事だよ」
「な~んだ」
BL好きな華代が残念そう。
「由紀子は女性ホルモンなんて飲まなくて良いよね。過剰に出ているから。分けてあげたら?」
「そんなの無理っ」
あはははははははははははははははははははははははは
彩やゆきと男の子の恋愛の妄想に没頭している華代も最近覚えた。
華代は薄い本も作っているらしい。
でも、彩と僕を掛け合わせるのは止めて欲しい。僕は女の子なんだからねっ。
あれ、彩と僕ならGLかな。
陽子が「彩ちゃんは将来どんな仕事するの?」と聞いてきた。
彩が「決めてない」と答える。
彩が僕を見て「幸せな結婚をして子供に恵まれたい」と言う。
何で僕を見る、僕を。
僕は子供作りたいなんて思ってないからねっ。
俊子が「由紀子は性同一性障害なのかな?」と言う。
「何で?」
「だって身体は女になっても、心は女にならないんでしょ」
「うぐっ。か、考えた事も無かった」
でも、僕が女の子の様に恋に夢中になって男の子との結婚を夢見るなんて考えられない。女の子になっても、心まで女の子になるとは限らないらしいし。
よく小説や漫画では女の子になったら心も女の子になる様に書かれるけれどね。
現実は、そう単純じゃないのさっ。
女の子の着る服が好きになるとか、そう単純じゃ無いのさ。
自助団体の人がそう言ってた。
女の子の様に男の子と結婚したいと望む様になるのは、心が元々女の子だったかららしい。
だから僕が男の子と結婚したいと思わなくってもいいのさっ。
彩が「そうなの?男の子と結婚したいと思わないの?」と言って来る。
「だったら僕にちょうだい?」
「それは無理」
「どうして?」
「うーん。泣かないでね。彩の骨盤の穴は赤ちゃんが通り抜けられるほど大きくないの」
僕の骨なら抜けられるけどね。これは言わない。
彩の目に涙が浮かぶ。
まずい。泣かれる。
ああああああああああああああああああーん
「由紀子ちゃんがいじめた~~~~~」
いじめてません。
「あー。由紀子ちゃんが彩ちゃんいじめてる」
だからいじめてないって。
みんなが僕の方を見ながら彩ちゃんを慰めてる。
僕悪くないのに。
ぐすっ。
僕も泣いてやる。
うわああああああああああ~~ん。
「あああ由紀子ちゃん。ごめん」
何か止まらなくなった。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーん
いつの間にか女の子になって悲しい気持ちが溜まってたのかな。
ああああああああああああああああああん
何で悲しいのかな。
望んで女の子になったわけじゃ無いからかな。
僕が大泣きしてたら、彩ちゃんが驚いて泣き止んでる。
彩が「ごめん。由紀子ちゃんの悲しい気持ち分かってなかった」と言って来る。
しばらく泣き止められなかった。
読んでくださってありがとうございます。