第17話 カミングアウト
実話を元にしています。
「僕、君の制服もらえて嬉しかった」
「どうして?」
「君は男の子から女の子になった。しかも堂々と女の子として男の子の時に通っていた学校に通学している。僕の憧れなんだ」
「それはどうもありがとう。でも何も悪い事した訳でも無いから、転校とか考えなかったよ」
「結構恥ずかしがって転校する人は多いみたいだから。君が女の子になると聞いた時には転校すると思っていたんだよ」
制服をプレゼントした子が、是非家に来て欲しいと言うから行ってみたらそういう事を言われた。
「それで制服が欲しかったのは、思い出にしたかったからなんだ」
「それは違うよ。僕は自分が着られる女子の制服が欲しかったんだ」
「どうして?」
僕は聞いてみた。
「僕はジェンダーが女の子だから、女の子の制服を着たかった。でも採寸とかしてもらうのが怖かった。それなのに君は女子の制服を買うのも着て来るのも堂々としていた。スゴいと思ったし尊敬した」
「着たかったわけじゃ無いけどね。でも僕は女の子だから」
「僕も女の子だよ。でも我慢してた。辛かった」
「明日から着てきたら?」
「怖いよ。どう言われるか」
「僕も全然怖くなかったわけじゃ無いよ」
「そうなの?」
「先生に連絡して事情を話しておいて、着て来れば良い。少なくとも女子は受け入れてくれると思うよ」
学校には保護者から連絡してもらって、話がついたらしい。
翌日、あの子は女子の制服を着て来た。
そして僕と一緒に教室に入って僕と話していた。
「いつの間に友達になったの?」
周りの女子が話しかけてきた。
あの子は固まってる。
「この子、心は女の子なんだって。僕も身体の一部は男の子だから、なんだか友達になっちゃった」
「へー。だから女子の制服着て来たんだ」
「学校は知ってるの?」
「うん。許可もらったって」
「だったら君も女の子なんだ。これからよろしくね」
手を差し出して来た。
「うん…。よろしくお願いします」
「みんな~。この子も女の子なんだって」
遠巻きにして様子を伺ってた女子が寄って来た。
「ありがとう。今日からよろしくね」
本当に嬉しそうだ。
「帰りはみんなで帰ろうね」
あの子も女子の輪の中に入れたみたい。
「あー。僕も女子の制服着て来たら女の子になれるのかな?」
周りの男子の一人が声を掛けてくる。
「着て来れるの?」
「無理かな?」
「下着も女の子のものを着るのよ」
顔が赤くなる。
「無理だな」
男子が一斉に笑う。
ぎゃははははははははははははは。
先生が入って来る。
「何騒いでるんだ。SHRを始めるぞ」
「みんな知っている様だが、この子も女子生徒として通学する事になった。よろしく頼む」
「『カミングアウト』がカミングアウトのきっかけになったわね」
みんなが微笑んでいた。このクラスは良いクラスだ。
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