第10話 ある日の日常
実話を元にしています。
「起きなさい。遅刻するわよ」
「うにゃ。もう朝なの」
「そう。朝よ」
パジャマのまま風呂場に行く。
シャワーを浴びてパンツを履き替える。
ブラジャーを着ける。
右の指でブラの引っかけられる方を触りながら引っ張る。
左の指でブラの引っかける方を触って位置を合わせて引っかける。
毎朝の日課。
カップにお肉を入れる。
「うん。ちゃんと入った」
ブラウスを着る。左側にボタンがあって戸惑う事もあったが慣れた。
スカートを履く。腰骨の上から可愛く見える位置に上げてブラウスの裾を少したわませて入れる。
上から上着を着る。
短い髪を整える。
「うん。女の子だ」
満足して、鏡を見る。
「早く朝ご飯食べなさい」
お母さんが呼んでる。
朝ご飯を食べる。和食だ。
荷物を持ってローファーを履いて出かける。
朝の冷たい空気の中を駅に向かう。
改札でICカードを当てる。
ホームに出ると顔なじみの子がいた。
「おはよう」
「あ、おはよう」
レールバスのジーゼルエンジンの音が聞こえる。
田んぼの中のレールの上をレールバスが近づいてくる。
止まってドアが開く。
乗って、車内の自販機でコーヒーを買う。
もう日課だ。
スカートは素足に風が当たって寒い。
ストッキングやタイツは禁止だ。
先生は絶対に生足好きだと思う。
レールバスは木陰や古いコンクレート橋を通る。
このコンクリート橋は鉄筋じゃ無くて竹が使ってあるそうだ。
学校の前の駅に着く。
おしゃべりしていたらあっという間だ。
駅は昔支線が出ていた名残で構内が広い。
学校まで3分も歩いたら着く。
学校の横には校内にめり込む様に神社がある。
このあたりを開いたという神様が祭られているが社務所は無い。
もう慣れた靴入れから上履きを出して履く。
「おはよう」
教室に入る。
「おはよう。今日のブラの色は何色だ」
顔なじみの男子が聞いてくる。
「それ、セクハラ」
近くにいた女子に言われる。
「いいじゃん。こいつはこの前まで男子だったから聞きやすいんだよ」
「ピンクだよん」
言った男子が赤面する。
赤面するくらいなら聞くなよ。
「あんたも正直に答えなくて良いの」
注意されちゃった。
少し暑いからネクタイを緩める。
ついでにスカートを持ち上げてばさばさする。
「こらっ、そういうことは男子の前でしないの」
いちいちうるさいなぁ。
スカートのポケットからハンカチを出して汗を拭く。
「へー。スカートにポケットがあるんだ」
「うん。あるよ」
スカートにポケットが無ければどこに入れとくんだ。
ブラウスの胸ポケットには入れられないぞ。
先生が入ってきた。
「さぁ。ショートホームルームを始めるぞ」
「はいはい」
みんな席に着く。
「今日は、文化祭関係の連絡がある」
SHRが終わって授業があった。
昼休みにトイレに行った。
「なに、あなた女装して、女子トイレに入りたいの?」
いきなり腕を掴まれた。
「私女です」
「あなたの事は聞いているのよ」
その先生はしつこく絡んでくる。
「先生、その子は女子です。その制服も学校から言われて着ているんです」
「黙りなさい。この子は最近まで男子だったのに、医者と示し合わせて女だと言っているのよ。私は認めません」
ほかの先生が騒ぎを聞きつけてやって来て、僕を解放してくれた。
何人かの先生がやって来て、その女性の先生を連れて行った。
「ごめんな。あの先生は君が女子だというのを認めたくないらしいんだ」
「良いですよ。気にしていません」
そう言うとトイレに入った。
教室に戻ると
「大変だったわね」
みんなに囲まれた。
読んでくださってありがとうございます。