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序章


「ずっと前から好きでした! 私と付き合ってください!」


 唐突だが、私こと黒咲くろさき都子みやこは、以前からずっと憧れていた先輩を学校近くの公園へと呼び出すと、告白した。

 先輩の名前は天道てんどう晃平こうへい

 二年間、同じ部活でご一緒させてもらった人で、今日この学校を卒業する。

 来年からは県内の大学へ進学する事が決まっており、学内で会えるのは今日で最後だ。


 バクバクと胸がはち切れそうなくらいに鼓動は高鳴り、身体はガチガチと震え、緊張する。

 喉はカラカラに渇き、顔は茹でダコの様に真っ赤。

 様々な感情がぐるぐるぐるぐると渦巻き、恥ずかしさのあまり、今すぐにでもここから走り去って布団の中へと潜りたい気分だった。

 しかしそれは出来ない。

 今日、告白しなければ二度と先輩に告白するチャンスなど訪れない。

 そうなったら先輩と付き合うなんて夢のまた夢になるだろう。


 そして、先輩は私の知らないところで彼女を作って……ダメだ。

 これ以上は、たとえ想像といえども考えたくない。

 私はそれほど、彼の事が好きなのだから。

 どこの馬の骨とも分からない人なんかに大好きな先輩を取られるなんて考えたくもない。

 だから今日、私は勇気を振り絞って告白したのだ。


 先輩からの返事はまだない。

 どうやら、ただの後輩としか思っていなかった私に告白され、少し戸惑っている様だった。


 不意に春の風が私達の間を吹き抜けていき、桜の花弁はなびらが舞った。

 それは私にとって祝福の風になるのか、悲報への知らせになるのか。

 私は押し寄せる不安に押し潰されそうになりながらも、先輩からの返事を待っていると、先輩が照れた様に笑った。

 そして「ありがとう」と言うと私からの告白を受け入れてくれた。


「……っ!」


 私は先輩の言葉を聞き、嬉しさのあまり泣き崩れてしまった。

 すると先輩は私の身体を抱き締めると慰めてくれた。

 しかし一度、あふれ出した涙は全く止まらなかった。

 年甲斐としがいもなく、小さな子供の様に泣く私。

 でも無理もない。

 何せ長年の想いが通じたのだ。

 こんなに嬉しい事はない。

 そんな私を先輩は泣き止むまで、いつまでも抱き締めてくれていた。


 こうして桜舞う季節、春。

 3月1日、卒業式。

 私と先輩は恋人になった。



 ※※※※※※



 先輩と両思いになったその日、私は近くの本屋へと出向き、一冊の日記帳を買った。

 365ページ、一年間にも渡って書けるという分厚い日記帳を大事に抱え、帰路につく。

 これからこの日記帳には彼とは様々な思い出が記される事になるだろう。

 そして数年後、こんな事もあったねと二人で語り合うのだ。

 私はこれから訪れるであろう明るい未来に興奮を押さえきれなかった。


 大好きです、先輩。

 ずっといつまでも仲良く過ごしましょうね。


 早速、私は最初のページに今日の出来事を記す事にした。

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