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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第三章

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第22話 回復・回帰


 夕焼けの光が出始めた頃。


「本来の神樹の色が、戻っていく……」


 魔法科学ギルドの下層班と騎士団員と共に倉庫街にいたシドニウスは、緑と綺麗な茶色を取り戻していく神樹を見上げながら、ぽつりと呟いた。

 

「これは、回復していると、言う事でしょうか……!」


 サキがアクセルの元に向かってから、自分も計画通り、倉庫街の前線基地にまで戻って来ていた。ただ、ここからだと、神樹の向こうは全く見えないのだ。


 ……物見台からの一報では、アクセル殿も成功したとの報告はありましたが。


 事実、青々として来ている。

 周囲からは抑えきれない歓声も漏れ出している。

 だが、喜ぶのはまだ早すぎる。


 ……本当に解毒が上手く行って、こうなっているのか……


 それが分かるまで、喜びはとっておくべきだ。

 そう思って、呟いた時だ。


「本当よ」


 そんな声が、横から聞こえてきた。

 見ればそこには、


「モカ殿……? どうやって……」


 先ほどまで樹上にいた筈のモカがいたのだ。

 肩で息をしながら、まるで、走って来たかのように。

 こんな短時間でどうやって下まで、というこちらの疑問を察してか、彼女は汗を拭きながら、しかし笑みを持って答えてくる。


「決まっているでしょ。神樹の回復を確かめるためにね。私が実験第一号として、降りてきたのよ。神樹の中をね」

「なんと無茶な……」

「まあ、ちゃんと緊急用の装備はして来たけどね。でも、その必要は無かったんだ。上から走りつつ、見回りながら降りてきたけど……連絡通路はきっちり回復していたから」

「おお……!!」


 そんなモカの台詞を聞いたからか、騎士団たちや、魔法科学ギルドの面々の表情が一気に明るくなる。


「シドニウスさんのような人達に比べて、体力に自信のない私でも。あの高さを無事に降りられた事が、その証明よね。それに……機材で確認したけれど、毒の一片たりとも、残っていなかったわ……!」


 そして、最後の言葉を聞いて今度こそ、その場で爆発的な歓声が響いた。


「や、やったぞ!!!」

「神樹の回復、成功だ!!!」

「万歳……! 万歳――!!」


 各々が声を高らかに上げ、ハイタッチをし、抱き合う。それぞれの喜び方で、しかし嬉しさを隠さずに、動いていた。


「あはは……凄いわね、これ」

「すみません。いきなり、大きな声を」

「いやいや、そこは謝らないでよ。本当に喜ばしいんだし。魔法科学ギルドの職員たちも、同じくらい声を上げてるんだしさ」


 モカと共に、シドニウスは狂喜乱舞する仲間達に目をやった。

 ここまで長い間頑張って来たのだ。これ位、喜びが爆発するのも、当然かと。


「……今後は、皆も自然に降りられるようになるわね」

「虫系の魔獣も排除し終われば完璧ですね」

「そうなったら祝勝会をしつつ、街の皆に説明をしようかしらね」

「そうですねえ。ああ、良かった……」


 ほ、と胸をなでおろすこちらに対し、モカは微笑と、握手の手を向けてくる。


「本当にね。神林騎士団の皆さんにはとても世話になったよ。ありがとう」

「いえいえ、私たちは、出来る事をやっただけなので。それよりも礼を言うべきは彼らでしょう」 

 握手をしながらも、シドニウスは神樹の方を見た。

 今回の功労者は、自分達よりも彼らの方だからだ。


「ああ、そうだね。空飛ぶ運び屋さん達にはしっかり、お礼をしないとねえ」


 そうして。シドニウスが嬉しさを仲間達と、語り合っていた。

 

 ――そんな時だ。

 

「なるほど。こうなったか」


 喜びであふれる中、重い声が響いたのは。

 それは小さくとも、しっかりとした声で、


「まあ、保険として、ワタシがいて、本当に良かったよ」

「ベイン……?」


 魔法科学ギルドの下層班にいたベインが発するものだった。そして――


「では、やろうか。【瘴気爆発】(インフェクト・ボム)

 

 彼の体から巻き起こった、大規模の爆発が、シドニウス達を襲った。


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