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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第三章

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第19話 運び屋として


 モカの言葉を聞きながら、シドニウスは早朝に見た資料と、自分が知る街の形を思い返す。

 そして、その上で、告げる。


「上層部の投薬ポイントは騎士団の人間が走ると五分ほどかかります。そして、下層の投薬ポイントは、街のに張り巡らされた根っこの部分です。……そこまで降りるのに、騎士団の人間は一時間かかります」

「魔法科学ギルドの上級職でも、降りるのに同じくらいはかかったね。シドニウスさんにも試して貰ったけど……」

「そうですね。私もやってみましたが。降りるのに二十分……いや、頑張っても八分は欲しいところでした」


 そうなのだ。

 早朝から実験としての上り下りを行った。

 けれど、どうしても、三分という時間制限はどうしようもなかったのだ。


「薬を上から投げ落とすのも考えましたが、そこまで頑丈な容器はありませんからね」

「そうだね。特に果実の成分が入っているから、魔法の防護袋に入れたら品質が変わって、使えなくなってしまうからね。……本当に薬になっても安定しきらない成分とか、初めて使ったけれどさ」


 試せることはあらかた試した。その上で、薬を完全な状態で運ぶには物理的手段しかないが、しかし時間がネックになる。

 

 それが、今回の解毒に付いてきた問題だ。


「それで……俺たちに話を持ってきたと」

「はい。この神樹を軽々昇って来れるアクセル殿ならば、と思いまして。何か妙案はありますでしょうか。例えば、この樹木を三分内で登り降りするとかは……」

「あー……幾つかスキルを使えば出来なくはない」

「本当ですか!?」

「まあな。ただ、神樹が弱っている状態だと危ない、かな。踏み割ったり、折れるかもしれないから。おススメは出来ない」


 アクセルは、考えをそのまま口にするようにゆっくりと喋る。


「そう……ですか」


 ダメ元の提案を、出来なくはない、と言われただけでも驚くべき事だけれども。

 しかし、実質的に無理なのであれば、意味がない。


 どうすればいいだろうか。何か手段はないのだろうか。そう思った、時だ。


「あ、でも。妙案っていうか、二、三分で降りるだけならさ。俺だけじゃなくていいだろう。俺以外でも、行ける奴はいるし」


 その言葉にシドニウスは目を見開いた。


「え? それは、どこに……」

「いや、そこにいるだろう。なあ、サキ。バーゼリア」


 アクセルに、話を振られた彼女たちは、お互いに顔を見合わせると、揃って頷いた。


「まあ、昇るのは大変ですが、降りるだけなら二分も掛からず行けますね」

「ボクもー。竜の姿にならなくても、フツーに行けるかなあって思うよ。ご主人みたいに上手くは降りられないけどさ」


 そう言われて、思い出した。

 そうだ。彼女たちも、勇者と、それの匹敵する英雄だと言う事に。 


「――ってなわけで、俺以外にも降りれるのは居るんだよ」



 俺の言葉に、モカとシドニウスは目を見開いていた。

 二人の能力を知らなかったのだから、気持ちは分からないでもないが。

 まあ、とりあえず、下まで早く降りれる人員は確保できたわけだ。

 

 そう思っていたら、 

 

「あ、でも親友。保険を兼ねたら、どっちか一人が下の投薬地点で待っていて、もしもの時に受け止めた方がいいかもしれないぞ」

 

 デイジーがそんな事を言ってきた。


「……あー、確実性を考えたら、そっちの方が良いかもしれないな」


 降りられる能力は信頼しているけれど。イレギュラーが無いとは限らないし。備えはしておいた方がいいだろう。そう思って呟くと、


「……ぬ、では私がアクセルと同じように上から飛ぶ仕事をしますか」

「いや、そこはボクの仕事でしょ、リズノワール」

「……」

「……」


 いつものにらみ合いが始まった。

 ただ、今は場が場と言う事で空気を読んだらしく。直ぐに二人は頷き合い、


「分かりました。公平に決めましょう。アクセル、少し向こうで話し合ってきます」

「そうだね。しっかりお話し合いをしたうえで、決めようか……!」


 と言って、二人して会議室の端っこに行き始めた。

 

「……うん、まあ、あんな感じだけど。とりあえず、最初の薬はあの二人のどっちかに渡せば、どうにかなると思うぞ。で、もう一本は、俺が頂上のポイントに打ち込めばいいし」

「そ、それだとすると、残り一本は……? 最速で作れても、二回目の作成になると一分しか残らないのだけれど……?」

「それも、俺がやれると思う。ルートは覚えているから」

「ほ、本当に?!」

「嘘を吐いてどうするんだ。……まあ、一分もあれば、どうにかなると思うぞ」


 一分もあれば、比較的安全に、且つ神樹に負担を掛けずに降りられると思う。更には、

 

「あ、念のためって訳じゃないが。親友が降りる時は、俺もサポートするぜ」


 デイジーが俺の肩に乗りながら、そんな事を皆に言った。


「俺単体で、高速で降りるのは確実性が低いからやれないんだけど。でも親友と一緒なら、魔法でフォローしたり、投薬ポイントまでの案内もリアルタイムで出来るだろうからな」

「おお、そりゃ有り難い。……うん、とりあえず、その時間があれば、問題はないと思うぞ、モカさん」

「そう……なら……グランツさん。お願いしてもいいかしら。これは、絶対に時間厳守の依頼になるのだけれども。神樹の弱り方を考えたら、出来ればこのワンチャンスで決めたい、そんな仕事に」


 モカの口から時間厳守の依頼、という単語聞いて、俺は、マリオンから教えられていたことを思い出していた。

 

 そういう物を運ぶ時が必ず来るだろうけれど、大体が難易度の高い依頼だから、その時は頑張って、との言葉を。

 

 ……まさに今が、その時なんだろうな。

 

 運び屋として認識されているからこそ、頼まれた事だ。

 これもまた、はじめてに近い依頼だけど、


「この大事な役を、押し付けてしまうようでなんだけど……頼っても良いかしら」


 真剣で、必死な表情での依頼に、俺は大きく首を縦に振る。

 仕事を受ける時の基本として、自信をもって、頷く。


「ああ、やってみるよ、モカさん」


 あの時星の都で教えられたことを存分に発揮できる場所だ。

 ならば運び屋として頑張ろう。そう思いながら、俺は今回の重要依頼を引き受けたのだった。


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