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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第三章

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第13話 普段の仕事ぶり


 神林都市の一角。

 神樹の陰により日当たりが良くない為、人の住まない倉庫街となっている場所がある。


 本来は朝晩問わず人気が少ないその場所は、一か月前から神林騎士団により複数のテントが張られ、神樹回復作戦の為の前線基地となっていた。


 普段は騎士たちが僅かな軽口を言い合いながらも、倉庫から物資を取り出したり、警護の為にローテーションを組んで神樹周辺を見回ったり、そんな仕事をする為の拠点となっている。

 

 とはいえ、基地を敷いて一か月。団員たちも落ち着いて来て、騒がしさも殆どなくなってきた場所になっていた。

 

 けれど今、そんな現場で、何人もの騎士たちが色めき立っていた。


「おいおい、マジか。あの美人さんはまさか、魔術の勇者様、だよな?」


 倉庫街の中央で、そんな声を上げたのは騎士団に入って数年目の《上級騎士》だ。

 彼の視線の先には、両手に布袋を抱えて、黒髪を揺らしながら歩く女性の姿があった。

 

 戦争に少しなりとも参加していた上級騎士にとっては、見覚えがある美貌と服装だった。


「見間違いじゃ、ないよな? お前も見えてるよな」


 そして騎士団の仲間に確認を取るように声を掛けてみたが、

 

「勿論だ。しかも、その隣にいる赤い髪の子は、確か、バーゼリアさん、だっけか。前に勇者パーティーで見たことがあるぜ。その時は一緒に戦っているんだって言ってたが……」

 

 どうやら彼にも魔術の勇者が見えているらしい。そればかりか、勇者パーティーの一員であった少女までいる。

 しかも、彼女も彼女で大きな木箱を抱えていた。 


 そんな二人が並んで歩く中、


「あの、勇者様たち? お荷物、お持ちしましょうか?」


 騎士の一人が声をかけるが、


「いいえ、お構いなく」

「ありがとー。でも問題ないよー」


 と二人から、笑顔で断られていた。

 ちゃんと応対するような会話をしているという事は、魔法で作り出したただの幻影などではないようだが。


「なんでこの街に……というか、倉庫街にいるんだ? しかもあんな風に荷物を持つなんて」

「さ、さあ……」


 上級騎士が仲間と揃って首を傾げていると、


「ん? あれ、お前らは知らなかったのか?」


 背後からもう一人の仲間が声を掛けてきた。

 最近は騎士団長に付いて回っている《近衛騎士》の一人だ。


「今、勇者様たちは、空飛ぶ運び屋さんと一緒にパーティーを組んでいるから。その仕事の一環で手伝ってくれてるんだよ。三人で手分けして色々な倉庫を回ってくれてるんだ」


 彼の説明を聞いて、上級騎士は昨日、方々で聞いた人名を思い出す。

 そう、先ほど、騎士団長と共に倉庫街にやって来て挨拶をしてくれた人の名前だ。


「空飛ぶ運び屋……って、運び屋のアクセルさん、だよな。神樹の上層まで一気にモノを運んだっていう」

「そうそう。その運び屋さんな。あの荷物も、また、樹上に運ぶんだろう」

「へえ。……しかし、樹上まで荷物を届けられる運び屋、か。やっぱり勇者の仲間ってのは、そのくらいすげえことができないと務まらないんだろうな」


 上級騎士の呟きに、隣にいた仲間も頷く。


「ああ。一部の噂では勇者の力か何かを借りて、上層まで打ち上がったんだろうとか言われてるけどな。でも、騎士団長があそこまで信じ込んでるってことは真実なんだろうさ。噂よか騎士団長の態度の方が俺たちも信じられるしな」


 少し前、アクセルがこちらに挨拶をしてくれた時、彼の隣にいた騎士団長の表情や動きを思い出す。

 

「ウチの騎士団長、物腰はやわらけえ分、実力主義な部分があるからな。力を持っていない人には、かなり気遣いとかするし……でも、アクセルさんには、そういうのは全くなかったもんな」

「だなあ、丁寧な対応には違いないから微妙に分かり辛いけど……ありゃあ、力をかなり信頼している尊敬の目線だったぜ」

 

 自分達ですら、任務に対して実力が足りない時、気遣う。

 力を見る目は確かにあるのだ。

 そんな騎士団長が、尊敬の目を向けたのだ。

 

「今まで錬成の勇者様くらいだもんな、あんな対応をしたの」

「気遣い屋でものすごく慎重なのが団長だからな。でもそんな団長が、あの対応をしているって事は、きっとアクセルさんの力は本物なんだろうさ」

「違いねえ。俺たちも運び屋さんや勇者さんたちを見習って、神樹を回復させるために頑張ろうや」




 その日、俺はバーゼリアやサキを連れて、倉庫を回っては荷物を詰め込んでいた。

 行っているのは、デイジーのラボで軽く話をした、倉庫街の荷物を樹上に輸送する仕事だ。

  

 今は、騎士団長や、他の騎士たちから、どの倉庫にどんなモノが入っているのかを教えて貰ったあと、運んでほしいと注文を受けたものをどんどん輸送袋に入れていっている段階だ。

 

「あ。アクセル殿。こちらが最後の倉庫になります」

「はいよ。さっきから俺だけじゃなくて、サキやバーゼリアとかも案内してくれて、ありがとう、シドニウス」

「いえいえ。勇者様たちが総出で手伝って頂けるとは、感謝するのはこちらの方ですよ。部下たちのモチベーションアップにも繋がっていますしね」


 こちらとしては運び屋の仕事をしているだけなので、モチベ云々は分からないが、彼らの力になれたのであればいいだろう。

 そんな事を思いながら、シドニウスに案内された倉庫の荷物を幾つか輸送袋に入れていると、


「アクセル。これも運んでほしいそうです」

 

 倉庫街の向かいの道から、サキがやって来た。

 手には革袋を抱えている。


「あ、すみませんサキ殿。お手を煩わせて」


 頭を下げながらのシドニウスの言葉に、サキはいつもの笑顔で首を横に振る。


「良いんですよ。アクセルの仕事を手伝っているだけですから。そして――はい、どうぞ、アクセル」

「うん、有難うな、サキ。手伝ってくれて」


 彼女から荷物を受け取りながら俺は礼を言う。

 するとサキは、先ほどの張り付けた笑顔を一気に剥がし、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ああ……このアクセルのお礼で充分お釣りが来ますから、お手伝い位、なんてこと無いんですよねえ。というかアクセルは、私にどんどん要求してください。いつでも色々と出来るようにしているんですから。勿論、夜の生活もオーケーですよ」

「こらこら、いきなりそっち方向に話を振られても付いていき辛いから程々にな」


 などと、サキと喋っていたら、


「ご主人ー、こっちも荷物持ってきたよー」

 

 バーゼリアが木箱を頭上に掲げてやって来た。

 

「おー、バーゼリアも有難うな。置いておいてくれ」

「りょーかいー。あ、それと、シドニウスのおじさん。直ぐ横の倉庫から取って来たんだけど、そこ、完全に空っぽになってるけど、いいのー?」


 バーゼリアに言われ、シドニウスは、ああ、と頷く。

 

「そうですね。この横は日用品ばかりが入っていた場所ですから。アクセルさんのお陰で、あらかた運べたので。空になっていていいのですよ」

「へー、そうなんだ。ご主人が全部運んじゃったんだね」

「はい。既に生活物資は全て上の方に輸送完了できています。今回の荷物を持っていってしまえば、しばらくは運ばなくていい状況ですね」


 驚くべき速度と成果ですよ、とシドニウスは少し興奮した感じで告げてくる。


「私たちだけでは、その日消耗するモノを運ぶのがやっとだったのに、こんなに余裕が生まれてくれるなんて。本当にアクセル殿のお陰ですよ。……そして、今回の最後の輸送も、どうぞお願いします」

「おお。了解」 

「……あ、それと。アクセル殿。今回は、私を運んでいって貰っても宜しいでしょうか?」


 シドニウスの言葉に、俺は一瞬動きを止めて、その意味をかみ砕く。


「うん? シドニウスを運ぶって……神樹の樹上にか?」

「はい。娘たちから聞きましたが、輸送袋には人も入れるそうなので」


 ああ、なるほど。セシルたちから聞いていたのであれば、俺が人を運べるというのも分かっているのか。なら、話は分かった。


「構わないぞ。ただ、乗り心地はそこまで良くないらしいが」

「問題ありません。今日は科学魔法ギルドの長と話し合いがしたいので。既に先方とは予定も組んでいますし、輸送袋に空きがあればお願いしたいのですが」

「大丈夫だ。シドニウスがさっきも言っていたけれど、運ぶ荷物は大分少なくなってきているからな。行けるぞ」

「良かった。では、お願いします!」

「おうよ。……えっと、それじゃあ、俺は上に行って来るけど、サキたちはどうする?」


 聞くと、二人は頷いたあと、ほぼ同時に


「ボクは、もう少し、ここでお手伝いしていくよー。ご主人に役立ちそうな話とかも聞けるかもしれないし!」

「アクセルと別行動は名残惜しいですが、上に行くよりは、ここや街の方で情報を集めた方が、アクセルの力になれそうですから。この辺りで動く事にします」


 同じような事を、言い始めた。そして一瞬だけお互いに顔を合わせた後、お互いにこちらを向いてくる。

 

「という訳で、アクセルは言ってきてくださいな」

「魔術の勇者と同じなのは不本意だけど、まあ、色々とご主人の為にやっておくよ!」

「はは、助かる。それじゃ、安心して上に行くとするか」

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