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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第三章

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第12話 錬成の力


 日が昇り始めた頃合いに目覚めた俺は、宿屋の外に出て、街中を散歩していた。

 かなり早い時間と言う事もあって周囲に人は少ない。 

 

 やや寂しく見えるが、街の道の形がよく分かるので、これもこれで良い景色だ。

 それに、この時間帯に起きているのは自分だけではなく、

 

「うーん、朝っぱらから親友の体温を感じるのは、何時ぶりだろうなあ。心地よく目覚められたぜ」


 デイジーもいた。

 今は俺の肩に引っ付いて、一緒に散歩中である。

 

「昔から、この時間帯に起きるのは俺と君くらいだったからな」

「そうだなあ。親友はどこにいようがこの位の時間に目覚めるのが癖になっていたみたいだし。オレもあんまり長く眠らない方だったからな」


 バーゼリアとサキはあまり朝は強くない方だし、他の勇者たちも、そこまで早起きな者はいなかった。なので、昔はよく、朝から一緒にいたものだ。 

 その時の感覚を思い出しながら俺はデイジーと言葉を交わす。


「しかし、街の中を適当に回ったけど、神林都市は、朝に開いている店はあんまりないんだな」

「神樹の陰で見え辛い場所もあって危ないから、しっかり日が昇ってから営業するところの方が多いらしいぞ」

「へー、なるほどなあ」


 確かにこれだけ大きな樹木が近くにあると、光が届き辛い部分も出てくるか。

 本当に光が少ない場所は、倉庫として利用されている、とセシルたちが説明してくれたけれども。


「まあ、何にせよ、神林都市の特色ってやつが分かって良いけれど。……店も開いてないし何をするかね」


 既に軽く街は回ってしまったし、道も確かめられている。

 このまま散歩を続けるにしても、他にどこか行ってないところを見てみたい気持ちがあるんだが、と思っていたら、


「あ、親友。それなら、俺のラボ来ないか? あっちにあるんだが」


 肩にいるデイジーが神樹の方を指さしながら言ってきた。


「デイジーのラボ? って、この前作ったって言ってた奴か」

「そうだぜ。見せたいって思ってたからさ。今、時間があるなら、紹介したいんだ」

「おお。そういう事なら、見させて貰おうかね」



 そうして、デイジーの案内に従って神樹の方に向かっていく事、数分。 


 たどり着いたのは、神樹の根元にくっつくようにして建っている、小さな一軒家だった。


「これがラボか? 随分と面白い所に建っているが」

「ああ、神樹の素材を取るのにうってつけな場所なんだ」


 言いながら、ラボのドアにデイジーはタッチする。

 すると、ガチャリ、と内側で何かが外れる音がして、ドアが開いた。

  

「さあさあ、入ってくれ、親友」

「おう。それじゃ、お邪魔します」


 中に入るとそこには、様々な薬品の瓶やフラスコなどの機材が所狭しと、しかし綺麗に整列させて置かれた部屋が広がっていた。

 また、何に使うか分からない機械類も置かれていた。


「ようこそ、親友。俺のラボへ。狭い所だけどゆっくりしていってくれ。椅子とかはここにあるからさ」


 そんな部屋の真ん中にある丸椅子に乗りながら、デイジーは両手を広げながら言ってくる。

 

「ああ、お言葉に甘えてゆっくりするよ。しかし、何というか、どこでも研究所みたいな部屋にしてしまうんだな、デイジーは」


 魔王戦争時代も、そこら辺の廃屋を改造して、このような研究所を作っていた記憶がある。

 

「おうさ。この配置が一番、オレが仕事をしやすいからな。まず環境作りを行うのが俺の性分だし。……居心地悪いか?」

「いや、そんなことないさ。むしろ懐かしさもあって、良い場所だと思うぞ」


 そう言うと、デイジーは、嬉しそうに口元を緩めた。

 

「ふふ、親友にそういう事言われると、なんかやる気が湧いてくるなあ」


 言いながら、デイジーは俺の肩に飛び乗って来る。

 何だかテンションも上がっているようだ。

 確かこのテンションで俺の肩に来た時は、撫でて欲しがっている時だったなと思い出しながら、撫ででおく。すると、デイジーはもっと嬉しそうにゴロゴロし出した。

 

 ……この昔もやっていた感覚そのものが懐かしさがあるよな。


 とはいえ、前は鎧を着ていたし、兜も被っていたから、微妙に距離感があったけれども。今は生身なので、もっと感触を実感できて有り難い。

 などと思いながらデイジーと触れ合っていると、


 ――コンコン。

 

 とドアがノックされた。そして、


「デイジー殿。いらっしゃいますか」


 シドニウスの声がした。

 その声に対しデイジーは、ああ、と声を上げる。


「いるぞ。入って来てくれー」

「では失礼します」


 そんな声と共に入って来たのは騎士団長であるシドニウス。更には、彼の後ろに、鎧姿の男と、白衣姿の女性もいた。

 誰だろう、と思ってみていると、まず、騎士団長が俺に気付いたらしく、


「おや、アクセル殿も一緒でしたか。昨日はどうも有難う御座いました」


 ぺこりと会釈をしてきた。


「こちらこそ、上手い店に連れて行ってくれて有り難かったよ、シドニウス」

「いえいえ。あんな短時間でのお返ししか出来ずにすみません。……魔法科学ギルドの所長であるモカとも昨日深夜、顔を合わせたのですが、今度は自分もお礼をしたいと申していましたので。また、食事でも、よろしくお願いできればと」

「その時は一緒に行かせて貰うよ。……で、騎士団長たちは何しに来たんだ? 何人か引き連れているみたいだが」


 共にいるのは、騎士と研究者だろうか。彼らと一緒にデイジーと尋ねてくるとは、どんな用件なのだろう、と思って聞くと、

 

「ああ、これはですね。デイジー殿に本日の発注書を持ってきた者を連れてきたのです。騎士団の《聖騎士》部隊から一名と、魔法科学ギルドの、下層で研究を続けている《上級薬師》班から一名、ですね」


 と、シドニウスは背後の騎士と、白衣の女性に目をやりながら言った。

 そして、その言葉に、デイジーは頷きを返す。


「あ、いつもの奴か。分かった。読むから、そこのテーブルに出しといてくれ」

「はい。お願いします、錬成の勇者様。これが騎士団からの発注書です」

「こちらは魔法科学ギルドからになります。デイジー様」


 デイジーに言われるなり、シドニウスの後ろにいた騎士と白衣の女性が懐から数枚の紙束を出し、テーブルに置いた。

 それをデイジーは捲って読んでいく。

 見たところ、紙には、魔石混合インゴットとか、中和剤だとか、いくつもの品名が並んでいるが、


「発注書って、物資の発注するための物だよな? どこかの商店じゃなくてデイジーが読むのか?」


 聞くと、まずシドニウスが答えてきた。

 

「はい。基本的に騎士団が神樹の根元で使う素材収集の為の道具や、樹上で研究に使うための資材や機材、物資となると、街の商店では取り扱ってない事がありまして。基本的に町の一角にある倉庫街から取ってくることになるのです」

 

 神林都市には巨大な神樹がある影響で、一日を通して日当たりの悪い区画があるので、そこは倉庫街として利用されている。先日、セシルらからそんな風に教わった情報をアクセルは思い返す。

「神樹の陰になっている区画を丸ごと使った、物資の保管場所だっけ? 人は住んでいないって聞いたが」 

「そうですね。今は騎士団が前線基地として使っていますので、本来はそこに発注を掛ける形になります」

「その前に、デイジーが見ているのか。でも、なんで?」


 そんな俺の問いかけに答えをくれたのは、発注書を読みながらのデイジーの声で、

 

「そりゃあ、ここからそれなりに遠いからだぜ、親友。連絡で行ったり来たりして、物資の行き来で行ったり来たりしてたら時間が勿体ないからな。簡単に作れそうな物や、重要層で早急に必要なモノがあった場合、俺が作れるモノなら作っちまった方が用意する時間が短縮できるからって申し出たんだ」


 デイジーの言葉に、シドニウスは苦笑する。


「はい……。ただでさえ、ご活躍して貰っているのに、このような事までして頂き、助かります……。倉庫街はかなり広いので、特定の品物を見つけるのにも時間はいりますし、持ち運びをしやすい神樹に近い位置にある倉庫は在庫を使い切っている所も多くなっていましたから」

「なるほどなあ。そんなに広いのか」

「神樹が大きい分だけ、影も大きく出来てしまいますからね。気温は一定で、倉庫として使う分には申し分ないのですが。……まあ、それでも、この一か月で、倉庫街の備蓄もかなり消耗してしまいましたが。ですから、こうして、デイジー殿に『作って頂ける』のはとても有り難いのです」


 騎士団長はデイジーを見ながら言う。

 彼の背後にいる既視や白衣の女性も、同意するように頷いている。

 どうやら、デイジーの存在は彼らにとって、本当に助かっているらしい。


「こちらを信頼して依頼された事は、信頼された分きっちりこなすってのが、俺の主義だからな。神樹を直すための原因究明に繋がるなら、しっかり貢献しようと思うさ」


 そんな言葉を受け取って、白衣姿の女性は目を潤ませる。


「ありがたいです……。デイジー様がここにラボを作って活動を始められたお陰で、毒の解析速度や、薬作りの研究速度が五割増しになりましたから。本当に起死回生でした。ラボ作りから何まで物凄く早かったですし」

「このラボは元からあった機材を分解して、錬成と構築をし直しただけで。そこまで手間はかかってないんだけどな。研究だって魔法科学ギルドの調査をもとに進めただけだし」


 デイジーは笑いながら言うが、白衣姿の女性は首を横に振る。

 

「進められる事が凄いのです、デイジー様。もっと言えば、そちらにいるアクセル様に大量の物資補給をして頂けたお陰で、更に速度上昇しているとのことです。倍近い研究速度になっているそうですから。お二方は我々の救世主ですよ」

「デイジーの言う事じゃないが、俺の方は、物資を運んだだけ、なんだけどな」


 基本的にシドニウスがやっていた事に、少しプラスした程度だと思うし。

 そう言うと、今度はシドニウスが首を頭を振った。


「違いますよ、アクセル殿。それが大事なのです。補給が無ければ何事も滞りますし、物資が無いのはモチベーションも下がりますからね」

「そうです! 食糧に余裕が出来たから、お腹いっぱいご飯を食べたのは久々だって、モカ所長も言ってましたからね」

「そこまで切羽詰まってたのか」

「物資を運ぶ手段が本当に乏しかったので。……だから、本当に有り難いのです」

「そうか。まあ、役立ってよかったよ。今後も何か運ぶものがあったら言ってくれ。なんなら倉庫街ってところから運んでもいいしな」

「はい……重ね重ね感謝します、アクセル殿……!」


 と、俺たちが喋っている間に、


「うーし。とりあえず、大雑把に読んだぞ」


 デイジーが発注書を読み終えたようだ。


「んーと、とりあえず、大体は用意できるが。倉庫街整理用のハンマーってのは、魔石の混じった金属製でいいのか? 『可能ならば』って一筆があるけど」


 話を振ると、答えたのは、騎士団長の背後にいた騎士だった。


「はい。神樹の素材を取り出すのにも使いますので。木製だと神樹の硬さに弾かれてしまうので。魔石入りの金属性が好ましいですね。とはいえ、大きな商店でも優秀な職人に頼まないと上手く作れないようなものなので、作成が難しいようなら後回しでも――」

「いや、了解。今作るよ」

「え、今からと言うと……


 騎士が最後まで言うよりも早く、デイジーは片手を掲げて、


「【錬成魔法:ハンマー】」


 言葉を唱えた。

 すると、その瞬間、デイジーの掲げた手の方向に置かれていたインゴットなどの素材が光に包まれた。

 そして光たちは一か所に集まり、纏まり合う。

 ほんの数秒で、その動きは止まり、同時に光が晴れると、

 

「完成っと」


 そこには、ピカピカとした光沢を放つハンマーが数本、出来上がっていた。

 

「いつ見ても凄いですな。デイジー殿の錬成は……」

「は、初めて錬成の勇者様の所に来ましたが、こんなにあっさりお造りになられるのですね……」

 騎士団長たちは目を見開いて、驚いている。

 

 ……デイジーの錬成魔法、か。

 

 素材と、出来上がるモノの詳細なイメージさえあれば、途中過程をスルーして物品を作り上げる事が出来る。そういう魔法だ。 

 

「……久しぶりに見たが、見事なもんだな、デイジー」

「そうか!? 親友にそう言って貰えると嬉しいぜ! 撫でてくれると更に嬉しいぜ!!」


 そういうので、お腹の辺りをこしょこしょ撫でてやると、宣言通り嬉しそうな表情になった。ただ、俺の後ろにいる騎士団長たちには気づかれない程度には表情を保っている。

 微妙に器用な嬉しがり方をしているなあ、と思っていると、

  

「よーし、じゃあ、ガンガン作るぜ!」

 

 デイジーはさらに錬成を続けていき、数分とかからずに、いくつもの物品を作っていった。

 だが、その途中で、


「うん? ……って、なんだこれ」


 デイジーは動きを止めた。


「どした、デイジー」

「いや、今気づいたけどさ、発注書の一番下に横線で消されている欄があるんだけど、精神疲労回復のポーション40本ってなんだって思ったんだ?」


 言われ、騎士団長は申し訳なさそうな表情で頭を下げてきた。


「ああ、すみません。それは、魔法科学ギルドの方々の研究効率を考えて、提案したのですが。……上級薬師の彼女に、これだけ用意するのは現実的ではないということで、消されたモノです」


 騎士団長の言葉に白衣の女性は、当然です、と息を吐いた。


「精神疲労回復のポーションは倉庫街に数本しか備蓄してないのは分かっていますし。精製するにしても難易度が高くて、一本作るのに上級薬師でも三時間はかかる上に、機材も占有してしまいますからね。人数分作っている時間があったら、研究した方がいい、ということになりますし。デイジー様の機材を占有してまで作って頂く訳にはいきませんから」

「ふむふむ……? それはでも、あった方が良いってものだよな?」


 デイジーの言葉に、白衣の女性はおずおずと頷く。


「それは、はい。精神的な疲労は中々回復が難しいので。ただ時間的に……」

「いや。これくらいなら別に、神樹から素材を取りまくった今なら直ぐに作れるものだから、気にしなくていいぜ。欲しい物を作るって言ったのも、オレの方だしなー」

「え?」


 デイジーはそういうなり、両手を掲げて、


「【錬金:上級薬精製】」


 唱えた。すると先ほどと同じように、周囲にあった素材の幾つかが光に包まれた。そして――


「――ほい、出来た。持っていってくれ」


 光がなくなるとそこには、濃いオレンジ色の液体が充填された瓶が数十本、並んでいた。


「数分も掛からずに、これだけ強力な効果のポーションを……?!」


 それを見て、そして瓶の内の一本のふたを開けるなり、上級薬師は目を見開いた。

  

「こ、この特徴的なオレンジ色と……ツンとくる甘い香りは、確かに精神疲労回復のポーションで間違いないですね。いや……体力回復効果のある素材も消えているということは、体力回復も出来るのかも……というか、

「うん、効果を追加したのも分かるか。けどま、精神も体も回復するものだから、使って損はない筈だぜ」


 言いながら、デイジーは瓶の数を数えていく。


「えっと……うん、四〇本あるな。まあ、これ位なら楽にできるから。とりあえず、欲しい物があったら、言ってみてくれ。出来ないならこっちでハネるだけだからさ」

「は、はい! 了解です!」

「……あとまあ、これで簡単に作れそうな物と、重要そうな物は作り終えたから。持っていっちまって良いぞ」

「は、はい! ありがとうございます、錬成の勇者様!」


 そうしてお礼の言葉を残しながら、騎士の一人と上級薬師はデイジーが作り上げた品物を幾つか持って、ラボから駆け出して行った。

 そして、場にはシドニウスだけが残っており、


「いやはや……こんな簡単に道具や、強力な薬を作れるなんて、デイジー殿の力は驚異的ですな。アクセル殿の力も合わせて、勇者と呼ばれる方々は本当に凄まじい……」


 デイジーと俺を見ながらそんな事を言ってきた。


「まあ、オレは一応、そういうスキルと能力を持った職業だからな。複雑なモノじゃなきゃ大抵は錬成出来るさ。こういった硬い神樹から魔力やエキス、成分を抽出する機材を作る時は、流石に何日かは掛かるけど」


 デイジーはラボの端っこにある、管が着いた機材類に触れながら言う。

 

「魔法科学ギルドは、そういう機材を作るのに何年も掛かったのですがね。戦時中は、移動する小さな大研究所、なんて言われていましたが、ええ。目の前でみると実感しますよ」


 シドニウスが発した言葉に、デイジーは僅かに微笑む。


「懐かしい話だなあ。俺が作ったものを色々な人が使っていたが……その時は親友が一番、使ってくれた記憶があるな」

「あー、そうだったな。武器は特に頑丈に出来ていたから、デイジーが作ってくれたものばかり使っていたっけな。竜騎士時代に使っていた、君が改良してくれた槍と剣は未だに現役だし」


 俺は輸送袋の中に入っている剣と槍を思い出す。

 あれらは結局、運び屋となった今でもお世話になっているモノだと。そう伝えると、


「え、今でも使ってくれているのか!?」

 

 デイジーの表情がパッと明るくなった。


「勿論。色々と思い入れもあるしな」

「そうかあ……。あれは元の剣や槍や、改良の際に使った金属素材とか、何まで特注品だったから、相当長持ちすると思っていたけれど。まだ使ってくれていたのかあ。ふふ……錬成した甲斐があって、嬉しいなあ」


 などとデイジーは頬を緩ませている。

 喜んでもらえているなら、こちらとしても有り難い事だ。そう思っていると、


「しかし、シドニウス。さっきから気になっていたんだが、オレが作った物品が幾つか、残っているんだけど。これは、どうするんだ?」


 デイジーはそんな事をシドニウスに言った。

 すると、彼は動きを止めて物品を見たあと、

 

「これらは樹上で使う予定の物なのです。ですので、……アクセル殿に再び依頼をしようと思って、残して貰ったのです」


 言いながらも、シドニウスは苦笑の表情で聞いてくる。


「それで、ちょっと、昨日の今日でお世話になってばかりで言い出し辛かったのですが……また、上までの輸送をお願いできますでしょうか、アクセル殿?」

「ああ、了解だ。というか、その辺りはデイジーと同じようにさ、気にすることなく、依頼してくれよ、シドニウス」

「は、はい。有り難う御座います、アクセル殿……!」


 そうして朝の空気の中、俺はデイジーが作った幾つかの荷物を合わせて、神樹の上層へと輸送していくのだった。


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