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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第二章

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エピローグ 積み重なる信頼と旅立ち

 玄武公を倒して海から戻った俺達は、まず海事ギルドや造船ギルドを含めた街の住人から、歓声を受けた。

 シルベスタの被害は船が数隻と防波堤の一部がやられた位で済んだらしく、奇跡的に軽微で済んだ、と。

 その後、ライラックやヴィルヘルムからも礼を言われ、海賊の宿屋やその周辺店舗で開かれる祝勝会に参加することになった。

 

 そこで飲み食いして程々に騒いでいると、玄武公との戦いで上がっていたテンションで誤魔化していた疲れが出たのか、皆はぶっ倒れる様に眠った。

  

 そうして騒いで休んで楽しんだ日から、数日が過ぎて。

 街もすっかり今まで通りの雰囲気を取り戻した頃。俺は、バーゼリアやサキと共に、海賊の宿屋の前にいた。

 

「もう、行っちまうのかい。アクセルさん達」

「ああ、シルベスタも大体見て回ったからな。……それに、ちょうどいい依頼もあったしな」


 言いながら、俺は依頼書を見る。そこには『世界樹の都への手紙と人の輸送』とある。依頼したのは今、俺の隣にいる先日も一緒に仕事をしたばかりの二人の冒険者姉弟だ。

 

「今回もよろしくな、二人とも」

「うっす! 玄武公を倒したアクセルさんやバーゼリアさん、魔術の勇者様たちのチームが受けてくれるなんて! 姉さん共々、お世話になるっす!

「ええ……本当に。物凄く、心強いわ……!」


 ジョージとセシルはキラキラとした瞳で言ってくる。

 先日の玄武公襲撃から、俺への接し方が更に変わったみたいで、依頼を俺達が受けると伝えた時からずっとこの状態なのだ。


「はは、随分と懐かれたなあ、兄さん」

「まあ、信用して貰えて何よりだと思っているよ」


 そんな訳で、俺はバーゼリアとサキに加えて、彼らを連れて世界樹の都まで行く事になったのだ。

 水の都からはそこそこ遠いが、ある程度見知った仲で道中を行けるので、比較的楽だろう、とは思っている。が、


「気を付けていくんだよ。あの魔人云々に関してはまだ調査中だけど、色々とキナ臭いからね」


 ライラックはそんな心配をしてくる。彼女の隣にいるヴィルヘルムも頷きと真剣な表情で、注意を伝えてくる。


「結局、あのあとライラックと俺っちで調べたが、玄武公を呼び寄せた自称魔人は、それ以上の情報を持っていなかったからな……」


 そう、あの後再び【真実自白】を使っても、結局、先日知った情報以上の事は出なかったそうだ。命令をしたというのが誰かも分からなかった。


「単独犯なら良いんだけど、徒党を組んでいるっぽい名前だからね。あとで《上級探偵》とか調査系の職業の連中に究明は頼もうと思うけどね。どこに何が潜んでいるか分からないのは今までと一緒だろうけど……魔人という脅威が再び出ている。そういう可能性が増えた分、気を付けて行っておくれよ」

「ああ、有り難う。警戒はしていくよ」


 などと、ライラックたちと話していると、

 

「あ、良かった。アクセルさん、まだいてくれたのね」


 宿屋の方からマリオンが出てきた。


「本業の方で手間取っちゃったけど、見送りには間に合ってよかったわ」

 

 彼女は少々眉を下げた笑みを浮かべていて、名残惜し気に言いつつ、握手を求めてくる。


「今度こそ、またね、になるわね、アクセルさん」

「ああ、マリオンも。忙しい中、星の都から水の都まで案内してくれて有難うな。滅茶苦茶楽しい旅になったよ。ギルド関連での手助けも沢山してもらったし。お陰で色々な人に信用して貰う事も出来たよ」


 俺が握手しながら礼を言うと、マリオンは笑って首を横に振った。


「ふふ、気にしないで。そう言って貰えると私もここまで来た甲斐があったんだから。それにギルドに関してはアクセルさんが実績を積んだからよ」

「ははは、そうさねえ。本人の前で言うのもなんだけど、マリオンに紹介されただけなら、アタシはそこまで信用度を上げないからね」


 マリオンのセリフに同意するように、ライラックは豪快に笑った。その後で、不意に気付いたように俺の指を見る。


「――って、そうだ。マリオンといえば、アクセルさん、ギルドの認定指輪持っているんだよね? そこに海事ギルド・アクールの認定印も押させてほしいんだが、いいかい?」

「あ、俺っちのトコも――イクシスも便乗させてくれ。兄さんにはすげえ世話になったんだしさ」

「え、別に押してもらう分には有り難いんだけど。そんなに気軽に認定印を押してしていいのか?」

 そう言うと、二人に苦笑された。


「兄さんがこの街でやってくれたことは全然軽くないから、全く問題ねえよ」

「そうさね。むしろ押させてくれないとアタシらの居心地が悪くなっちまうってもんだからね。だから、押させて貰うよ」


 ライラックとヴィルヘルムはそんな事を言いながら小さな棒を取り出し、俺の指輪に押し付けた。それだけで、指輪に新たな模様が二つ刻まれる。

 

「よし。これで……心置きなくと言えば嘘になるが、どうにか見送れるよ。――またね、空飛ぶ勝利の運び屋さん」

「ああ、まだまだ恩を返しきれてねえからな。俺っち達に協力できることがあれば、何時でも言ってくれよ。運び屋の兄さん!」

「分かった。有り難うよ、二人とも」


 そう言って、俺は二人とも握手をしていると、


「ご主人ご主人ー。こっちの荷造りは終わったよー」

「私の方も完了です」


 街の市場で装備類の購入をしていたサキとバーゼリアが笑顔で睨み合いながら戻って来た。

 

「二人とも、旅立ちの用意は万全みたいだな」

「うん、何時でも行けるよ! ライラックさんやヴィルヘルムのおじさんとの挨拶もさっきしたしね」

「私も同じく。というか荷造りだけではなく、なんなら子作りの準備も終わっていますので、その気になればどうぞアクセルという感じですね、ええ」

「ああ、うん。一部は聞き流すとして――それじゃあ、改めて出発だ!」

「「おー!!」」


 そうして俺達はシルベスタで知り合った皆から見送りを受けながら歩きだす。

 水の都の海風を背中に感じながら、新たに増えた仲間と共に。

 次の街では何が見れて、どんな事が出来るようになるのか、期待に胸を膨らませながら、次の街へと足を運ぶのだった。

これにて第二章完!です。


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