第29話 発見と変わる行動
なぜか海岸近くにいたジャッカロープを退治したあと、俺達は治療や装備の確認をしてから、出発したのだが、
「アクセルさん。もしも、道中、何か俺たちの動きでおかしなところを見つけたら忌憚なく言ってく……ださい! 全力で直すために努力する……しますから!」
「そうね。ジョージの言う通り、お願いします!」
「え? ああ、まあ、了解。何かあったらな」
先程、道すがら、そんなやり取りがあった。
更にはそれ以降、なんだか二人とも、フレンドリーに接してくるようになった。
ジョージはこちらに対しての言葉遣いまで変わっているし、どことなく見られ方も変わった気がする。
少なくともマイナス的な感情を混めた視線は全く来なくなった。
……まあ、仲が良い方が色々と動きやすいし、意思の疎通もし易いから、有り難いことではあるんだが。
ただ、やはり俺はちゃんと観察役としての業務を出来ているんだろうかと思う事はある。
なんだかんだ、この観察役という業務は初めてなのだから。
サポート仕事の応用とは言われて、その感覚でやっているけど、これが正解な動きかというと分からない。だから、
「それで、俺も聞いておきたいんだけど、俺の観察役の仕事に改善点とかあるか?」
と尋ねてみたのだけれども、
「いえ、ないっすよ!」
「全くね。凄く有り難い事をしてくれてるわよ、アクセルさんは」
そんな風な、微妙に答えにならない答えが返って来た。
問題がないのであれば良いのだけれども、自分はまだ、一般的な基準について疎い状態だし、
……うん、そうだな。分からないなら分からないなりに、考えながら動いていくか。
それもまた運び屋としての成長に繋がるだろうし、今後の為にもなる。
まだまだやれる事は増やしておきたいし、今回の観察役も試行錯誤していこうと思う。
……って、成長と言えば、最近スキル表チェックの方はおざなりになっていたな。
後々、纏めて確認もしておきたい所だ。
なんて思っている内に、俺達は林地を抜けて、大きな岩がごろつく海岸へとたどり着いた。
「えっと、ここが今回の調査ポイント、だったな」
「そうね。早速魔獣が発生しそうなポイントのチェックを開始しようかしら。ジョージ、行くわよ」
「あいよ、了解、姉さん」
セシル達は、時おり手首に付けた透明な宝珠に視線を落としながら、ゴツゴツした岩場の海岸を進む。
「この宝珠は、強い魔力を持った魔石や、それを材料にした魔道具が転がっていれば反応するそうだけれど、……って噂をすればね」
そう言って、セシルは白く濁った宝珠を俺やジョージに見せてきた。
「この反応があるという事は、辺りに何かしらがあるということだけど。こんな地形だと、魔石を探すのは大変そうね」
魔力の塊である魔石は、色合いこそ普通の石と違うとはいえ、目立つような大きさのものは少ない。だからセシルは苦笑したのだろうが、
「まあ、強い魔力に近づけば宝珠の濁りも強くなるらしいし、参考にして探しましょうか。……アクセルさんも何か変わったものを見つけたら、言ってくれると助かるわ」
「あいよ、了解」
そうして、俺達は宝珠の色の変化を頼りに調査を進めて行こうとしたのだが、ふと岩場から視線を上げた際に俺は気付いた。
「……ん? なんだありゃ」
「どうかしたの、アクセルさん」
「いや、あっち。水の色が変だな、と思ってな」
俺の視線の先。海岸から少し離れた海面の色が紫色に染まっていた。
「本当だわ。しかも……この色が付いた水の方に近づくだけで、宝珠の濁りが強くなるわね……」
セシルが数歩、海岸に寄っただけで、宝珠の全体が白くなるほどだった。
「となると、魔石由来の成分でこの色は付いているという事になるけど……どこかから溶け出しているという事になるのかしら」
セシルが眉をひそめながら分析していると、
「姉さん。アクセルさん。色は向こうの洞窟の方から来てるみたいだぜ」
ジョージが前方にある大きな岩をくりぬいた様な洞窟を指さしながら言った。
確かに前方の洞窟と海が接している部分に近づくにつれて、紫色は濃くなっているように見えた。
逆に言えば、沖のほうまで行ってしまうと、紫色は薄れて、普通の青色になっている。
だから、街の方からでは確認できなかったのだろう。
「あの中に原因がある可能性が大きいし、行ってみるしかないわね」
言いながら、セシルは、洞窟の方へと足を運んでいく。ジョージもそれに付いて行き、俺もその後に続いて歩く事、数分。
「まずは、ここから確認しましょう」
俺達は、洞窟の前にたどり着き、静かに中を覗き込んでいた。
外から見ると分からなかったが内部に天井はなく、光が差し込んでいた。その為、大分見通しはよく、中入り江になっているのが良く見えた。
そしてその入り江の中央にある岩に人影があるのも、その人影が周辺の海水に、何やら小石や粉のような物を振りまいているのもまた、よく見えた。
「……アクセルさん。ジョージあの人が撒いている部分から色が変わっているように見えるんだけど、私の見間違いじゃないわよね」
「俺からもそう見えるな」
「アクセルさんに同意だぜ、姉さん」
そんな言葉を交わした後、セシルはジョージ、そして俺と目を合わせ、
「まだ、気付かれてないみたいだし。私たちが先に行って、あの人から事情を聞くから、アクセルさんは後方から警戒をお願いしてもいい?」
小さな声で確認を求めてきた。なので頷きで返すと、セシルは微笑して、
「じゃあ、行くわよ、ジョージ」
「おうさ……」
二人は足音を押さえて洞窟の奥へと入っていく。
そして俺も、しっかり観察役として仕事を果たそうと思いながら、二人と共に洞窟へと入っていく。




