第27話 観察役を見るということ
大変、お待たせしました。更新再開です……!
自分の槍が自分以外の力によって動かされている事に気付いたセシルは、恐る恐る槍から手を放した。
そしてアクセルの顔を見上げながら、震える声を発した。
「あ、あの、アクセルさん。い、今のは、一体……。アクセルさんが、私の槍を動かした、の?」
その問いかけに、アクセルはこちらに視線を落としながら頷いた。
「ああ。場所が狭くてな。輸送袋から替えの武器を出して投げるより、こっちの方が早くて確実だと判断してさ。、これ以上、怪我されるよりはいいかと思ってやらせて貰ったんだが……悪いな勝手に武器を使っちまって」
「い、いえ、武器を使うのは別に良いの、だけど……」
「そうか? なら良かった。じゃあ――もう数秒だけ、このまま使わせて貰うぞ?」
そうしてアクセルが言葉を止めた瞬間、
「ひゃっ!?」
目の前にある槍が、凄まじい速度で動いた。
そしてあっという間に、周辺にいたジャッカロープが砕かれていく。
……な、なに、この動きの速さ……?
それは一体一体を確実に、完膚なきまで、絶命させる打突の連射。
自分と同じ武器を使っているのにも拘らず、破壊力も速度も桁違いだった。
こんな激しい動作にこの武器が耐えられたのか、と使い慣れている筈の自分ですら思ってしまうほどに。
そして、そんな風に思っているのは自分だけではないらしく、
「な、なんだ、このとんでもない力と技術……」
自分たちの数メートル先で、ジョージが目を丸くしてこちらを見ていた。
「す、すげえ……マジで、見えねえ……」
吐息するように言葉を漏らしながら、膝を地面に付けた姿勢のまま、呆けたように眺めている。ただ、そんな彼に対して、
「おいおい、ぼーっとするなジョージ少年。そこで寝てる奴、まだ生きてるから」
「え?」
アクセルが声と共に、槍の穂先をジョージの近くに叩き込む。そこには彼が頭を砕いて倒したジャッカロープが転がっていたが、
「ギッ……!」
「なっ!?」
頭部を砕かれ絶命していた筈のジャッカロープは、槍の動きに反応して飛び上がった。そして、近くのジョージの足を鋭い爪で切り裂きにかかるが、
「ほらな。しぶとくて危ないんだ、こいつら」
それよりも早く、アクセルの槍は、ジャッカロープを両断した。
「な……え? こいつは確かに、頭蓋を砕いた筈なのに……?!」
驚きの声を上げるジョージに対して、アクセルは槍を動かしながら言葉をくれる。
「ジャッカロープは収納式の角を持っている関係で、頭蓋が分厚いからさ。多少砕いたくらいじゃ倒せないんだ。衝撃で気絶はするけど凶暴だから、目が覚めたら隙を見計らって、もう一回襲いに来るしな。さっきセシルが頭に槍を叩き込んだ奴も生きてて、俺を襲おうとしてきたし」
「そ、そんな事が……! あ、アクセルさん、怪我は!?」
「ああ、向こうでしっかりトドメを刺してきたし問題ない。知って、警戒していれば防げることだからな。こういった死んでも魔石にならない類の魔獣は、きっちり倒したか逃げた事を確認しないと危ないって。――そして、これで一旦、戦闘は終了だな」
「え……」
アクセルがふう、息を吐くとともに言った言葉に対し、セシルは一瞬、疑問を浮かべた後、その事実に気付いた。
「あ……も、もう全部、倒して、る……?」
「こんなに動き辛い場所で、喋りながらやったのか、この人は……」
このわずかな間に、アクセルは先ほどまで自分たちを囲んでいた魔獣たちを全て、倒していたのだった。




