第23話 輸送職の幅広さ
「アクセルさん。今日、冒険者たちがこの都市周辺にある魔獣発生源の調査をするんだけどね。アクセルさん達には幾人かの冒険者の観察役を頼みたいんだが、いいかい?」
酒場に降りた俺達が朝食を食べていると、食事をサーブして来たライラックからそんな言葉を伝えられた。
「えっと? それは昨日ちょろっと世間話で出た、依頼の話でいいのか?」
「ああ、そうだね。頼むかもって言っていた仕事だよ」
「そうなのか。でも……観察役って……運び屋の俺がやっていいのか?」
言葉的には到底運び屋の仕事には思えないのだけれども。
星の都でも経験したことが無いし、受けて良い依頼なんだろうか。そう思って尋ねると、
「問題ないわよアクセルさん。これも一つの輸送職の役目だからね」
酒場の奥にある扉からマリオンが出て来て、答えてきた。
「マリオンか。おはよう。君も早起きなんだな」
「まあね。今回の周辺調査には私も観察役として参加するから当然よ。準備も多少は必要だしね」
言いながらマリオンは御状箱を手に持って見せてくる。
彼女も観察役とやらの仕事をするようだ。
「その……調査の観察役って結局どんな仕事なんだ? 輸送職の役目って、ちょっと想像がつかないんだが」
「まあ、星の都で行ったサポート役の派生みたいなものよ。冒険者たちに同行しつつ彼らが見つけた情報や調査結果を迅速かつ無事に、ここまで運んで、持ち帰ってきて貰う、という仕事ね」
「あー……つまりは星の都では魔獣を倒しに行くスターライトに付いて行ったように、今回も冒険者に付いて行くのか」
「ええ。冒険者たちの身に危険が発生した時も、観察役がいてくれると対処しやすいからね」
マリオンはテーブルに着き、お茶を口にしながら俺に説明してくる。
「それと……最近はあんまりないんだけど、都市外部の冒険者の場合、情報や取得物をちょろまかそうとすることもあるから。それを防ぐ役割もあるわね」
「ちょろまかしってそんな事もあるのか」
「ええ。例えば魔獣は強大な魔力を持つ魔石に引き付けられる事もあって、それが異常発生に繋がったりするけど、その発生原因になりうる魔石をこっそり懐に入れて、換金する事も考えられるからね」
「ああ、それは駄目だな」
そんな俺たちのやり取りに付け足すようにして、お茶をサーブしていたライラックが声を上げる。
「マリオンの言う通りでね。大規模調査のわりに人手が足りないから、比較的新しい人員や外から来た連中も使わなきゃいけないんだけど、結構跳ねっ返りや心配な奴らが多くてね。どの子も、そこそこ優秀なんだが、ちょっとコントロールが難しいから、観察役を入れようと思ったんだよ。正確な情報は何よりも大事だからさ」
「なるほど……確かに大切な仕事だな」
「だろう? それで、アクセルさんや、バーゼリアさん。もしも良いのであれば魔術の勇者であるサキさんも協力して貰えればって思ったのさ。三人の強さも、私たちは良く知っているしね」
言いながらライラックは真剣な瞳になる。
「――それで、どうだろう? この都市を護る為に結構大事な調査で、報酬は勿論、釣り合うものを用意するけど……やって貰えるかい?」
力の篭った目だ。かなり気合が入っているらしい。
外部の冒険者まで使って行おうという事案で、相当人手不足だというのも分かっている。ならば、俺としても手伝うのにやぶさかではない。
「うん……運び屋でも出来るっていう仕事なら、やってみるのはアリだな」
これも良い経験になるし。
そう思いながら俺は横にいる二人にも聞いてみる。
「バーゼリアやサキもそれでいいか?」
「うん! むしろご主人と同じ仕事が出来るのは有り難い位だよ!」
「ええ、私もこの竜王に賛成するわけではありませんが、アクセルの決断に異議なしです」
「了解。――というわけで、ライラック。俺ら三人でやらせて貰うわ」
そう答えると、ライラックはホッとした様な息を吐きながら、嬉しそうに頬を緩めた。
「そうか……ありがとう、感謝するよアクセルさん……!」
「いやいや、感謝は仕事が済んでからでいいよ、ライラック。まだ受けただけだし」
「はは、それでもさ。アクセルさんたちがいると心強いのは本当だからさ。請けてくれただけでも感謝物なのさ」
言いながら、ライラックは緩んでいた自らの頬を軽くたたいた。
「よし……それじゃあ、改めてよろしく、アクセルさん。今回観察を頼む子たちは、もうすぐここに来る筈だから、それまで朝飯を食べるなり、今回の仕事に対する質問でもしておくれ」
「あ、観察役については、私もコツとか説明するから。何でも聞いてね」
「はいよ。了解だ」
そうして俺達は新しい仕事について軽く質問をしながら朝食を食べて良く。
観察役と言う新しい仕事に少しだけワクワクしながら。




