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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第二章

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第22話 運び屋の朝は早い

「おはようございます、アクセル」

「おはよう、ご主人!」


 早朝、俺が目覚めると、半裸のサキが俺のベッドの横に立っていた。

 同じく半裸のバーゼリアと四つ手で組み合っている状態で、だ。

 

「一応聞くが、二人して何をしている?」

「いえ、朝のアクセルの身体を眺めたい、と思って正々堂々、窓から部屋に入ったのですが、この竜王ハイドラが抑え込んできまして……」

「ご主人の部屋のお風呂を借りて朝風呂をしようと思って入ったら、リズノワールが服を脱いでベッドに迫ってる最中だったからね! 即座に止めるよね!」

「そうか。二人して詳しい説明を有難う。つまり……いつも通りか」


 見れば部屋の窓は開け放たれており、縁の部分に氷の道の様なモノが出来ているのが分かった。隣の部屋から、それを伝ってやって来たのだろう。

 竜騎士時代も偶にこういう事態が起きていたが、昔とやる事は殆ど変わっていないようだ。

 

「むう、折角、朝のアクセルから潜り込みの許可を頂こうと思ったのに……」

「許可を貰う前から脱ぐのはどうかと思うなあ、リズノワール……!」

 

 二人は、四つ手の組み合を解除しながらも、作った様な笑顔でお互いを見つめ合う。

 この光景も懐かしいなあ、と思いつつ、俺はベッドから降りて伸びをする。

 事情も聞いたところで、すっかり目も覚めた。

  

「よし、それじゃ、朝飯に行くから、二人とも服を着てくれー」


 いくら暖かいとはいえ、半裸のままで朝食の出る酒場に行く事は出来ない。だからそう言ったら、


「んー」


 サキがこちらに顔を向けて、両手をパッと広げた。


「なんだその姿勢」

「いえ、着せて頂けると嬉しいなと」

「子供か」

「子供ではありません。むしろ、アクセルの子供なら何時でも産めるくらいには大人です! ええ、子供が欲しいのであればいつもで言って頂ければ。それと今回はその予行練習という感じで、どうでしょう!」

「どうでしょうって言いながら迫って来るんじゃない。……全く、そのまま両手を上げててくれよ」

 

 俺は床に落ちたサキの服を拾って彼女に着させていく。


「ふふ……なんだか昔、弱かった頃に面倒を見て貰った時を思い出すというか、やっぱりアクセルは優しいですね。有り難う御座います」


 すると、彼女はほんのりと顔を赤らめて嬉しそうに微笑んだ。

 彼女も昔を思い出しているようだ、とそんな風に思っていたら、


「ず、ズルい! ボクも、ボクも!」


 横でバーゼリアが自分の服を手にして、アピールしてきた。

 

「自分で着れるだろうに。サキの影響を受けすぎだぞ、バーゼリア」


 言いながら俺はバーゼリアにも服を着せていく。

 そうすると、バーゼリアも満足そうな笑みを浮かべた。


「えへへー。でもやってくれるご主人、大好き!」

「着せる位は良いけど、細かい部分は自分で調整してくれよ」

「はーい」


 起きてから微妙に手間が掛かったが、二人とも着衣完了だ。

 これで問題なく、一階の酒場まで降りられるだろう。

 

「それじゃ、行くぞー」

「はい。しかし今更ですが、今日の朝食の時間は結構早めなんですね」

「まあな。昨日、ライラックがもしかしたら仕事を頼むかもって言っていてな。その件も聞きたいから、ちょっと早めに行っておこうと思ったんだ」

「アクセルにお仕事、ですか? それは、どんな依頼です?」

「いや、そこまでは知らないんだ。昨日、寝る前に酒を飲んでいた時にした世間話だからな」


 ライラックは今、冒険者連中やギルドの戦闘系職員やらを集めているらしい。その流れで俺に依頼をするかも、という話になったのだ。

 

「あくまで仮定だけど、明朝には頼むかどうか決めるって言われたんでな。この朝のうちに聞こうと思ったんだ」

「りょーかいしたよご主人ー。どんなお仕事でも、ご主人のお手伝い、今日もいっぱい頑張るよ!」

「分かりました、アクセル。では私は全力で協力させて貰いますね」


 そんな感じで朝から張り合うように声を上げる少女二人を連れて、俺はライラックがいるであろう酒場へ向かっていくのであった。


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