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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第二章

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第21話 side ヴィルヘルム 驚きと協力



 その日の夜。


「あの運び屋の兄さん、マジで勇者アクセルなんだな……」


 海賊の宿屋奥の一室でヴィルヘルムは、ライラックにそんな言葉を告げていた。


「あら、聞いたのかい、ヴィルヘルム」

「ああ。数時間前、ギルドに挨拶してくれた帰り際にな。何となしに、『もしかして運び屋の兄さんって、昔勇者をやってなかったかい?』って聞いたら、さらっと『おう、やってたぞ』とか言われてな」


 ヴィルヘルムは自分の手足に、今でも鳥肌が立っているのを見た。

 それくらい衝撃的だったのだ。

 

 信じ難い事実を、信じられない程あっさり告げられた事実も含めて。

  目の前のテーブルに突っ伏しながら、ふう、とヴィルヘルムは深く息を吐く。

 

「マジでビビった。でも、あの力と速度を見せつけられたのならば、頷かざるをえねえんだよなあ」

「はは、そうだねえ。アタシも話を聞いただけじゃ、信じられなかったけどさ。でも、やっぱり本人みたいだからね。運び屋になったのは、まあ、何らかの事情があったみたいだけどさ」

「そりゃそうだろ。でなきゃ初級職になんてならないっての。かの英雄が、そこら辺のギルドで使いっぱしりにされ兼ねない職に就いているだなんて、よ……」


 運び屋を甘く見ている訳ではないが、そういう立場であることが多い。

 そんな立場に英雄がいるだなんて、普通は考えない。さらに言えば、そんな英雄から立場に甘んじながらも、あんなに活き活きと出来るなんて、想像もできない。

 

「あの人が付けていた指輪には、商業ギルドと輸送ギルドの信用刻印もされていたし。運び屋の身でそれだけの信用を勝ち取るだなんて、相当の事をしたんだろうなあ……」

「だろうねえ。聞いた話じゃ、古龍を狩ったそうだよ? 運び屋の状態でね」

「古龍を? ……マジか……?」


 ヴィルヘルムは古龍と言う存在を知っている。

 魔王大戦に関わった人間ならば、その力は身体に染み込まされている。


 街一つを軽々と破壊するあの化物を狩れるのは、英雄や勇者クラスだけだ。それを運び屋という初級職でこなすのは、幾らもともと勇者であるアクセルでも……と思ったのだが


「本当よ、ヴィルヘルムさん。私が、現場をこの目で見ているからね」


 その疑問を抱くと同時に、声が響いた。

 声の主は、たった今部屋に入ってきた青い髪の少女で、


「アンタは星の都の……【サジタリウス】のマリオンか」

「ええ、ご無沙汰しているわヴィルヘルムさん。数カ月ぶりね。今日は丁度こっちに来たから12ギルドの会議に参加させて貰うわ」

「お、おお。了解したが……しかし、現場をってことは、星の都に古龍が来たのか」

「まだ正確な情報はこっちまで来てないのね……。ともあれ、ヴィルヘルムさんの想像通りよ。アクセルさんの活躍でどうにか古龍は倒されて、損害は少なく済んだのだけれどね」

「なるほど……な。そりゃあ、アンタらが信用をするはずだよ」


 どうやってかは不明だが、古龍の討伐が事実らしいし。

 そう思うと、なおさら鳥肌が立ってくるが、仕方がない。それ程の事だ。

 

 ヴィルヘルムはざわつく心をどうにか抑え込みながら精神を落ち着けていく。

 

「ふう、本題に入る前に良い話を聞けたぜ」

「それは良かったわ。で、本題って、今日の会議は何を話すのかしら?」

「ああ、それはアタシも聞きたかった。随分と急に呼びつけて、なんかあったのかい?」


 女性陣二人からの問いに、ヴィルヘルムはまず、一枚の紙を突き出した。

 それを見て、まずライラックが眉をひそめた。

 

「……今月の船舶事故報告のまとめか。先月に比べて今月の事故件数は五割増しって、多くないかい? 不注意が多いって言われても、それで片付けたくないレベルなんだけど」


 彼女の言葉に、ヴィルヘルムも頷く。


「事故の規模に差はあるが、流石にこれはおかしいんでな。この前の、俺っち達の新型船で調べたところ、奇妙な岩礁が出来ているっぽいんだよな」

「岩礁? この近海にかい? 港を作る時に、危険な岩は全部排除したはずだけど」


 ライラックの言葉通り、水の都市・シルベスタが出来る際、港周辺の危険な岩礁は全て削ったとの歴史がある。とはいえ、


「戦争の被害で変わった可能性もある。もうちょっと詳しい調査が必須でな。それで、他のギルドに協力を仰ごうと思ってな。協力、願えるか?」


 ヴィルヘルムの問いかけに、まずライラックが応じて口を開いてくる。


「ふむ……調査ねえ。まあ、アタシのトコでも調査員はいるからやれるっちゃやれるが……かなり人手がいるね。近海には魔獣も出るわけでさ」

「ああ、だからこそ、だ。俺っちの所は割と手いっぱいで、そこまで余裕がない。可能であれば、サジタリウスのマリオンにも手伝って貰いたい位でな。報酬は勿論こちら持ちで……どうだろうか?」


 輸送ギルドのトップを張っている彼女は、情報収集に置いても優秀である。それはギルド会議を介して何度もやり合っている事から分かっている。だからこそ頼んだ。すると、

 

「そう、ね。まあ、折角ここにいるんだから、星の都に帰る前に手伝わせて貰うわ。……大活躍しているアクセルさんの同業者として、奮起しなきゃって思ってたところだしね」


 微笑しながらマリオンは頷いた。

 どうやら交渉は成立したようだ、とヴィルヘルムは少しだけ息を吐く。


「それじゃあ、調査は明朝から開始ということで。やっていくぞ」

「あいよ。海だけでは無くて、周辺の土地の変化も含めて調査しようじゃないか」

「ええ。戦争の影響でどこが変わったのか、ここで一気に調べましょう」


 そうして三人は各々で動き出していく。


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