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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第二章

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第1話 まったり旅でも運び屋の仕事はしっかりと

 星の都を旅立った俺は、朝から数時間、一定のペースで草原の中にある街道を歩いていた。

 隣にはバーゼリアがいて、彼女は気持ちよさそうに深呼吸をしていた。 

 

「うーん。空を飛べば早いけれど、こうして新鮮な空気を吸いながら歩くのも良いねえ、ご主人」

「まあ、偶にはな。マリオンとドルトのおっさんもこのくらいの速度で大丈夫か?」


 運び屋としての仕事は何度かこなしてきたがペース配分はその時々に合わせなければ。

 そう思って、俺はバーゼリアの反対側で同じように歩く、上級輸送職の女性マリオンと、初老のドルトに聞いてみた。すると、

 

「ええ。ただの歩きというには少し早いけれど、私は平気よ。この位の道なら慣れているしね」

「ワシもだ。初老に差し掛かっているとはいえ、まだまだ体力はあるのでな。問題は無い! アクセルくんのペースメークはばっちりだぞ」

「そうか。それは良かったよ」


 二人とも少し汗は掻いているけれども元気よく返事をくれた。

 最初っから急ぎ過ぎても良くないという事で、同じペースで来たのは正解だったようだ。

 魔物の襲撃も殆どなくここまで来れたのもあって、非常に順調な道程だな、と地図を見ながら思う。

 水の都まではこの草原と小さな山を越えれば付くけれど、今晩は途中の宿場町で一泊する予定だ。

 

 その宿場町は草原を抜けた先にあり、歩いた距離を考えると、宿場町まで残り半分と言った所か。となると、

  

「ここらで一旦休憩を入れておくのも良さそうだな」

「え? 私たちはまだまだ動けるから、そんなに気遣わなくても平気よ、アクセルさん」

「ああ、まあ、体力的には大丈夫だろうけれどさ。ちょうど昼飯時だし、軽く休んだ方が良いと思うんだ」


 俺は輸送袋の中に入っていた懐中時計を見せながら言う。すると、バーゼリアたちは同意してくれたようで、

 

「もうお昼なんだねえ。道理でお腹か空いたと思ったよー」

「……そうね。何だかんだここまで歩き通しちゃったし。体力的には平気だけど、栄養補給はしたいわね」

「そうだな。腹が減りっぱなしで動いても良い事はないからな」


 というわけで、三人からも同意を得た俺は、街道の近くにある木陰で昼飯の準備を始める事にした。

 俺は背負っていた輸送袋をひっくり返す。

 すると中から、燃えた樹木を重ねた焚き火が落ちてきた。

 

 その火の上に、更に輸送袋から取り出した鍋を乗せて加熱していく。

 

「うーん、何度見ても、アクセルさんの輸送袋は便利そうね。炎や冷気をそのまま保管出来て、その上簡単に取り出せるなんて」

 

 そんな俺の調理風景を見ながら、ほうとマリオンは吐息する。


「初級職のスキルは優秀だけれど、アクセルさんのは特段凄いわね……」

「まあ、いい感じにスキルが揃ってくれたからな。有り難く使わせて貰っているよ」


 と、喋りながら、俺は鍋の上に生肉や野菜、パンを一気に並べていく。

 今回の食料は、旅立ちの際にドルトから提供を受けたものだが、どれもが新鮮なままだ。これも輸送袋の機能の一つである。

 

「旅先で馬車や保存設備も持ってきてない状態だというのに、こんな調理を見れるとは。商業ギルドから見ても、アクセル君のは法外な性能をしているなあ……」

「そうねえ。旅では基本的に保存食にお世話になる事も多いし。こんな新鮮で冷たい水も飲めるのも、本当に凄いわ」


 そんな声を受けながら、俺は焼いた肉を輸送袋から取り出した更に乗せ、三人にサーブしようとした、その時。

 

「ねえねえ、ご主人。気づいている?」

「ああ、魔獣の気配があるな」

「うん。というか、もう見えるね」


 バーゼリアが微笑みつつも、鋭い目で周囲を見ながらそう言った。

 

 周囲の草原に隠れるようにして立っているのは、草色の身体を持った二足で立つ豚顔の魔獣。ウィードトロルだ。それが複数いて、囲まれている、

 

 更に、一体一体が弓矢や棍棒で武装しているようにも見えた。

 

 それに気づいているのは俺達だけではない。マリオンやドルトも当然の様な顔で、魔獣を見ていた。

 

「ううむ、何かが来ているとは分かっていたが、まさか魔獣とはなあ。しかも、徒党を組んで狩りをする程度には頭のいい、ウィードトロル共とは。中級冒険者でも苦労する連中だぞ」

「頭が良いから襲って来たのかもね。今の私たちは、結構侮られるパーティーだし」


 マリオンの言葉に、俺は首を傾げる。

 

「うん? 侮るって、どういうことだ?」

「客観的に見ると、私たちは輸送職が二人と初老の商人が一人、あと何の装備もしてない女性が一人っていう状況でしょ? 匂いに引かれてやって来て、護衛もいないから、襲うと決めたって感じかしらって。それくらいの頭は回る魔獣だしね」

「なるほど。安全な旅をするためには、見た目にも気を付けた方がいいんだなあ」


 そんな事を言っている内に、ウィードトロルは寄って来ていた。


「ぬう、この数と戦闘は骨が折れるな……。ワシの体力的にも面倒が多そうだ」

「そうねえ。しかも武装状態だから、面倒そうだわ


 などとぼやきながら、ドルトとマリオンはそれぞれの武器を構え始めた。

 依頼者が戦うのであれば、自分も動こう。


「ああ、じゃあ、俺もサポートするわ。バーゼリアも警戒頼む」

「はーい。火の番をしつつ、こっちに来ないように、睨みを効かせておくね」


 俺は鉄鍋を置いて立ち上がる。


 今回、俺が受けた依頼は、物資を水の都へ運ぶこと。そしてドルトとマリオンの二人をこの先の街まで運ぶのと、戦闘のサポート役もするというものだ。

 だから、戦闘はしっかりサポートしないと、と輸送袋から一本の剣を取り出していると、

 

「ウ……ギイ!」


 バーゼリアが睨みを効かせる方向の反対側。その草むらに隠れていたウィードトロルが弓矢を放ってきた。

 だが、俺はその存在に気付いている。

 ちょうど俺の胴体を狙っての一矢が来るのも分かった。だから、

 

「よし。それ頂き」


 俺は輸送袋の口を開いて、金属の矢じりが付いた矢を勢いそのままに入れた。

 

「!?」


 その行為に矢を放ってきたウィードトロルは目を見開いて驚く。

 投げモノを使ったのなら、受け取らてしまう可能性も考慮しておくべきだ、と思いながら、


「思いっきり、返すぞ……!!」

 

 俺は輸送袋を全力で振り抜いた。

 瞬間、先ほど輸送袋に入った矢が轟音と共に放たれる。

 

 来た時の速度の何倍もの加速を受けて放たれた方向に帰っていき、

 

 ――パアン。

 

 弓矢を持っていたウィードトロルの頭が弾けた。

 ただ、被害が出たのは一体だけではない。

 弓矢を持っていた者の頭部を貫通し、その背後にいた二体の身体も爆発するように弾き飛ばされた。

 

 あとに残るのは、三体ウィードトロルの残骸と魔石のみ。 

 思った以上に速度が追加されて、ダメージも加算されたようだ。

 

「……ピ、ピギ……!……?」


 その光景を見て、ウィードトロル共は後ずさる。更に、

 

「さて、次はどうしようか」


 俺が剣を輸送袋からずるりと引き出した瞬間、

 

「ピギイイイイイイ――!!」


 悲鳴を上げて、一目散に逃げ去って行った。


「おお。ちょっとした援護をするだけで済んで良かった」

 

 強い魔獣はそこそこの知能があるから厄介ではある。今回のように徒党を組んで、弱い奴を襲うという知恵を付けられると色々と困る。けれども、

 

 ……何匹かを倒せば状況不利を悟って逃げ帰るから一長一短だよなあ。

  

 などと思っていると、


「あ、相変わらず、アクセルさんはとんでもない腕力と動体視力をしているわね……」

「う、うむう、矢をキャッチして投げ返すだけでその威力だとは。《運び屋】のサポートというレベルで収まらない戦闘能力だな……。本来は戦うべきワシらの出番が丸ごと消えてしまった」


 武器を手にした状態で口をあんぐりと開けて、マリオンとドルトが言ってくる。


「もともと竜騎士で、現在も龍を倒すほどの戦闘力があると考えると、さもありなんという所ではあるが……やはり改めて見るとビックリするな」

「ええ。私もアクセルさんの戦闘は間近で何回か見た事があるけれど、そのたびに凄まじいという感想しか出ない――っと、言い忘れていたわ。ありがとう、アクセルさん!」

「あ、ああ、そうだな! こんなにも早く、体力も使わずに解決できて助かったよ、アクセル君」


 二人は声をそろえるようにして礼を言ってくる。

 

「気にしないでくれ。これも運び屋の仕事の一環なんだからな。――んじゃまあ、とりあえず、メシの続きにしようぜ」


 そうして、俺たちの旅路はまったりと続いていくのだった。

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