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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第二章

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プロローグ 1 side ファング 追う勇者 

 星の都を古龍が襲撃してから数日が経った、ある日の夕方。

 街の中央部にはフードを被ったファングがいた。

 

「古龍襲撃の件で見に来たけど、もうほとんど直ってるみたいだなあ」

 

 ファングは再建されつつある街並みを視察しながら、ポツリと呟く。

 弱った所を賢しい魔獣共に狙われて、大事なっていたら大変だと、戦闘装備を見繕って来たけれど、これだけ活気にあふれていれば不要のようだ。

 

 ……商業ギルドの方にも協力が必要か聞いたら、笑って大丈夫と答えられたし。大事が無くて良かった。


 そう思いながら向かうのはアクセルの自宅だ。というのも、ファングの下に、古龍襲撃を解決したのはアクセルだという報告があったからだ。

  

「超短時間で事態が収拾できたのは、《空飛ぶ運び屋》のアクセル・グランツのお陰……って報告が来た時は噴き出しましたが。いやはや、職業が変わっても本当に凄い人だ……」


 まさか王都に古龍襲撃の報告が入って来て、自分が向かおうと準備している時に解決した、なんて連絡が入ってくるとは思わなかった。

 などと思い出しの苦笑をしつつ、ファングはアクセルの家の前にたどり着く。

 今日は礼として、王都の最上の酒を持って来ていた。

 

 喜んでくれるといいが、とアクセルの反応に期待しながら


「こんばんわー。 アクセルさんー!」


 ファングはアクセルの自宅のドアを叩いた。

 しかし、反応が無い。


「……あれ?」


 家の中に気配はあるのだけれども、出てこない。


 聞いた話では空飛ぶ運び屋という二つ名を持つほど活躍しているそうだし、中で作業中なのだろうか、と思っていると、


「あの……どうかなされましたか?」


 一人の女性が扉を開けて、出てきた。


「ええと? 失礼ですが、貴方はどちら様で?」


 見知らぬ顔だ。とはいえ、泥棒のような害意は感じない。なので、静かに尋ねると、彼女はオドオドとしつつもしっかりとした口調で、


「わ、私は輸送ギルド、サジタリウスのコハク……です。アクセル君のお仕事に協力させて貰っている者、です。その協力の一環で、彼がお仕事でいない間、この家の管理をやっているのです」


 コハクと名乗った彼女のセリフに、ファングは聞き覚えのある単語を見つけた。それは、


「おお。あの王導十二ギルド、《輸送のサジタリウス》の方でしたか」

「ご存じなのですか?」

「当然です。職業柄、この国の重要なギルドはあらかた勉強しましたから」


 勇者時代はあまり気にしている余裕は無かったが、軍事顧問をやるようになってから、この国について、かなり詳しくなった。当然ながら、街を守る役割をもつ王導十二ギルドについての知識もしっかり入れてある。


「……しかし、なるほど。流石はアクセルさんだ。輸送専門ギルドは少ないというのに、その中でも最も素晴らしい所と繋がりを持っているだなんて」

「い、いえいえ、アクセル君にはこちらこそ助けられてばかりでして。本当に……初級職だとは思えない程の活躍をして頂きましたから。この街も彼のお陰で救われましたし。この家の管理を申し出たのも、その恩返しという形でして」


 コハクの言葉に、やはり報告に間違いは無かったのだな、とファングは確信する。

 やはり初級職になっても、あの人はあの人だなあ、と思っていると、


「……ところで、貴方はアクセル君とはどういうご関係で?」


 今度はそんな問いが来た。何となく話し込んでしまったが、確かにこちらの素性は何も明かしていなかった。


「すみません。申し遅れましたね。……オレは昔、勇者としてアクセルさんの戦友をやってたファングって言います」


 ファングはフードを脱ぎながら答えた。すると、彼女は口をあんぐりと開けて、

 

「そ、そのお顔と名前というと、せ、聖剣の勇者様ですか……?!」


 驚きつつ、確認するように問うてきた。


「おや、そちらもオレの事はご存知なんですか?」

「も、勿論です。勇者様のお名前は公開されていますし、一部の方以外は、お顔も何度か見させて貰ったので」

「あはは……まあ、オレは露出もそこそこあった方ですからね。知って頂いて光栄です。本当は、自分なんかよりアクセルさんの方が目立って然るべきだと思うのですがね。……まあ、それはともかく、アクセルさんはどちらに? 先ほどは、仕事で家を空けていると仰ってましたが、この辺りにはいないので?」


 今、大事なのは自分の事よりもアクセルの所在についてだ。だから直球で訪ねてみると、コハクは小さく頷いた。


「はい。アクセル君は仕事で、水の都・シルベスタへ旅立ちまして。しばらく戻ってこないとの事ですよ」

「なんですと!?」


 言葉を聞いた瞬間、今度はファングが目を見開いて、声を大きくした。

 

「ど、どうかなされたのですか?」

「み、水の都……? 本当に、そこに行かれたのですか?」

「え、ええ。間違いなく、向かいました。もう数日前に事になりますが……何かいけない事でも?」


 コハクの声にファングは数秒、どう答えるべきか迷った後、

 

「いけない事では無いのですがね。水の都には今、彼女が――【魔術】の勇者がいて、ちょっとした騒ぎになっているんです。それで大丈夫かなあ、と」


 ファングは思い出す。

 魔術の勇者である彼女は、自分以上に《竜騎士》のアクセルに対して執着していた、と。


 ……うん。何の問題も起きないとは思うけれど、念のため、オレも走って向かおうかな。

 

 居場所も分かった事で、酒も届けたいし。自分の足ではアクセルに追いつかないだろうけれど、とりあえず行くだけ行こう。

 そう思ったファングは、コハクに礼をしたあと、星の都を出立していくのだった。

続きは明日に

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