第27話 気のいい星の光の戦士たち
俺がドルトと共に北門に行くと、そこには既に、ポーションなどの物資が入れられているという木箱と、武器の山が積まれていた。
「あれを輸送袋に入れて、順次使って行けばいいんだな」
「うむ。依頼書の二枚目にある物資リスト通り、食料から武装まで万端に用意してある。必要になった時に、そちらの判断で使って欲しい」
「オーケー。分かった」
「因みに足りない物はあるかね?」
俺は依頼書の二枚目をめくる。
出発前も物資の詳細を確認したが、改めてのチェックだ。
「体力・魔力ポーションもあるし。武器や食料の量も問題はなさそうだ」
「うむ。良かった。ではこのまま行くとしよう。……既に、あそこに今回のパーティーメンバーもいるしな」
見れば山積みされた物資の横には、5人の男女が立っていた。そして、
「あ、サブマスター。待ってたぜ」
その中で特に体格が良い、禿頭の若い男が手を振って来た。
傷だらけの鎧を着こんで大剣を背負った、戦士風の男だ。
「彼らは魔獣討伐部隊として動いていく戦闘職でな。ウチでも特段優秀で『スターライト』と呼ばれているパーティーなのだ」
「説明有難うよサブマスター。というわけで、オレが『スターライト』リーダーのジークだ。《大剣戦士》をやってる。この頭を目印に覚えてくれよな」
ジークと名乗った禿頭の男は太陽光で輝く頭を見せながら、ニカっと笑みを浮かべて来る。更に続けて、周囲にいるスターライトの面々を見て、
「それで、こっちがスターライトの仲間達だ。オレみたいに光ってはいないが、それぞれ職業も装備も違うから覚えやすいと思うぜ」
そのまま《上級魔女》や《上位罠師》などのメンバーを紹介してくれた。
「ご丁寧にどうも。俺は《運び屋》のアクセルだ。で、こっちが相棒のバーゼリア」
「よろしくー」
「ああ、話はサブマスターの方から聞いてるぜ。宜しくな、空飛ぶ運び屋のアクセルさん」
俺たちの挨拶に笑みを保ったまま応えてきたジークは、その後で、不思議そうな表情で俺が背にしている輸送袋を見た。
「……というか、その袋を見ると、本当に《運び屋》で良いんだよな、アクセルさん」
「そうだけど? 何かおかしなところでもあるのか?」
「いや、オレはアンタが空を飛ぶように移動している所を見た事があるんだよ。戦闘能力についてもサブマスターから聞いてる。で、総合的に判断したら、初級職ってのはおかしいからさ。実は輸送系の上級職かと思っていたんだ」
「生憎と、正真正銘、初級職の運び屋だ。やっぱり運び屋がこの仕事をするのは不安かい?」
聞くと、ジークは即座に首を横に振った。
「うんにゃ、そんなことはねえさ。オレたちゃサブマスターの目は信じているし、何よりアンタの動きも、オレの目で見ているから信じられる。この街に住んでいる者なら、その素早さと身軽さは知っているし、信用はしているさ」
どうやら、街での活動により俺の姿は意外と知られているようで。
そこそこの評価は貰っていたようだ。
研修替わりとはいえ、地道に依頼をこなしてきて本当に良かった。
「有難うよ。ただ、この仕事は初めてなんでな。頼りにさせて貰う事になって悪いが、よろしく頼む」
「悪いだなんて思う必要はねえ。これでも新人のサポート役を連れて依頼をこなすのは、何度かやって来たんだし。――なあ、皆」
ジークは振り返りながら、スターライトのメンバーに言葉を飛ばした。
すると、周囲にいたスターダストメンバーもこくこくと頷いて、俺に声を掛けて来る。
「勿論、心配すること何てことないわ。運び屋さんもこういう仕事は初めてだって話だけど、私たちがしっかり守るから安心してね」
「おっす。俺っち達も油断はしないっすけど、ドンと大船に乗った気持ちでいてくださいっす、運び屋の旦那」
「ただ、オレたちも道具やポーション、装備の補充はアクセルさんに任せてるからな。そこそこ手早く頼むぜ」
スターライトの面々は、脇に置かれた物資に目をやりながらそんな事を言ってくる。
……うーん、何だか気持ちのいい人らだな。
表情も声色も明るく、とても気さくに接してくれる。
良い雰囲気のパーティーのようだ。
「了解だジーク。全力でやらせて貰うわ」
「ああ!」
そして俺はジーク達とがっちり握手を交わす。
これは確かに仕事もやりやすそうである。
そんな思いを抱きながら、俺達は街を出発する事になった。




