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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第一章

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第25話 使える機能の確認作業

 その日の夜中、俺はバーゼリアと共に、一階のリビングで過去輸送スキルの性能を試していた。

 一昨日から行っている事だ。過去輸送に関してはまだまだ分からないことが多い。

 お遊びで使う分には不明瞭な部分が多くても良いが、仕事で使うのならば、確かめておいた方が良いだろう。

 そんな思いでここ数日は実験を続けていた。

 そして今日も俺は中身をすっからかんにした輸送袋に触れながら、

 

「ええと、まずは【視力強化】と」


 かつて使っていたスキルを頭に思い浮かべる。

 すると、明らかに視界が広がり、隅々までが良く見えるようになった。

 それはもう、埃が殆ど無いくらい掃除されているのが分かるほどに。

 

「綺麗になってるな、このリビング」

「えへへ、ボクがしっかり掃除したからね。床の拭き掃除も完璧だよ」


 リビングのソファに座って俺の実験を眺めているバーゼリアは胸を張りながら言ってくる。


「まあ、掃除をしっかりしてくれるのは有り難いんだが、床にでかでかと拭き掃除の水跡で『ご主人大好き』と書かれているのは何だ……」

「わ、わあ、ちゃんと乾拭きして消したのに! というか、ご主人の視力強化ってそこまで見えたっけ!?」


 バーゼリアは慌てながら話を逸らしてくる。

 慌てている彼女も可愛いが、こんな夜中に困らせるのもなんだし、俺も話を切り替えに付き合おう。

 

「どうだろうな。兜を外して使ったのは初めてだし、単純に視野が広がった効果かもしれん」


 今までは竜騎士のスキルはあの兜が絶対に付いて回っていたわけで。そう言う意味では新鮮な気分で使えているな、と思いながら、俺は実験を再開する。

 

「次は【ジャンプ強化】だな」


 視力を強化した上に、更に過去のスキルを輸送してみた。

 すると、足元にふわふわとした力が宿り、体が一気に軽くなる。その状態で軽く、つま先だけの力で跳躍すると、

 

「――っと、うん。ジャンプ力が上がってるな」

 

 一階の吹き抜け内を飛んだ俺の身体は、二階の天井付近まで持っていかれていた。

 

「わあ。予備動作なしでそこまで飛べるって、ご主人、昔よりもジャンプ力が上がってない?」

「どうだろうな。久々過ぎて感覚が分からんだけかもしれない。あと兜が重かった可能性もある。――まあ、次に行くか」

 

 俺はつま先ジャンプを続けつつ、更にスキルを輸送してみた。

 

「【聴力強化】」


 これまた竜騎士のパッシブスキルだ。 

 室内で安全に使えるものとして選んでみたわけだが、

 

「どう、ご主人?」


 一階地点からぼそっと話されたバーゼリアの声が、天條間近にいる時でも、しっかり聞こえた。

 そして家の外、星の都のざわめきも一気に聞こえ出してきた。

 

「強化、されてるみたいだな。代わりに視力強化はなくなったが」


 床を見れば、先ほどまで見えていた掃除あとが見えなくなっていた。

 つまり、聴力強化が成立した為、視力強化が消えたのだろう、と俺はジャンプから着地しながら思う。

 

 ……とりあえず、これまでの実験で細かな条件は大分判明したな。

 

 過去輸送は輸送袋の中に容量がある状態でしか使用できないが、その代わり、過去スキルは二つまで引き出せた。その上、二つ目以上は任意のスキルに上書きされるという機能も付いていた。

 

 先ほども視力強化の代わりに聴力強化をすると念じたら、その通りになったし。

 

「運び屋をやりながら竜騎士スキルを使う時は一つのみになる訳だから、便利な物に次々切り替えていくって手法になりそうだな。切り替える順序は考えなきゃいけないみたいだが」

「そうだねえ。しかもボクから見るに、ご主人のスキルの効果、強くなっているみたいだし」


 バーゼリアの言葉に、俺は目を瞑って首を傾げる。


「能力が強まっているか……。どうなんだろうな。スキルがパワーアップしているって感覚は無いんだが」


 ただ、実感として、効果が上がっている感じはあるのだ。

 頭がサッパリした状態で使うと、入ってくる情報量が増えている気もしてくる。

 つまりそれは、こちらの動きを非常に妨げてくるあの兜を被っていないからという可能性が大きかったりするのだが、

 

「あの竜騎士王の兜って、結構強い防護力を誇っていたんだけどな。まさかスキルの力を低下させる、なんて特殊効果、ついてないよな……」

「あ、あはは……そんなまさか……」

「だよな。ある訳ないよな」

 

 あったとしたら、本当に長い間あの兜に呪われてきたようなものになるので、とても悲しい事になるぞ、なんて思っていたら、

 

「――……ォ……ォ……」


 耳の奥に張り付く、声の様な音が聞こえた。家の外からだ。


「うん? 今、奇妙な声が聞こえなかったか? 呻きみたいな感じの」

「え? そう? ボクは何にも聞こえなかったけど……」


 バーゼリアに問うても首を傾げるだけだった。

 

「もしかして、聴覚強化で普段聞こえない音も拾ってるのかね、これ。魔獣や魔物の中には、人には聞こえない音を出すっていうけれど」

「あー、竜の言語とかもそうだね。竜状態でボクが竜語で自分の名前を言うと高音過ぎて、聞き取れない、とかあるし」

「なるほど……兜を被っていた頃は、こんな音を聞いた覚えがないんだが」

「ご主人、本当にあの兜に呪われていたんじゃないの? いや、あれのお陰でボクはご主人と出会えたから、悪く言いたくはないけど」

「俺としても貴重な経験をくれたものだから、存在を否定したいわけじゃないんだけどな……」

 

 こうして優れたパッシブスキルの効果を実感できるのも、あの兜を身に着けて竜騎士として動き回ったからだし。それに、今は付けていないので、問題は無い。そう思う事にしておこう。

 

「まあ、結構分かった事も多かったし。今日はもうちょっとだけ実験を続けてから寝るか」

「うん! ボクもラストまで付き合うよ、ご主人!」


 そうして、俺達は輸送袋の機能をしっかり確かめた後、眠りにつくのであった。

 

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