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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第一章

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第21話 一段上のお仕事

 ドルトとの茶会のあと、俺はギルド・サジタリウスに訪れていた。


 今日からは初心者用の依頼ではなく、輸送職専門として、もっと難しめの依頼をこなしていくという予定らしい。

 どんな仕事があるのかは分からないが、

 

「気を引き締めていくか、バーゼリア」

「ご主人なら少しくらい緩めてもいいと思うんだけどね。でもまあ、本気のご主人の顔が好きだから、程よく緊張して頑張るよ!」


 そんな意気込みと共に、今日も俺達は、マリオンらが持ってきた講習用の依頼を選ぶことになったのだが、

 

「……なんだか今回のは、《魔物襲撃の恐れアリ》とついた依頼ばっかりだな」


 持ってこられた依頼書の大体に、赤い文字で『戦闘の危険アリ!』や『難易度10・推奨レベル10以上』などと、そんな注意書きがあった。

 さらに言えば、場所も街の中心部から離れた郊外や、風の都など別都市に向かうモノも増えているような気がした。


「難易度の上昇に従って、輸送地点の拡大と危険度が増していくのか、これ」


 俺の感想にマリオンは肯定の頷きを返して来る。

 

「そうね。それが難易度が上昇した依頼として代表的なものだから。まあ、そもそもこの星の都の立地的に、街の郊外や近隣施設に出ようとすると、魔物や魔獣襲撃の可能性は大きくなるんだけれども」

「ああ、それはそうだな。この辺は意外と、『始原生林』に近いから仕方がない」


 星の都という都市が属するこの国は、未開拓地域――魔獣や魔物の住処である『始原生林』と隣接している。そしてこの都はそういった地域と割と距離が近かったりする。


「ええ、街の中は比較的安全な仕事が多いけれど、外に出る仕事は少し感覚が違うからね。特に難易度が跳ね上がるのは、この周辺だと、魔獣の住処である未開拓地域に近づく仕事、誰が作ったのか分からない百層以上続くダンジョンの深部に入る仕事かしらね。流石に、今回の依頼の中に、そういう物は無いけど」

「この街も、意外と危険な所にあるよなあ」

「ええ。でも、そのお陰で資源はたっぷり手に入っているし、お金も回っていて街も発展しているからね。住むところを間違えなければ危険も少ないし、良い街よ」

「それは同感だな。お陰で飯も素材も美味いしな」


 魔獣や魔物は心臓部に魔力をため込んだ魔石を持つ。彼らが死ぬとその魔石は大地に転がり、ため込んだ魔力を土地にばらまく。

 その為、原生林に程よく近いこの街の周辺には、肥沃な大地が広がっていたりする。


「まあ、ともあれ、よ。今回の仕事でどこを選ぶにせよ難易度は上がるからね。今日は私も同行するわ」

「え、マリオンが?」

「そうよ。アクセルさんは前職が戦闘職だっていうし、戦闘も苦手じゃないだろうけれど。でも、輸送職の依頼をこなしながら戦闘をするっていうのは、あまり経験が無いでしょう?」

「……ああ。確かにそうだな」


 経験と言えるものは、輸送職になって初日に色々と動いたくらいだ。この仕事になってからまともに依頼を受けて、魔物や魔獣と戦ったことは少ない。


「だから、私が付いて行こうと思うの。だから、この一回は気楽にやっていければいいと思うわ」


 マリオンはその豊満な胸に手を当てながら言ってくる。その気持ちはとても有り難い。有り難いけれど、


「なんだか毎度毎度気を遣って貰っているけれど、本当に良いのか? マリオンだってやる事があったりするだろうに」


 そう言うと、マリオンはやんわりと微笑みを返して来る。


「ふふ、別に気遣ってないわ。これは私が楽しいからやっているだけだし、私は私でしっかり自分の仕事を出来ているしね」

「え? でも、俺が依頼を終えて帰ってくるたびに、マリオンはこの店の中に居た気がするんだけど」


 特に一昨日なんて数十分おきに戻って来たけれど、大体いたし。


「え、ええ、まあ、アクセルさんは物凄い勢いと回数で依頼をこなして来て、すぐにこの店に帰ってくるからびっくりしたけどね。……でも、私もこれでも上級職の《公儀飛脚》だから。アクセルさんみたいに長距離の仕事を高速でこなすことはなかなか難しいけれど、短距離で、難度の高い仕事は結構こなしているのよ? こういうスキルもあるしね」


 マリオンは言いながら腰に括り付けた箱をぽんぽんと叩く。すると、彼女の身体が幻のようにぼやけていく。

 

「迷彩……か?」

「似てるけど違うわね。《不止》ってスキルでね。これが掛かっている間は魔物に戦意を向けられる事がないの。だから、ダンジョンの中にいる魔物の集団を突っ切りながら潜って、モノを輸送出来たりもするのよ。ね、コハク」


 マリオンは隣で事務作業をやっているコハクに話を振る。すると、


「う、うん。マリオンは、この前は空き時間で魔獣の原生地帯に、一昨日も近くのダンジョンの中層にまで行ってきたよね。どっちとも冒険者たちが困ってたみたいで、所属しているギルドや学園から、お礼の念文と追加報酬が来ているよ」


 コハクは少しびっくりした様な表情になりながらも、マリオンの業績の説明をしてくれた。


「おお……。初級職で面倒を見て貰っている俺が言うのもなんだけどさ。俺みたいな初心者の面倒を見ながら仕事をこなすって、マリオン、すげえんだな」


 そう言うと、マリオンは苦笑した。


「ふふ、褒めてくれてありがと。でもね、私からすると初級職なのに、もうこんな難易度の仕事を出来てしまえるアクセルさんの方が凄いと思うのよ? あと、それに難なく付いていけてしまうバーゼリアさんも。だから、私は気を遣わずに接しているのよ」


 ふふ、と苦笑から微笑みに表情を変えたマリオンの顔には余裕が見える。

 

「まあ、輸送職の先輩のお姉さん的には、本当はもっとお世話させてほしいんだけどね」

「あ、その気持ち分かる。ご主人って手が掛からないというか、どんどん前に行って成長し続けちゃうから、どうにかしてお世話したくなるよね……」

「なんで変な所で意見を合わせているんだ、マリオンもバーゼリアも」

 

 マリオンは結構なお姉さん気質があるようで、世話したがりなのは分かっていたけどさ。

 ただ、その気質そのものはとても有り難いと思うし助かっているので、感謝しているのは確かだけども、と思っていたら、 

 

「それで、アクセルさん、どれを選ぶか決まった?」


 マリオンは俺が持っている依頼書を覗き込みながら聞いて来た。

 俺としては、一段階上の仕事ということで、油断せずに行きたいと思っている。なので、出来るだけ初心者講習と近しい依頼をやってみたいと考えた。だから、


「この『魔獣研究所への、魔獣討伐機材サンプルの輸送』ってのをやってみようと思う。一応、荷物を受け取って街から少し離れた研究所に行くってだけで、感覚も初心者用依頼に近いし」

「そうね、感覚としては初心者用に近いけど……。うん、難易度が12なのも、簡単すぎず、良いわね。少し大変かもしれないけど、もしもの時は私も手を出せるから。今日は一緒に頑張りましょう、二人とも」

「おう。気を抜かずにやっていくわ」

「今日は宜しくねー、マリオンー」

 

 そんなわけで俺たちはマリオンと共に、少し難しめの依頼に挑むのだった。


続きは明日に。

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